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尼僧院から来た花嫁

尼僧院から来た花嫁

著: デボラ・シモンズ 翻訳: 上木さよ子
発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫ヒストリカル
価格:630円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 デボラ・シモンズ(Deborah Simmons)
 日本では『狼を愛した姫君』でデビュー以来、ナンバーワンの人気を誇る作家。ディ・バラ家やド・レーシ家の面々を主人公に据えた中世の物語と、華やかなイギリス摂政期(十九世紀初頭)の物語を描き分ける。「どの作品もそれぞれ個性の際立ったものに仕上がるよう心がけている」と語る。夫と息子二人、猫二匹と迷い犬とともに、米オハイオ州に在住。

解説

 領主ニコラス・ド・レーシの胸は怒りにたぎっていた。八つ裂きにしても飽き足らない恨みのあるヘクサム男爵をあろうことか妹の夫に先に討ち取られてしまい、憎しみのはけ口がない。悶々としていたある日、国王から急使が遣わされた。ヘクサムの唯一の後継者である彼の姪ジリアンを妻にせよという。なんという幸運! 憎い男の血を引く者がまだ残っていたのだ! ニコラスは時をおかず、娘が長く暮らしていた尼僧院を訪れ、復讐の夢想にゆがんだ笑みを浮かべつつ、花嫁を城へ連れ帰った。

抄録

「でも、みんな、ご褒美がどうとか言っているわ。接吻《せっぷん》ですって」ジリアンが言う。
「心配するな」ニコラスはささやいた。「おまえに触れるのは、このおれだけだ」とたんにジリアンが顔をひきつらせるのを見て、ニコラスは思わずにやりとした。
 ところが、彼が遊びの許しを与えようと片手をあげたとき、老齢の家臣にその腕をつかまれてしまった。驚いたニコラスは、腕を引っ張られてしかたなく立ちあがった。「お館さまに花嫁を捜していただこう!」家臣が叫ぶと歓声があがった。
 ニコラスはしまったと思ったが、もうあとの祭りだった。すでにジリアンも女たちに引っ張られて席を立っており、目の前には頭巾を突きつけられていた。
 ニコラスはそれでも拒もうとしたが、おもしろがって挑戦的に自分を見ているダリウスと目が合った。彼はシリアの男をにらみつけると、老齢の騎士のあとについていって大広間のまんなかに立った。すでにこの遊びのために、大きく場所が取ってある。ニコラスは頭巾を目深にかぶると、おとなしく引っ張りまわされるままにその場でぐるぐると回転した。
 葡萄酒に酔っている者なら、おそらくめまいを起こしていただろう。しかし、ニコラスの方向感覚はそう簡単にはなくならなかった。彼はたちまち背中をまっすぐに伸ばして野次馬をがっかりさせると、花嫁捜しに取りかかった。あっちからもこっちからもくすくす笑う女たちを押しつけられたが、そういうのには取り合わない。ニコラスは不潔な体に香水をつけたむっとするようなにおいのなかをゆっくりと進みながら、すがすがしい香りを探し求めた。
 頻繁に入浴する習慣は、東方の国で身につけたものだ。妻にもその習慣を徹底させるつもりだった。まったくこの国の人間はじつに臭い。もっとも、それで妻を捜すことができたのだ。鼻のさきをくすぐるジリアンの香りに、野の花とそばかすとまっ赤な髪が思い浮かぶ。ニコラスはふたたびほかの女を押しつけられたが、彼女の香りを追い続け、とうとうジリアンをつかまえた。
 わっと歓声があがる。早く相手の顔を見たくて、ニコラスは乱暴に頭巾を脱いだ。はらりと頭巾が床に落ち、つかまえた女の姿がようやく目に入る。なめらかな肌と豊かな体の線を持つ、背の高い優雅な乙女だった。葡萄酒のせいなのか、遊技のせいなのか、驚いてこちらを見あげる緑色の瞳がぼんやりとしている。
「さあ、ご褒美だ!お館さま、接吻を!」
 人に指図されるのが嫌いなニコラスは、まわりの野次をなかば無視するつもりだった。ところが、こうしてジリアンと見つめ合っているうちに、なんだか口づけするのが自然であるように思えてきた。ジリアンも頬を染め、まるで彼の唇を迎えるようにうっすらと唇を開いた。ニコラスは顔を近づけた。
 唇と唇を軽く触れ合わせるようなキスをする。ほんとうはそれだけでやめるつもりだった。ところが、目もくらむようなその感触にすっかり酔ってしまい、彼はさらに唇を押しつけていった。やがてジリアンが唇を開き、ニコラスは舌のさきで甘い蜜《みつ》を味わった。
 熱くて強烈だった。ニコラスが乱暴にジリアンを抱き寄せると、彼女もあらがうどころかニコラスの首に両腕をまわしてきた。ジリアンの指が彼の髪にもぐり込み、彼女の乳房とニコラスの胸がこすれ合う。彼はいっそう深いキスをしながら、ジリアンの背中を撫《な》でおろしていった。もう、待ちきれない。早く、いますぐ……。ずっと聞こえていた耳鳴りがしだいに大きくなっていき――ニコラスははっとした。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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