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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・セレクト

雪どけの朝

雪どけの朝


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

ソレルは24歳だが、いまだ男性恐怖症で恋愛にも怯えている。少女のころ見てしまった場面に恐怖心を植えつけられたのだ。あるとき、遠縁に当たるヴァルが英国を訪れるという報せがあり、ソレルが滞在中の彼女の世話をすることになった。宿泊先はウェールズにある古いコテージ。彼女とは初対面だが、滞在を心地よいものにしてあげたい、とソレルは思っていた。ところが、現れたヴァルはなんと十も年上の男性だったばかりか、その日からウェールズを襲った猛吹雪のせいでコテージは停電。いかにも手練れといったハンサムな年上男性とふたりきり――閉じ込められてしまったソレルは震えた。一体どうすればいいの?

■2011年に亡くなったペニー・ジョーダン。ピュアなヒロインが、傲慢で男らしさ溢れる年上男性によって、愛の強さや激しさに目覚めるという作風は、今もロマンスファンから絶大な支持を受けています。1991年に刊行された初恋物語をお贈りします。

抄録

 ヴァルは彼の名前がロシア系で、母親がロシア人の血を引いていると言った。彼には三人の姉がいて、彼女たちは皆遠縁の男と結婚しているらしい。
「僕が大人になってから、女性に恐怖心を抱かなかったのが不思議なくらいだ」ヴァルはソレルの皿にデザートを気前よく盛りながら、にやりと笑った。「姉たちがどれほど僕をいじめたか、君には想像もできないだろうな」
「そうね、できそうもないわ。きっと、あなたを甘やかしてスポイルしちゃったんでしょうね。ところで、お姉さんたちはあなたがイギリスの親戚を訪ねることをどう思っていらっしゃるの?」
「ああ、みんな賛成してくれたよ。僕と賭をしたくらいだ。僕が帰る時、一緒に……」
「一緒に、なんなの?」ソレルは先を促した。ヴァルが何を言おうとしたのかよりも、急に口を閉じてしまった理由のほうに興味があった。
「イギリス人の妻を連れてくるかどうか賭けたのさ」ヴァルはすらすらと答えた。ソレルには、彼が何かを隠しているような気がした。
 しかしワインのせいで頭がぼんやりしていたので、ソレルはその話にそれ以上こだわるのをやめた。「お姉さんたちは、どうしてそんなふうに考えるのかしら?」
「僕たちの祖先が同じことをしたからだ。彼は一斤のパンを盗んだ罪で流刑になった。一斤で幸運だったんだ。さもなければ絞首刑になって一巻の終わりだった。そして、彼に農業の知識があるというので、運よく植民地開拓者の間で農場監督官に選ばれたらしい。それから七年間刑に服したあとで、彼はイギリスに戻ったんだ」
「妻を見つけるために?」ソレルは興味を引かれてきいたが、ヴァルはどういうわけか、もう話したくなさそうだった。
「これはおいしいな。もっとあるかな?」ヴァルが尋ねた。
「ええ。持ってくるわ」ソレルは立ち上がったが、またすぐに腰を下ろしてしまった。脚に力が入らず、部屋がぐるぐると回り出したのだ。
「気分でも悪いのかい?」
「ワインのせいよ。ちょっと飲みすぎたみたい……あのワインは強いから」しかしヴァルはまったく酔っていないようだ。
 今のソレルに必要なのは、酔いをさましてくれる濃いコーヒーだった。そう言おうとしたが、舌がもつれて言葉がはっきりしない。
「火のそばに座ったほうがいいんじゃないかな」ヴァルが言った。
「わたしに必要なのは、火じゃなくて新鮮な外の空気よ」ソレルはたどたどしく答えた。
「こんな天気に? 冗談だろう!」
「ストーブに薪をくべなきゃ。二階の暖炉にも」ソレルはもう一度立ち上がろうとしながら言った。
「僕が全部するよ。どうした、本当に酔っちゃったのかい?」
 その声の調子からする限り、ヴァルは本気で心配しているというよりおもしろがっているらしい。ヴァルはソレルを抱き上げて、安楽椅子へ運んだ。頭の中がぐるぐる回り、ソレルは小さくうめいた。もちろんワインのせいだわ。ヴァルの腕に抱かれていることとはなんの関係もない。ソレルはヴァルの肩に頭をもたせかけた。彼女の唇はヴァルの喉にほとんど触れそうになっている。ヴァルの日に焼けた肌は気持よかった。ヴァルは体全体を日に焼いているのかしら? ソレルはぼんやりと思い、そんなことを想像した自分に赤面した。
「火が熱すぎるかい?」ヴァルの心配そうな声に、ソレルは目を開けた。ヴァルは椅子の肘かけに両手を置いて、彼女の顔をのぞき込んでいる。
 シャツのすき間から黒い胸毛がのぞいている。ソレルは胃のあたりに奇妙なうずきを感じた。アンドルーの肌は青白くて、胸毛などない。アンドルーは日に焼けるのが嫌いで、彼がシャツを脱ぐのを見たのは一度しかなかった。ある夏の日、サイモンやフィオーナと一緒に、ペンブルックシャーの海岸沿いを歩いた時のことだ。兄がアンドルーの体を見て笑い、フィオーナが同情するようなまなざしを自分に向けたことを、ソレルは今でも覚えている。
 確かにアンドルーは、ヴァルのようなたくましい男性ではない。ソレルはかすかに身震いした。そして、額にヴァルの手が当てられるのを感じてうろたえた。
「熱があるのか調べたんだ」ソレルがたじろぐのを見て、ヴァルが言った。
「熱が出るとしたら、あなたのほうじゃないの。あんな雪の中を歩いてきたんだから」
「君にとってはそのほうがよかったのかな、僕が車の中で凍え死んだほうが?」
 その言葉を聞いてなぜかソレルは心が傷つき、自分でもびっくりした。当惑しながらヴァルの方に顔を向ける。彼の目が荒々しくきらめくのを見てソレルは体を硬くした。しかし次の瞬間、その光は消えていた。おそらく単なる気のせいなのだろう。
「君はもう寝たほうがいい。ここで酔いつぶれてしまわないうちにね」ヴァルが言った。
「酔いつぶれたりしないわ」ソレルは怒ったように言い返した。「ベッドには行けないわ。あなたと一緒になんて……」
 ヴァルに抱き上げられる時、彼が小さく笑ったような気がしたが、ソレルは頭がくらくらして何も考えられなかった。
「そんなに気になるなら、僕は床の上に寝るよ。慣れてるんだ。鉱石探査する時はもっとひどい場所で寝たこともあるんだから」
「鉱石探査?」ヴァルが階段の方に歩き出すと、ソレルは物憂げにきいた。ヴァルの腕に抱かれることにすっかり慣れてしまったわ。ソレルはぼんやりと思った。とてもいい気持だ。ヴァルの男らしいにおいやがっしりした体つきが好きだった。ヴァルに寄り添って眠れたらいいのに……。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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