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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・アフロディーテ

理想の独身貴族

理想の独身貴族


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・アフロディーテ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ナンシー・ウォレン(Nancy Warren)
 ナンシーこそまさにテンプテーションやブレイズを書くために生まれたような作家だ。英文学の学位を持つ彼女はジャーナリズムや広報活動に従事したこともあったが、二〇〇〇年に北米ハーレクインが主催したサマー・ブレイズ・コンテストで優勝したのをきっかけに執筆に専念するようになった。夫と二人の子供、散歩が嫌いな犬とともにカナダに住む。湖の水質汚染や森林環境を憂う社会派でもある。

解説

 美容師のケイトは家族に仕送りをしながら細々と暮らしている。ある日、彼女は客が手に取った雑誌に目を奪われた。表紙を飾るのは、最も理想的な結婚相手と評される大富豪、ダレン・カイザー・ジュニア。全国有数の大企業の重役だ。彼のような男性が目の前に現れたら、どんなにすてきだろう。一瞬、頭の中に夢を描いたケイトだったが、二人の生きる世界のあまりの違いにむなしさを覚える。最近アパートメントの上階に引っ越してきた、無愛想で、悪趣味な服装の、眼鏡をかけたコンピュータマニアがよもやダレン本人とも知らず、彼女はため息をついた。

抄録

 彼は本当にきれいな目をしているわ。特に、ほほえんでいるときの目ときたら。
「何がそんなにおかしいの?」ケイトは自分も笑い返しているのを感じながら、尋ねた。
「家族の価値を蕩々《とうとう》と並べ立てている僕が、実は父親と大げんかして、ここにいるってことだよ」
「その話をしたい?」ケイトは尋ねた。私の話を親身になって聞いてくれた彼に対し、せめてできることは、同じようにしてあげることだわ。
 ディーンは、何かが耳につまっているみたいに頭を振った。「こんな話をしたなんて信じられないな。ばかげた話だよ。父と僕は……」彼は椅子の背に寄りかかり、何か考えているようだった。「僕たちはおそらく違うものを求めているんだろう。でも、似た者同士だから衝突してしまう。僕は家を出て自分で何かをする必要があったんだよ」
 ケイトは熱心にうなずいた。「よくわかるわ。私も家族のことは愛しているけれど、家に戻らなくちゃならなくなったら、頭がおかしくなるはずよ」
「無礼な隣人に我慢するほうがましだというのかい?」ディーンがからかった。
「私の目の前でドアを叩《たた》きつけなかったら、あなたはそれほどひどい隣人じゃないわ」
「いてっ。自分があんなことをしたなんて嘘《うそ》みたいだ。二度目のチャンスをくれて感謝しているよ」
 ワインの瓶が空になり、夜もかなり更けたころ、ケイトはふと気づいた。ディナーテーブルで何時間もおしゃべりする間、話題はほとんど彼女のことばかりだった。ブライアンとのデートとは、なんという違いだろう。もちろん、これはデートではない。だが、自分自身以外のことを考える男性もたまにはいるとわかってよかった。
 電話の呼び出し音が心地よい雰囲気を揺さぶり、ケイトはびくっとした。
「ああ、ブライアン」彼はテレパシーで私の心を読んだのかしら?「今日の試合はどうだった?」しばらくケイトは「そう」とか「よかったわね」と言い続けた。込んだバーの騒音が、背後から聞こえてくる。
 ブライアンの声はかすかにかれていた。試合後のお祝いのせいだろう。「あのさ……話がしたいんだ。今からそっちに行くよ」
 ケイトはこんろの上の時計を見た。「でも、ブライアン、もう十一時過ぎよ。私、明日は早番だし」
「話さなくてはいけないんだ」おそらくそう言ったのだろう。彼の言葉ははっきりしなかった。
 休憩もそろそろ終わりねと、ケイトはいらだたしく考えた。時間と距離を取っていろいろ考えるのも、もう終わりだ。
 今の彼に説明しても無駄だろう。ケイトはカウンターをとんとんと叩いた。「明日、電話をくれない? そのとき、話しましょう」
 ケイトが電話を切ったとき、ディーンはキッチンに皿を下げていた。
 ケイトはまたショックを受けた。ブライアンはいつも一人でテーブルを離れ、ケイトが片づけを終えるまで、テレビで最新の株情報を見ている。
 彼女が袖をまくりながらキッチンに入っていくと、ディーンが顔を上げた。「何も問題はないかい?」さりげない口調できく。
 ケイトは肩をすくめ、ゴム手袋をはめた。「ええ。そう思うわ」
 二人は並んで立ち、ケイトが洗った皿をディーンが拭《ふ》いた。二人は無言だった。湯気のせいで髪が顔にはりつく。ケイトはゴム手袋をつけた手首でいらだたしげに髪を押しやった。
 ディーンが髪の根元まで確かめようとするみたいに、その様子をじっと見ていた。私が髪を染めていると思ったのかしら? ケイトはディーンと向き合った。「これは地毛よ」
「なんだって?」彼は驚いている。
「この髪よ。赤毛にしたがる人間なんていないわ」
「これはただの赤じゃない。僕だってそのくらいはわかるよ。赤褐色か、栗色《くりいろ》か。この髪を見ていると、母のアンティークのマホガニー・テーブルを思い出す。蝋燭《ろうそく》に照らされると、信じられないくらい濃厚な色を放つんだ」ディーンは手を伸ばして巻き毛をつまみ、明かりの下に掲げた。「君の髪も同じだ」
「まあ」おしゃべりなケイトが言葉を失った。皿洗いが終わると、彼女はゴム手袋を外し、乾いた皿を片づけた。
 ディーンはカウンターに寄りかかって布巾《ふきん》をもてあそんでいる。
「コーヒーはいかが?」ケイトは礼儀として尋ねた。
 ディーンがほほえむ。「君が早番だと聞いてしまったからね。またの機会にするよ」それでも、彼は帰らない。しばらくしてようやく言った。「僕には関係のないことだとわかっているが、ブライアンの言いなりにならないことだ」
 ケイトの中でさっと怒りが燃え上がった。「私をなんだと思っているの?」彼女は両手を腰に当てた。「とんでもない間抜けだと?」
 ディーンは彼女を見下ろしてほほえんだ。グレーの瞳に温かい光があった。「いや。君は優しい心を持ったきれいな人だと思っているよ」言葉を失った彼女の唇にさっとキスをして、彼は帰っていった。
 ケイトは震える唇に指を当て、閉じられたドアを長い間見つめていた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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