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三回目の求婚〜不器用な伯爵は花嫁を探しています!?〜

三回目の求婚〜不器用な伯爵は花嫁を探しています!?〜


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

……もう僕は、君を大切にしない
「愛」に気づかない伯爵様の前途多難な花嫁探し?

領主となった幼馴染みのギルバートと再会したマーガレット。彼女を屋敷に住まわせ、昔と変わらず気にかけてくれる彼に、身分違いとわかっていながら惹かれてしまう。「僕は、もっと乱れる君を見たい」誤って媚薬を飲み苦しむマーガレットを、ギルバートは甘い言葉と巧みな愛撫で介抱し「責任をとる」と求婚してきた。愛のない求婚に傷つくが……!?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

「将来誰かと結婚しても、貴方のことは忘れないわ。この十年間ずっとそうだったもの」
「奇遇だね、僕もだよ。君のことは、これからもきっとずっと大切に想う。……嬉しいな。まるで妹に慰めてもらったような気分だ」
 マーガレットとギルバートはわずかの間、微笑み合った。彼に昔のように「妹」と断言されて胸がちくりと痛んだが、そんな些細な感傷は二の次だ。彼が笑顔でいることの方が何倍も重要だった。
 不意に、マーガレットはギルバートのジャケットが一か所ほつれているのを見つけた。木に登った時にでも引っかけたのだろう。思わず手を伸ばす。
「ギルバート。そのジャケット貸して? 直してあげる」
「うん? ちょっと待って。うわっ!」
 至近距離にいた二人は、そのまま均衡を崩し、芝生の上に倒れこんだ。
 気がつけばマーガレットはギルバートの胸に寝そべっていた。あまりのことに顔が真っ赤になる。彼の身体は温かく、細身の割にしっかりしている。少し早い心音が聞こえてきた。
 ――た、大変! 早くどかなきゃ!
 慌てて身を起こそうとすると、背後に腕を回された。
「ギ、ギルバート? ちょっと、放してくれない?」
 すっかり動転した頭で頼むが、一向に腕が緩む気配がない。
「ギルバート!」
 凄んでみせると、意外にも満ち足りた声音が返ってきた。
「うーん。さっき君が言ってくれたことが嬉しかったし、気持ちいいから、もう少しこのままでいたい」
「そんな……!」
 恥ずかしさのあまり思わず涙目になった。状況如何に関わらず、未婚の女性が男性と密着しているのは褒められたことではない。どうにか形勢を変えようと、マーガレットはうたた寝をしているオートリカスを呼んだ。
「オートリカス! ギルバートを何とかして!」
「無駄だよ、マーガレット。ほら」
 ギルバートは器用にポケットからビスケットを取り出し、遠くに投げた。目覚めたオートリカスは尻尾を振りながらそれを追いかけて行く。
「ギルバート! 卑怯よ。食べ物を使うなんて!」
「僕も学習したのさ。いつ何があってもいいように持っていて正解だった」
 頼れる相棒もいなくなり、マーガレットは途方に暮れた。一方のギルバートは機嫌がよすぎて気持ちが悪いくらいだ。
「君は、いい匂いがするね。……花のような。何かつけてる?」
「……お母様が作ってくれたポプリの匂いかもしれないわ。今も大切に取ってあるの」
 ギルバートが深く息を吸う音が聞こえる。マーガレットは羞恥のあまりもがいた。
「こら、マーガレット。おとなしくして」
「じっとしていられるわけないでしょう!? この状況で!!」
 マーガレットがギルバートを睨むと、彼は何を思ったのか端正な顔を近づけてきた。
 ――え!? ちょ、ちょっと、な、何……!?
 見れば見るほど整った顔立ちだと思う。不躾に見つめてはだめだと思うのに、魅入られたように目が離せない。
「……あの、ギルバート?」
「マーガレット。ちょっとじっとしていて」
 耐え切れず瞳を固く閉じると、額に柔らかな物が触れた。その感触に「もしかして」と思う。
「ギルバート。……ひょっとして今、キスした?」
「うん。した」
 全く悪びれない様子のギルバートに、怒りを通り越して力が抜ける。指先や手の甲へならともかく、額へのキスは意味深すぎはしないか。家族でもないのに。
「どうしてこんなことをするの。……貴方は舞踏会で花嫁を選ぶんでしょう?」
 独身のうちに遊んでおきたいのならお断りだ。言外にそんな意味をこめたが、ギルバートはさも当然と言わんばかりの顔をしている。
「君は僕のキスが嫌だった? 僕のことを大切に想ってくれているのに?」
 それとこれとは話が違う。口づけは愛しい人にするもので、友愛の対象にするものではない。
「そういう問題じゃないのよ。……うまく言えないけど、こういうことは将来の奥様にしてあげて? それと、早く放してくれると助かるわ」
 マーガレットの言葉に、ギルバートはようやく手を放した。マーガレットは彼の気が変わらないうちに身を起こす。
「ありがとう。それにしても、なんであんなことをしたの? いつもの貴方らしくないわ」
 ギルバートはまだ横たわったままで、空を見ながら何か考えていた。少しして、ぼんやりとした様子で口を開く。
「……わからない。自分でもなんであんなことをしたのか。君を胸に抱いた時、心がふわふわしてとても幸せな気分だった。……だからかも」
「……そう」
 浮ついた気分になって心が満たされたのはマーガレットも同じだ。ただ、それを彼に伝えることはできない。自分はギルバートに相応しくない、居場所のない異端者なのだから。
「貴方と話せて嬉しかったわ。そろそろ仕事の時間だから、もう行くわね」
 マーガレットは立ち上がり、ギルバートに向かって言い足した。
「……悪いんだけど、オートリカスを頼んでいい? 戻ってきたら厩舎に連れて行ってほしいの。あとジャケットは預かっておくわね。時間のある時に直しておくから」
「わかった。君もあまり根を詰めないようにね」
 ギルバートが笑顔で応じてくれたので、マーガレットは後ろ髪を引かれつつも本館に戻った。まだ微かに早いままの心音を感じながら。

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