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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

妻という名の咎人

妻という名の咎人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アビー・グリーン(Abby Green)
 ロンドン生まれだが、幼少時にアイルランドに移り住む。十代のころに、祖母の愛読していたハーレクインのロマンス小説に夢中になり、宿題を早急に片づけて読書する時間を捻出していた。短編映画のアシスタント・ディレクターという職を得るが、多忙な毎日の中でもハーレクインの小説への熱はますます募り、ある日辞職して、小説を書きはじめた。

解説

禁じられた夢を見た――ご主人様に恋する夢を。

「弟を破滅させた君と、僕は結婚しようと考えている」義兄クルスの蔑むような眼差しに、トリニティは凍りついた。2年前、スペイン大富豪である彼のメイドだったトリニティは彼の異母弟リオから、息子たちの世話をしてくれと頼まれた。双子の惨状を見かねて自堕落なリオと便宜上の結婚をしたが、いま名ばかりの夫は急死し、彼女が双子の後見人となった。彼は私が弟をたぶらかしたと信じ、悪女を監視する気なのだ……。愛する双子を奪われたくない一心で、彼女はクルスに従った。千々に乱れる胸の奥で、彼への恋心をもてあましながら。

■双子もクルスも愛するがゆえ、果てしない苦しみを背負ったトリニティ。スペインの古城で積年の想いが溢れ出し、ついにクルスと夢の一夜を過ごすも、いまだ無垢な体だった理由を詰問されて……。数奇な運命に弄ばれた孤独な娘の、あまりにも切なく甘やかな初恋。

抄録

 クルスの屋敷のメイドとして働き始めてから半年ほどたった夜、寝つけずにいたトリニティは書斎に本を探しに行った。ある日、椅子の上で丸まって本を読んでいた彼女を見つけたクルスが、今後はいつでも書斎の本を読んでいいと言ってくれたからだ。
 彼女は謎めいた雇い主に無益な恋心を抱きかけている自分に気づいていた。捨てられていた『フィナンシャル・タイムズ』に載っていた彼の記事も読んだ。
 トリニティは新聞を読むのが大好きだったが、書かれていることは半分しか理解できなかった。いつか全部理解できるようになりたい――それが夢だった。やっと過去から解放されたと感じ、捨て子だからといって何もあきらめる必要はないと証明できそうな気がしていた。
 クルスは成功と教養の象徴であり、どうしようもなくトリニティを引きつけ、刺激した。彼が自分みたいな女に目を留めることは絶対にないとわかっていたが、ときどき顔を上げると彼が奇妙な表情でトリニティを見つめていることがあった。そんなとき、彼女は狼狽し、頬がかっと熱くなった。まさに自意識過剰の典型だった。
 あの夜、トリニティはそっと書斎に入って小さな明かりだけをつけて書棚に向かい、どれを読もうかと迷いながら幸せな数分間を過ごした。経済に関する難しい学術書のそばに、読み古したジョン・ル・カレとアガサ・クリスティが並んでいた。それらの本は、雲の上の人を少しだけ身近に感じさせてくれた。
 かすかなユーモアを含んだ低い声が聞こえたとき、トリニティはぎょっとして飛びあがりそうになった。
「ぼくのデスクをかきまわしている泥棒じゃなくてよかったよ」
 トリニティの手から本が落ちた。振り向くと、ドア口にクルスが立っていた。タキシードを着て、蝶ネクタイを軽くゆるめた彼の姿は、息をのむほどすてきだった。
 ほどなく我に返り、トリニティはかがんで本を拾ったが、自分の格好が気になって必死に言葉を並べ始めた。「申し訳ありません。本をお借りしようと……眠れなくて……」
 トリニティは本を抱きしめた。そうすれば、薄物にしか覆われていない胸を隠せるとでもいうように。だが、クルスの視線が彼女の全身に注がれるにつれ、彼ののんびりした態度に変化が生じた。ふいに部屋の空気が変わり、電気を帯びたようにぴりぴりしていく。
 クルスが足を踏みだした。トリニティは頭がぼうっとし、動けなかった。薄暗がりのなかで少しずつはっきりしてくる彼の顔から視線を外すことができない。クルスは彼女が持っていた本を取りあげ、じっと見てから書棚に戻した。彼の体はあまりにも近くにあった。トリニティは目を閉じて彼のにおいを深く吸いこみたいという衝動に駆られ、めまいさえ覚えた。
 そのときだった。彼の手が伸びてトリニティの髪に触れた。髪を一房つまんだ二本の指がすっと滑る。彼がこれほど近くにいて、わたしに触れている……。予想外の出来事に、トリニティは身動きができなかった。
 下半身にこれまで感じたことのない感覚が生まれ、腹部がこわばっていく。トリニティは自分の未熟さを呪った。里親のもとで育った彼女は長時間の外出を許されず、誰かと親密な関係になったことは一度もなかった。
 自ら行動を起こすべきだ、とトリニティはわかっていた。こんなこと、ばかげている。このままじっとしていれば、きっと彼のほうから離れていき、わたしは惨めに取り残されるだろう。
 ところが、クルスは熱っぽい目でじっと彼女を見つめて言った。「きみが欲しい、トリニティ・アダムズ。望んではいけないとわかっているのに、欲しくてたまらないんだ」
 彼の手がトリニティの髪から離れた。
 あまりにも衝撃的な言葉だった。いまこそ背を向けて立ち去るべきだ。けれど、トリニティの足は根が生えたようにその場から動かなかった。
 向こう見ずな欲望がトリニティの全身を駆け巡り、頭がくらくらする。クルス・デ・カリーリョがこんな目でわたしを見つめ……きみが欲しいと言うなんて、ひどく現実離れしている。トリニティは、経験したことのない感覚にとらえられた。
 心のずっと奥から、禁じられた言葉が飛びだした。「どうぞお望みのままに……」
 クルスは長いあいだじっとトリニティを見つめてからスペイン語で何かつぶやき、彼女を抱きしめてじりじりと押した。彼女の背中が書棚に当たるまで。
 そして、クルスはキスをした。
 それはキスというより、あまりにも巧みな覚醒の技だった。たちまちトリニティの全身は炎に包まれ、激しい欲望が目覚めた。
 トリニティの意識は、体の奥深くに生まれた驚くべき快感の世界にのみこまれていった。もとより舌が触れ合う感覚は親密で淫らなものだが、これほど中毒性を持つ強烈な感覚は初めてだった。麻薬の力とはこういうものなのかもしれないと思う。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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