マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

摩天楼のスペイン公爵

摩天楼のスペイン公爵


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 ジェニー・ルーカス(JENNIE LUCAS)
 本屋を経営する両親のもとたくさんの本に囲まれ、アメリカ、アイダホ州の小さい町で遠い国々を夢見て育つ。十六歳でヨーロッパへ一人旅を経験して以来、アルバイトをしながらアメリカじゅうを旅する。二十二歳で夫となる男性に出会い、大学で英文学の学位を取得した一年後、小説を書き始めた。現在、幼い子供ふたりの育児に追われながらも執筆活動を通して大好きな旅をしているという。

解説

公爵からの突然のプロポーズ。結婚の条件は、夫を愛さないこと。

7月の夕方、ベルはマンハッタンの高級住宅の前で震えていた。妊娠を伝えたのに、大富豪アンヘルはわたしを追い払った。大切なバージンを捧げた男性から、金めあてと罵られるなんて。失望したベルは、泣きながら故郷テキサスへと車を走らせた。けれど実家とともに見えてきたのは、黒いヘリコプターと……アンヘル! どうしてわたしを追いかけてきたの? 彼はベルに、おなかの子のDNA鑑定を受けるよう迫ってきた。さらには、使用人でも見るような目で冷たくこう言い放つ。「赤ん坊がぼくの子なら、きみもぼくのものだ」

■みなさまのご愛読に支えられ、ハーレクイン・ロマンスは3300号を迎えることができました。記念号をお届けする作家は“ロマンスの新女王”ジェニー・ルーカス!関連作R−3277『十万ドルの純潔』では、今作のヒーローとヒロインの出会いも楽しめます。

抄録

「あなたはわたしが恋に落ちると思っているの?」
「ああ」
 ベルはあきれて鼻を鳴らした。「自尊心だけは健在みたいね」
「ぼくの勘違いなら、そう言ってくれ」アンヘルは焼けつくようなまなざしを注いだ。
「勘違いだわ」ベルはぞんざいに肩をすくめた。「尊敬できてすばらしいと思える男性に出会ったら、簡単に恋に落ちるかもしれない。でもあなたは違うわ、アンヘル」真っ向から彼を見返す。「どんなにお金持ちでセクシーでもね。わたしが欲しいのなら、おあいにくさま。あなたなんて欲しくない」
 アンヘルの表情が変わった。月明かりで目がぎらりと光る。「そうか?」彼はベルの震える唇に親指を滑らせた。「本当に?」
「ええ」ベルは荒い息とともに答えた。身を引くことはおろか、黒い瞳から視線をそらすことさえできなかった。
 アンヘルがベルの腕をなで下ろした。彼女を見つめるそのまなざしは、この世のものとは思えないほど美しく、心をそそられた。「きみをベッドに連れていっても、ぼくに恋をしないというのか?」
「間違ってもね。あなたってひどい男性だから」そう言うあいだも、ベルは震えが止まらなかった。彼もそれを感じ取ったのか口角を持ち上げ、男らしく満足げな笑みを浮かべた。
 アンヘルがそっとベルの髪に触れると、彼女の震えはさらに増した。彼のにおいは白檀とたき火を思い起こさせ、長いコートの内側にある体には力がみなぎっていた。
「では、ぼくも遠慮する理由がないわけだ。愛など忘れてくれ」アンヘルは優しくベルの顎を上に向けた。「後悔も、胸の痛みも、手に入らない運命にあるものは全部忘れるんだ。今宵一晩は、この場で手に入るものから喜びを得るといい」
「つまり、あなたから喜びを得るの?」皮肉をきかせようとしても、鼓動が激しくてうまくいかない。息は苦しく、もの欲しげだ。
「今宵一晩、ぼくはきみを喜ばせたい。なんの束縛も約束も、将来もなしでだ」ささやく声は低く、手はベルの頬に置かれている。「今夜だけ向こう見ずになってくれ」
 黒い瞳は食い入るようにベルを見ている。寒い一月の夜が七月のテキサスに負けないほど暑く思え、二人のあいだに火花が散った。
 今宵一晩、アンヘルに身を任せる? なんの束縛も約束もなしで?
 ベルは驚きに打たれて彼を見つめた。
 彼女は男性とベッドをともにした経験どころか、そんな雰囲気になったことさえなかった。二十八歳のバージンとして自分の夢は何一つかなえず、人の世話をして生きてきた。
 だめよ。返事はノーだ。当たり前じゃないの。そうでしょう?
 だが、返事をする機会はなかった。アンヘルが頭を下げてベルの頬にキスをしたのだ。尾を引くようにゆっくりとなまめかしく唇が肌を這い、ベルは息を凝らした。唇が離れると、目を見開く。体じゅうが彼を求めて叫んでいた。「いいわ」思わず口にしてから、無鉄砲な自分に唖然とした。取り消そうとして口を開いたところで、思いとどまる。
“今夜だけ向こう見ずになってくれ”
 そうしたことが一度でもあったかしら? わたしはいつでもいい子だったんじゃない? 必死に家族に尽くし、まじめに生きてきて、いいことがあった? ただ悲嘆に暮れ、ひとりぼっちになっただけでは?
 ベルのためらいを見て取り、アンヘルの目がきらめいた。すぐさま大きな手をベルの顎に添え、それから下にやって髪に絡ませる。ゆっくりと唇が近づくにつれ、温かな息が甘く優しくベルの柔肌にかかった。
 官能的な唇が重なり、甘美な舌が彼女の唇を開かせようとすると、ベルは二人のあいだの冷たい冬の空気が千度にもなった気がした。ただの一度も、こんなキスをされたことはなかった。七年前に耐えた、生ぬるい愛撫とも比べものにならない。
 熱く強引な唇とどこにでも伸びる手に、アンヘルの腕のなかにいたベルは我を忘れた。欲望の大きな波にのみこまれて分別は働かなくなり、自分の名前さえ思い出せなかった。
 キスがここまですてきだなんて。
 最初はおずおずと応えていたベルは、そのうちアンヘルの肩をつかみ、自分のほうへ引き寄せた。彼への憎しみも、これまでのみじめな思いも含めたすべてが情熱に変わったようだった。暗い冬の夜、波が音をたてて寄せるなか、彼女は夢中でキスを受けとめていた。
 二人は長いあいだ、互いにしがみついていた。やがてアンヘルが身を引くと、ベルはもう元の自分には戻れなくなっていた。
 見つめ合ううちに、空から雪が舞いはじめた。アンヘルが無言でベルの手を取り、館へと導く。凍った雪が、彼女のすり減った踵のない黒い靴の下でさくさくと音をたてた。
 二人は色の濃いオーク材の羽目板やアンティークの家具がしつらえられた、十九世紀に建てられたという館に入った。なかが暗くて静かなのは、使用人たちも含めた全員が眠っているからだろう。
 アンヘルは重厚な扉を閉め、警報装置に暗証番号を打ちこんだ。二階に行くのを待ちきれずにキスがしたくなり、二人で裏階段を駆け上がる。
 ベルは震えていた。好きでもない男性に、衝動的に純潔を捧げようとしているなんて、自分の行動が信じられない。
 けれど、アンヘルに手を引かれて廊下のいちばん奥の客用寝室に入ったとき、ベルは怖くて息も継げずにいた。アンヘルが黒いコートを床に投げ捨て、すぐにベルを抱き寄せる。それから両手で彼女の顔をとらえ、腫れた唇に親指を滑らせた。
「きれいだよ、とても」彼がささやき、雪のついた肩までの茶色の髪に指を通す。「この美しさはぼくのものだ……」唇を重ね、貪るようにキスをした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

この本を読んだ人は、こんな本も読んでいます

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。