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涙のあとに口づけを

涙のあとに口づけを


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マヤ・バンクス(Maya Banks)
 幼いころからロマンスを愛読し、作家になることを夢見ていた。十代になると毎日ノートを持ち歩き、想像のふくらむまま過激な愛と情熱の物語を書き続けるようになる。現在の話はそのときのものほど過激ではないが、ロマンティックという点では引けを取らない。現在は夫と三人の子供とともにテキサスで暮らしている。狩猟や釣り、ポーカーを好む。

解説

幾度も流した涙のあとを、あなたの唇が癒やしてくれる。ロマンス界を牽引するマヤ・バンクス、心震わせる最新刊!

傷を癒やす力を持つジェナは、その特殊な力のせいで幼い頃にカルト教団に拉致され、以来囚われの生活を送ってきた。性的暴行こそ受けずに済んだものの、世間から隔絶され、動物のように扱われる日々。だが20年あまりの月日を経た今、ついにジェナは施設を逃げ出す。そしてぼろぼろの服に傷だらけの足で必死に逃げる中、警備会社に勤める長身で筋骨たくましい男性、アイザックに出会う。彼はジェナが何者かから逃げていると察し救いの手を差し伸べてくれた。初めて知る優しさにジェナの心はとろけるが、容赦なく追っ手は迫り……。

抄録

 ジェナは震えて歯をカチカチ鳴らしながら、また自問していた。アイザックの寝室に来てから六度目だ。いけないことだとはわかっていた。許されない。ふしだらな女とか、もっとひどいレッテルを貼られてしまうだろう。それでもしてみたかった。どんなものだかよくわからないとしても、試してみたい。
 物心ついてからこれまで、ジェナにとってキスはどうでもいいことだった。だれもキスをしていなかったから、思いやりや好意の表現だとは思いも寄らなかった。グループ内の男性は女性に冷たく、ほとんど無視していた。女性は所有物であり、男性の楽しみのために存在するもので、それ以上ではなかった。好意や思いやりや、ましてや愛情表現のためにキスをするなど、ジェナは思ってもいなかった。
 どうしてアイザックはわたしにキスをしたのだろう? 二度した。唇にではなかったけれど、彼の温かい唇の感触はキスをされた部分にまだ残っていて、絶対に消えてほしくない。
 率直に、そして大胆になる勇気がわたしにある? アイザックにキスできるくらい図々しくなれる? 彼はぜんぜんかまわないと思っているみたいだ。わたしにもずっとやさしかったし、たぶんそれだけのことだろうけど。
 ジェナは恥ずかしく思いながらも唇をアイザックの唇に近づけた。やわらかく規則的な息が顎にかかる。唇にキスをしたかったが、そこまで大胆になる勇気がなくて横にそれて、口の端を唇でごく軽くかすめた。
 アイザックが小さくうめき声をもらし、ジェナの体にまわしていた両腕に力をこめ、自分の体にきつく押しつけて動けなくさせた。それから口を下げて、ジェナがしたかったように彼女の唇に唇をつけた。その動きはたとえようもなくやさしく、ジェナの目に涙がこみあげた。
 彼はゆっくり時間をかけてジェナの唇に温かくて控えめな圧力をかけ、唇以外の全身の感覚を目覚めさせた。さらに、唇の合わせ目を舌先でそっとたどってジェナを驚かせた。そのうえ舌で口のなかを探って、彼女の舌先をかすめてから引っこめ、また唇をたどってから、最後にまた口と口をぴったり密着させてキスを終えた。ジェナは全身がほてり、自分が新たななにかを求めはじめているのを感じた。
 アイザックは顔を離しながら鋭い目でジェナの目をのぞきこみ、観察している。
「いまのはどういうキス?」ジェナはたったいま終わった出来事にまごつき、動揺しながらささやいた。
「きみをとても大事に思っていると告げて、きみがとても特別な女性だと伝えるキスだ」
「大事に? 特別な?」ジェナは驚いて訊いた。
 アイザックがため息をつく。「きみに自分には価値がない、いないも同然だと思わせたのがだれなのか、僕は知らない。きみがまだそれを伝えるほどは僕を信頼していないせいだが、やつらが言ったのは大嘘だ。嘘以外のなにものでもない。きみはまるで奇跡そのものだ、ハニー。きみに特別な能力があるからではなく、そう思っている」
「心からあなたを信頼してるわ、アイザック」ジェナはすがるような目でアイザックを見つめた。「信用していないように思わせたのなら、ごめんなさい。わたしはただ心配なの。わたしのせいで、あなたやほかのチームメイトが怪我をしたり殺されたりするなんて耐えられない。あなたに……あなたたちのだれであっても、なにかあったらわたしは生きていけないわ」
 アイザックがやさしくジェナの頬を包みこみ、さらにそっと引き寄せた。
「ジェナ、聞いてほしい。よく聞くんだ、いいかい? 僕にもチームメイトにもなにも起こらない。きみを守るのが僕たちの仕事だ。僕たちを守るのはきみの仕事じゃない。わかるかい?」
「あの人たちがどんなに残酷か、あなたは知らないのよ」ジェナは涙声で言った。「あの人たちの計画も知らないわ」
「そうだ、知らない」アイザックが穏やかに言った。「きみが僕を信頼して打ち明けようとしてくれないからだ。僕たちを守りたいなら、きみにできるいちばんの方法は僕を信頼してすべてを語ることだよ。なにが最悪なのか知らなければ、最悪の事態に備えられない」
 ジェナは罪悪感に打ちのめされてうつむいた。アイザックの言うとおりだ。彼らの命とくらべれば、わたしの恥や屈辱感などどうでもいい。アイザックたちの安全よりも自分のプライドを優先させたりして、自分勝手もいいところだ。
「ごめんなさい、本当に」ジェナは振り絞るように言った。「そのとおりよ。あなたはすべてを知る必要がある。わたしが恥じて黙りこくっていても、あなたはひたすらやさしくしてくれたわ。わたしのプライドのせいであなたたち全員が死んでいたかもしれないのに」
 アイザックはジェナを慰めるように強く抱きしめた。「だれもきみを責めないよ。でも、僕は嘘はつかない。あの最低のやつらがきみになにをしたか、知らないままだと頭がどうにかなってしまいそうだ。やつらを皆殺しにしてやりたい。きみがもう逃げたり、いつもびくびくしたりせずにすむように。ハニー、信じてくれ。僕はきみの面倒を見る。受け入れてくれたら、きみが二度と傷つけられたりおびえたりしないようにする」
「もちろん信じるわ」ジェナは小さな声で言い、アイザックの無精髭が伸びた顎を手のひらで包んだ。
 こんな男性には会ったことがない。手ごわい戦士のようでありながら、わたしに対してはとてもやさしくて辛抱強く、なんだか泣きたくなってしまうほどだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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