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儚い愛人契約

儚い愛人契約


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

1年後に別の誰かと結婚する男性に、なぜ心まで捧げてしまったの?

ウエディング・プランナーのガブリエラは、ローマ屈指の名門ホテルのオーナー、アリムに恋していた。美人の元恋人たちが口々に彼の冷酷さを嘆こうと、耳を貸さずに。あるとき、優秀な働きぶりに目を付けたアリムから声をかけられ、親密な誘惑を受けたガブリエラは、一夜の恋と知りながら純潔を捧げてしまう。翌朝、彼は自身が異国の皇太子だと明かし、戴冠までの愛人になれと迫るが、妊娠は認めないと言い放った。なんて私は愚かだったの? 逃げだした彼女は知らなかった──よもやアリムの子を宿し、秘密裏に産み育てることになろうとは。

■昨年大好評だったR−3284『愛を授かりしベネチア』の関連作をお届けします。キスさえ知らないヒロインの想い人の正体は、傲岸不遜な異国の王子で……。3月にも関連作が刊行予定です!

抄録

 早く家に帰って忘れてしまいたい。
 ガビは頭の中で何度もあの恥ずかしい瞬間を再現していた。アリムにダンスを誘われたと勘違いした、あの瞬間を。
 誰もいない宴会場に立ち、宴の名残を見まわす。
 テーブルはすでに食器もクロスも取り去られ、椅子は隅に積み上げてある。ガビが今夜するべき作業は、花嫁の祖父母から借りたレコードを回収し、古い蓄音機を自分の車に運ぶだけとなった。
 でも、もう少しあとでいい。そう思い、ガビは宴会場全体を見渡した。
 壮麗としか言いようがない。
 シャンデリアの明かりはすでに消され、今は天井に埋めこまれたスポットライトの強い光だけとなっている。そのライトが点灯したのは、音楽がやみ、宴が終わったときだった。
 ガビは電源ボックスのところに行き、ライトをひとつずつ消していった。
 高い窓から差しこむ月光だけでいい。なんて美しいのだろう。まるで、宴会場の中まで雪が降っているようだ。銀色の壁に外の木々の影が映っている。雪と氷に包まれた森の中に立っているみたい――そう思うと、吐く息までが白く感じられた。
 さっきアリムは何を言おうとしていたのだろう?
 彼が〈グランデ・ルチア〉を再び訪れるのは、何週間、もしかしたら何カ月も先のことになるかもしれない。
 そのとき、扉の開く音が聞こえ、ガビは振り返った。従業員が何か片づけに来たのだろう。
 だが、従業員ではなく、アリムだった。
「わたしはただ……」
 ただ、なんなの?
 あなたのことを考えていた。
 もちろん、ガビはそんなことは口にしなかった。
「今夜は大成功だったな」
「ありがとう」
 さあ、もう持ち物をまとめて帰らなければ。思うだけでガビは動こうとせず、蓄音機のほうに向かうアリムを見つめていた。何をどうすればいいのかわからない。
 不意にガビの体に震えが走った。
 寒いからではない。宴会場の中は暖房が効いている。レコードを針がかすめる音がかすかに聞こえたせいだ。昔の音楽が息を吹き返し、ガビの心に永遠に刻まれた。アリムがこちらを振り向き、近づいてくる。そして無言のまま、手を差し伸べた。
 ガビも無言のまま、彼の手を取った。
 アリムの腕が優しく、だがしっかりと彼女の体にまわされる。どこの香水だろうか、異国のめくるめくような香りにガビは包まれた。
 だが、なじみがないのは香りだけではなかった。
 今夜はいつもとまったく違う。礼儀正しく温厚ないつものアリムではない。お互いに崖っぷちに立っているような雰囲気だ。
「ぼくと関わったら苦しむ羽目になる」
 彼がぞくっとするほど低い声で警告した。
「わかっているわ」
 うなずくガビの頭が彼の胸に当たる。アリムはより明確に言った。「ぼくのことを好きになったら、苦しみは倍になる」
「わかっているわ」ガビは繰り返した。
 アリムの腕の中にいる今、あとの苦しみなどどうでもいい。ガビは彼の顔を見上げた。
 今夜はわたしのためにある。
 一夜限りとなるのは目に見えているけれど、わたしは何年もアリムに思いを寄せてきた。一夜の思い出を胸に、明日から新しい人生を生きていけばいい。彼との間になんの思い出も作れずに終わりたくない。
 何年も求め、焦がれ、想像していたアリムの体に、ガビはもたれかかった。引き締まった筋肉は力強い。音楽に合わせて巧みにリードされ、ガビは生まれて初めて実感した。わたしは軽やかに踊っている、と。
 二人は互いに相手の目をじっと見つめている。見つめ合ったまま踊った。
 アリムは仕事と私生活をきっちり分けて生きてきた。それが賢明な生き方だと信じて疑わなかった。しかし、今は心の中に湧き起こった感情こそを大切にするべきだと思う。
 腕の中にいるたったひとりの女性を大切にしたい。
 アリムはこれからのことを思った。何度も祖国に足を運ぶことになるだろう。そして、帰国してはまた〈グランデ・ルチア〉に戻ってくる。ガビが待つぼくのベッドに。
 ガビと一緒に仕事をしたっていいじゃないか。お互いのためになるのだから。
 アリムは身をかがめ、ガビの口にかすめるようなキスをした。
 彼の唇が触れた瞬間、このキスを後悔することはけっしてないとガビは悟った。頬への軽いキスまでしか想像できずにいた彼女は、ファーストキスに酔いしれ、とろけていった。唇が勝手に反応し、アリムの唇の動きとひとつになる。
 アリムがガビの起伏に富んだ体に手を走らせると、彼女は胸のふくらみを押しつけてきた。その瞬間、アリムは用心深さをかなぐり捨てたくなった。
 ガビをベッドに連れていきたい――今夜だけでは物足りない。
「つき合っている人はいるのか?」
 単刀直入にきかれ、アリムに腕をまわされているとはいえ、ガビはまたもや面接を受けているような気分に陥った。
「ウエディング・プランナーにそんな暇があると思う?」質問はいいから、それよりキスをして。
「今の仕事は社交に差し障りがあるということだな?」
 アリムが探りを入れているのは明らかだが、ガビは嘘をつけなかった。だいいち、正直に言ったところで、失うものは何もない。
「男性とつき合ったことは一度もないわ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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