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天使の情熱【MIRA文庫版】

天使の情熱【MIRA文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイシー・マイケルズ(Kasey Michaels)
 ニューヨークタイムズのベストセラーリストに二十以上の執筆作品が載った実力派作家。夫とのあいだに四人の子供がいる彼女は、アメリカロマンス作家協会やロマンティックタイムズ誌の数々の賞の受賞者でもある。

解説

きみはまだ、磨かれる前の原石だ――ロンドン社交界に今、可憐な花が咲き誇る。

おれが死んだら、妹の後見人になってくれ――戦死した友人との約束を果たすため片田舎を訪れたダヴェントリー侯爵は、目の前の廃墟のような館を見て唖然とした。こんな場所で人が暮らせるものなのか? しかも友人の妹プルーデンスは、亡き兄のお下がりをまとった、どこから見ても少年のような垢抜けない容貌で、もう18歳だという。後見人としての務めをまっとうすべく、ダヴェントリーはプルーデンスを社交界デビューさせようと、ロンドンの街へ連れていくが……。天真爛漫なうら若きレディに翻弄される、侯爵の運命やいかに?
*本書は、ハーレクイン・ヒストリカルから既に配信されている作品のMIRA文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 バニングは強い酒を飲むときのようにワインをぐいとあおり、薄暗い戸口に立ってこちらへ笑いかけているプルーデンスをにらんだ。「きみが寄りかかっている木製の仕掛けはドアと呼ばれているんだぞ、ミス・マカフィ。文明人がプライバシーを守るために発明したものだ。エチケットをわきまえた生まれのいい人間が、プライベートな場所へ入れてもらいたいときにノックするためのものでもある。さっさとドアを閉めて帰ってくれ」
「ええ、いいわよ」プルーデンスは愛想よく言って、ドアを開け放したまますたすたとテーブルへ歩いてくると、バニングの向かい側の椅子にどさりと腰をおろし、両脚を広げて前方へ投げだした。これからひと晩、ゲームをしたり飲んだりしようと考えている若い男のようだ。彼女は男物のシャツを着てブリーチズをはいていた。「でも、今はまだどこへも行く気がないから、出ていくときにもう一度ドアを閉めるように教えて。さっきあなたが言ったことだけど、わたしの生まれはいいわ。少なくとも兄は繰り返しわたしにそう言った。でも、エチケットのほうは改善の余地があるかもね」
「ぼくのプライベートなダイニングルームへ自分から入ってきたのは、ぼくにきみの純潔を奪う気はないとわかって安心したからか?」バニングはきいた。軽い口調でからかうように、そしていかにも見下したように言えたので、内心ほっとした。
「まあ、ダヴェントリー」プルーデンスは甘えるように言って、豊かな髪をうなじからかきあげ、彼にウインクした。「あなたのような年寄りが、誘惑をたくらんだり、実行したりできると考えたわたしがばかだった。わたしはただ、あなたを怒らせたかっただけ。それと、あなたが色目で見ていることを教えたかったの。どう、うまくいったでしょう?」
「きみはいつも人をからかって楽しんでいるんだろう?」バニングの見ている前で、プルーデンスは身を乗りだして勝手にワインをグラスに注ぐと、ブーツを履いた足をテーブルにのせてくるぶしのところで交差させ、座っている椅子をわずかに後ろへ傾けた。「それとも、粗野な振る舞いで人をあぜんとさせることに大きな喜びを感じるのか?」
 彼女はグラスの縁越しにバニングを見て、さもうんざりしたようにため息をついた。「わたしはちゃんとした言葉遣いができるってことを、もうあなたに示してあげたわ、ダヴェントリー。妹さんの前では婦徳のかがみと言えるほど行儀よく振る舞うことも、もう約束したわね。実際のところ」彼女は子供みたいに無邪気な笑顔を浮かべて続けた。「普段のわたしは、たいてい愛想のいい思いやりのある人間なのよ。だけど残念ながらあなたは、わたしがあなたを罰するために少しくらいいじめても我慢しなくてはだめ。だって、わたしをシャドウェルのところに何カ月も余分にほったらかしておいたんですもの。今ごろになって迎えに来るものだから、わたしは大急ぎで社交界デビューしなきゃならない。そこのところを覚えておいて。わたしは今でもかなり怒っているのよ。でも、ロンドンへ近づくにつれて、少しずつ怒りが薄らいでいく。とかげ女はどうかって? そうね、あの女をどうにかしてぎゃふんといわせたいものだわ」
「いいとも」バニングは乾杯をするかのようにグラスを掲げた。「あと一日くらいなら、きみの子供っぽいかんしゃくの犠牲になっても耐えてみせる。その代わりきみも覚えておいてくれ。妹の家に着いたら、馬車をとめずにきみを玄関前へほうりだしてやるからな」
 プルーデンスが大声で笑った。上流社会の未婚女性のような忍び笑いでなく、心底愉快そうな笑い方だったので、バニングもつられて笑った。これほどいい気分になるのは数時間ぶり、いや数日ぶりのことだった。
「とかげ女を先にほうりだしてちょうだいね。そうしたら彼女の上へ乗っかれるもの。もっとも、あんなにやせていたんじゃ、クッション代わりにならないでしょうけど。とにかくあの女の意地悪さときたら、いいかげん我慢ならないわ。わたしはあんまり人を憎まないたちだけど、彼女ったら、わたしはとんでもないあばずれで今さら救いようがないと、あなたの妹さんに言ってやるって脅すのよ。ほんと頭にきちゃう」プルーデンスはそう言って、ワインをごくごく飲んだ。
 バニングはため息をつき、なぜぼくは穏やかな気持ちでここに座り、まるで年下の親友であるかのようにプルーデンスと話をしたり、一緒になって笑ったり、彼女がワインを飲むのを眺めたりしているのだろう、といぶかしんだ。彼は自分が誇らしく思えると同時に、さっきまでうじうじとくだらないことを考えて落ちこんでいた自分が、ばかみたいに思えた。驚いたことに今の彼は、プルーデンスに対して少しも欲望を覚えなかった。彼女にキスしたいとも、ブリーチズにぴったり包まれた腰を両手でなでたいとも思わなかった。彼女を抱き寄せ……ぴったり体を合わせて……彼女を奪い……彼女の熱い息吹を、燃えるような生命力を吸って……。
 身を乗りだしてグラスにもう一杯ワインを注いだバニングは、このワインを飲んで自分の良心に嘘をつき続けるべきか、それともグラスの中身を自分のほてった顔にぶちまけて、いくぶんなりと自制心や正気をとり戻すべきだろうか、と思い悩んだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

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