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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

ギリシアのすみれ色の花嫁

ギリシアのすみれ色の花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 レベッカ・ウインターズ(Rebecca Winters)
 アメリカの作家。十七歳のときフランス語を学ぶためスイスの寄宿学校に入り、さまざまな国籍の少女たちと出会った。これが世界を知るきっかけとなる。帰国後大学で、多数の外国語や歴史を学び、フランス語と歴史の教師になった。ユタ州ソルトレイクシティに住み、四人の子供を育てながら執筆活動を開始。これまでに数々の賞を受けたベテラン作家である。

解説

ギリシア大富豪への愛は秘密……。彼は本気のはずがないのだから。

17歳で父を亡くし天涯孤独となったリスは、生まれ故郷を離れ、後見人である父の親友ナッソスが住むギリシアの島で暮らしてきた。今、急死したナッソスの葬儀を終え、悲しみに暮れるリスのもとに、弁護士が故人からの手紙を2通届けに来た。1通は彼女に宛てたもの、もう1通は、名前は知っているが面識はないギリシア人大富豪ターキス・マノリス宛てで、リスが直接手渡すようにと書いてある。そして、ナッソスのものだったホテルを二人に遺贈するので、最低でも半年間、手に手をたずさえ経営しなければならない、と。リスはターキスと会い、古代ギリシアの王子のような姿に我を忘れた。自分のもたらした手紙が、彼に罵りの言葉を吐かせるとも知らず……。

■おかげさまで、1982年創刊のハーレクイン・イマージュもこのたび記念すべき2500号を迎えることができました!大御所レベッカ・ウインターズによる本作は、『銀の瞳の公爵』(I−2486)にも登場する実業家ターキスが主人公です。

抄録

 整頓された室内を見まわしていると、思わずあっと声が出た。向かいの壁に飾られた額入りの大きな写真は若いころのナッソスだ。ふさふさの髪は黒く、スポーツシャツにパンツ姿でクルーザーのデッキに立っている。ターキスが撮って引き伸ばしたものに違いない。彼の写真はその一枚きりだった。
 興奮してぱっと立ち上がり、もっとよく見ようとそばに寄った。右下隅にナッソスのサインがあり、“ブラボー、ターキス”と書かれている。ナッソスはなんにでも飾り書きでサインをする人だった。
 写真の中の生き生きとしたナッソスを見ていると、涙が込み上げてくる。ナッソスが知ったら喜ぶだろう。サインした写真が、自分が長年陰で支えてきた若者のオフィスに飾ってある。それもいちばん目立つ場所に。こういう形でナッソスに敬意を表している事実からもターキスの人柄が想像され、今から渡す贈り物を受け取るのにふさわしい人物だと思える。
 開いたままのドアが軽くノックされ、リスは振り返った。
 どういう男性が現れるか、ひたすら想像をたくましくしていたが、今オフィスに入ってきたような長身で筋肉質の精悍な男性は想像していなかった。明るいベージュのスーツに身を包んでネクタイをしているが、オリーブ色の肌をした彼はさながら現代によみがえった古代クレタ人だ。
「ああ……」思わず声がもれたのは、彼を見て頭がくらくらしたからだ。
 すべてを見通すような淡い金褐色の瞳が、寺院や美術館のフレスコ画に描かれたダークブロンドの勇猛な戦士と重なった。彫りの深い顔を見ているうちに、古代クレタの王子の顔が頭に浮かんだ。双子と言ってもいいほどそっくりだ。引き締まった顎の濃い髭剃り跡がセクシーで、リスをどきりとさせた。
 気がつくと、ターキスもまじまじとリスを見つめ、信じられないものを見たかのような顔をしている。彼は軽く会釈した。「フロント係は君をアメリカ人だと思ったらしいが、名前は正確に聞き取れなかったようで……」外国なまりの強い英語を聞いて、リスはうれしくなった。
「リス・セロンです」ギリシア語で答えた。
 彼の顔に驚きの色がよぎった。「待ってくれ」パズルを解いているときのように考えをめぐらしながら言う。「セロン……クリストス・セロンは君のお父さんか?」
「ええ」
 ターキスは心底驚いたようだ。
「すばらしい人だった。飛行機事故のことを聞いたときは打ちのめされた。お父さんには本当によくしてもらったから。亡くなるなんて本当に残念だ」
「ええ」
 リスが答えると同時に部屋はしんと静まり返った。複雑な思いがあるのか、彼の瞳の色が濃くなったように見える。今聞いたことがまだ信じられないかのように片手をうなじに当て、ギリシア語でつぶやいた。「先週、ナッソスの葬儀で君を見かけた」
 これにはリスも驚いた。「あなたもいらしてたんですか?」
「行かずにはいられなかった。父親を別にすれば、ナッソス・ロディーノは僕がもっとも尊敬する人物だからね。亡くなったのは本当にショックだった」
 彼があの教会にいたなんて! どうりで、私の顔をまじまじと見つめていたわけだわ。でも、私は悲しみに沈んでいて彼に気づかなかった。
 リスは深々と息を吸った。「イラクリオンまで来てくださったり、オフィスに写真を飾ってくださったり、きっとナッソスも喜んでいるわ」
 ターキスが奇妙な口調できいた。「彼とは何か特別な間柄なのかい?」
「父が亡くなったとき、私はまだ十七歳で、父の親友だったナッソスが後見人になってくれたんです。それで彼と奥さんと三人でギリシアで暮らすことになって」
 ターキスは首を振った。「君と今まで一度も会わなかったなんて信じられないよ。今の僕があるのは君のお父さんとナッソスのおかげなのに」
「あなたのことは何年も前から聞いていたわ。ティリッソス村のニカノール・マノリスの優秀な息子さんだって。ナッソスがあなたの力を信じたのは正しかったわね」
 彼は大きく息を吸って吐き出し、ささやくように言った。「彼に助けてもらえたのは奇跡だ」
「大きく花開く種がなければ奇跡は起きないわ」ここでもまた奇妙な沈黙が広がり、リスはせっつかれるように口を開いた。「最初にあなたのことを知ったのは十六歳のときだったわ。ナッソスがよくうちに来ていて、父にニューヨークのホテルであなたを雇ってくれないかと頼んでいるのを聞いたの。大学に行けるよう手助けするなんて、すばらしいことだと思ったわ。二人ともあなたの未来を信じていたのね」
 ターキスが近づいてきた。「君のお父さんとナッソスの友情があったからこそ、僕は働きながら大学にも行けた。ナッソスにはどれだけ助けられたか」
「私もよ」リスはほほ笑んだ。「彼が亡くなったときには現実を受け入れられなかった」
 彼の瞳に同情の色が浮かんだ。「そうか。君はつらい別れを重ねて経験していたんだね」
「人はみんないつか死を迎えるわ」リスは大きく息を吸った。「正直に言うわね。私は話に聞くターキス・マノリスにずっと会いたかったの。ナッソスが最後にあなたのことを話したときに言っていたから。まだ三十歳にもならないのに、あなたはもう生きた伝説になっているって」
 ターキスが黒い眉を寄せ、それは買いかぶりだという表情を見せた。謙遜するところが好ましい。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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