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黄昏どきの眠り姫

黄昏どきの眠り姫


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サラ・モーガン(Sarah Morgan)
 イギリスのウィルトシャー州生まれ。看護師としての訓練を受けたのち、医療関連のさまざまな仕事に携わり、その経験をもとにしてロマンス小説を書き始めた。すてきなビジネスマンと結婚し、小さな男の子が二人いる。子育てに追われながらも暇を見つけては執筆活動にいそしんでいる。アウトドアライフを愛し、とりわけスキーと散歩が大のお気に入り。

解説

その指先が、はじめての愛を教えてくれた――RITA賞受賞作家がつむぐ、現代のおとぎ話の結末は……?

マット・ウォーカーの我慢は限界に達しようとしていた。この20年、彼は幼なじみであるフランキーを妹のように見守ってきたが、内心は兄らしからぬ感情で爆発寸前。というのも、恋愛恐怖症のフランキーは女性として見られることを極端に恐れ、少しでも彼が男の顔を出せば、野良猫のように逃げていってしまうからだ。しかし、さえない服と眼鏡の奥には、官能的な曲線と可憐なまなざしが隠れていることをマットは知っていた。進まない関係にしびれを切らした彼は、仕事という名目でフランキーをリゾートへ同行させることに……。

抄録

 フランキーは玄関のドアを開けた。「もうそんなに飲んだ――あら」
 ドア口にマットが立っていた。立っていた、というより、その空間をほとんどふさいでいたというほうが正しい。百八十センチを超える長身、仕事で重いものを持つせいで鍛えられた広い肩。威圧感があってもおかしくないのに、口元のかすかな笑みが角張った男らしさをやわらげている。女性がマット・ウォーカーを二度見る理由はいくらでもあるが、彼が女性に不自由しない理由は、骨まで溶かすようなこのほほえみだ。
「今のところ一滴も飲んでないよ。すぐにも飲みたいところだけど」マットは彼女とドアを見比べた。「セキュリティ用のチェーンをつけてあげたのに使ってないじゃないか」
「いつもは使ってるわ。ペイジが来たと思ったの」
 彼はいいにおいがする、とフランキーは思った。夏の雨と海のそよ風のようなにおい。首元に顔を埋めて吸いこみたくなる。
 そんなことをしても、恥ずかしい思いをするのはこちらだ。マットは簡単に恥じ入るような人じゃない。
「邪魔だったかな?」マットに濡れた髪をしげしげと見られ、フランキーはあわてて髪を撫でつけた。
 この髪は濡れると、お世辞にもきれいとはいえない色になる。昔、放課後にどしゃぶりの雨に打たれたとき、男の子に“さび”と言われたことがあった。
「邪魔じゃないけれど、ペイジとエヴァを捜してるならルーフテラスよ」
「ぼくが捜してるのは猫だ。見なかった?」
「いるわ。入って、ワインを開けたの」フランキーは何も考えずにマットを誘った。
「入れてくれるのか?」マットの目が輝いた。「光栄だな。土曜の夜だし、きみは一人の時間が大好きなのに」
 自分のことをこんなにもよく知っている相手だからこそ、マットとの関係は居心地がよかった。
「家主の特権よ」
「そんなものがあるとは知らなかった。ほかに、ぼくがまだ享受していない特権は何があるんだ?」
「ときおりのワイン、これがリストにあるのは確実ね」フランキーがドアを広く開けると、マットが先に中に入った。
 フランキーの目は彼の肩に留まった。こちらも血の通った人間だ。この肩幅、人に頼るタイプならすがりつきたくなるだろう。ただ、マットがどこから見てもセクシーなのは否定できない。もちろんそう思っていることは秘密だし、これからも言うつもりはない。
 フランキーはドアを閉めた。「どうして猫が逃げたの?」
「窓を開けておいてもいつもは怖がって外に出なかったから、閉めなかったんだ。クロウズがようやく外を探検する勇気を出したことを喜んでいいのか、逃げたことを悲しむべきなのかわからないよ」
「そうね、今回限りかどうかによるわね。女性はいつもあなたから逃げるの?」絶対にそんなことはないはずだ。
「しょっちゅうだよ。どんなにプライドが傷つくか」マットはリラックスしたままだ。フランキーは、彼といっしょにいるといつもそうなるように、胸がどきりとした。
 そして、いつものようにそれを無視した。
 母と違い、フランキーは誰かに惹かれたからといって衝動的に行動に移したりはしない。一夜の情事より長年の友情のほうがずっと大事だ。情事より楽しいことなんて山ほどある。
“もしセックスに成績があるとしたら、コール、きみはDマイナスだ”
 フランキーは顔をしかめた。どうして今こんなことを思い出したのだろう。
 あの男は最低だった。プライドの高すぎる男のことで悩むつもりなんかない。
 それにひきかえマットはいい友人だ。ほぼ毎日顔を合わせ、ルーフテラスでお酒を飲んだりムービー・ナイトを楽しんだり、〈ロマノズ〉で食事をしたりする。〈ロマノズ〉はジェイクの母がやっている地元のイタリアン・レストランだ。
 マットとの友情は、フランキーの人生で何より大切な人間関係の一つだ。
 フランキーのあとからキッチンに入ってきたマットは、窓辺の鉢植えを眺めた。「ハーブを育ててるんだね」
「少しね。スイートバジルとイタリアンパセリ。エヴァのためよ」
 マットは窓辺に歩いていって外の小さな庭を見やった。「ずいぶんきれいにしてるんだな。きみがここに住んでくれてぼくはラッキーだ」
 ふだん二人はいろんな話をするが、個人的な話はめったにしない。こんなことであわててしまう自分がいやだとフランキーは思った。
「ラッキーなのはわたしよ。マットがいなかったら、今ごろ靴箱ぐらいの広さのアパートメントに住んで、オーブンを収納代わりにしていただろうから。ニューヨークの住宅事情、知ってるでしょう?」恥ずかしくなったのでかがんでクロウズを撫でようとしたが、猫はテーブルの下に逃げこんだ。
 マットがキッチンチェアに腰掛けると、クロウズはすぐに近づいて膝に飛び乗った。「餌をやってくれてありがとう」
「どういたしまして」クロウズはゆっくり体を伸ばしたが、その拍子にふらついて落ちそうになり、爪を出した。しかしマットはクロウズの背中に手を添え、腿のたくましい筋肉でしっかり支えている。
 その手と、安心させるようにゆっくりと動く指を見ていると、フランキーは体が熱くなるのを感じた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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