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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

ある愛の幻

ある愛の幻


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャシー・ウィリアムズ(Cathy Williams)
 トリニダード・トバゴの出身で、トリニダード島とトバゴ島、二つの島で育つ。奨学金を得てイギリスに渡り、一九七五年エクスター大学に入学して語学と文学を学んだ。大学で夫のリチャードと出会い、結婚後はイングランドに暮らす。テムズ・バレーに住んでいたが、現在は中部地方在住。夫との間に三人の娘がいる。

解説

無残な別れを経てもなお、愛の記憶が絡みつく――

「いったい何の権利があって、僕から息子をとり上げたんだ?」偶然再会し、強引に家まで送ってくれた大富豪レアンドロは彼にそっくりなアビゲイルの赤ん坊を前にして激怒した。1年半前、彼の経営するホテルで出会ったとたん激しい恋に落ち、その強烈な魅力に抗うすべもなくアビゲイルは純潔を捧げた。だが夢のような日々も束の間、彼の妹に悪質な嫌がらせをされ、アビゲイルは泥棒呼ばわりされて彼に捨てられたのだった。レアンドロは金褐色の瞳に怒りをたぎらせ、冷徹に告げた。「結婚するんだ。君が好もうと好むまいと、ほかに道はない」

■社会の底辺に生まれた私が大富豪の妻になれるはずはない、と愛なき求婚を断るアビゲイル。どちらも譲らず、試用期間として同居を始めますが、互いへの情熱は抑えがたく……。愛を知らないプレイボーイ富豪と天涯孤独の乙女の切なくも甘美なシンデレラロマンス。

抄録

 ふと頭をよぎったのは、サムの――ベビーベッドですやすや眠る息子の姿だった。そして妊娠がわかったあと、自分が下したいくつかの決断も。あのころは恐怖と罪悪感の泥沼に沈みかけていた。
 赤ん坊ができたことをレアンドロに伝えなかった判断が正しいのかどうか、当時のアビゲイルは体を二つに引き裂かれるようだった。でも少なくとも、伏せておけば二人の関係を過去に葬れた。いずれ時機を見て、連絡をとるつもりではいた。アビゲイルにとっては現在を生きるのに精いっぱいで、未来などないも同然だった。
 今はその未来がいきなり現在になだれこみ、あの日下した決断に詰め寄っていた。アビゲイルの心は揺さぶられ、コントロールを失ってばらばらになりそうだった。
 でも、騒ぎを起こしてはいけない。人生の進路を考え直すにしても、落ち着いて理性的に進めなければ。そう考えると少し気持ちが楽になり、レアンドロの質問について考える余裕ができた。ほかの男ですって? 思わず笑いだしそうになった。仕事と子育てに必死で息つく暇もないのに、男性と複雑な関係を結べるわけがない。どちらにせよ、誘いをかけてくる男性もいなかった。
「いいえ、レアンドロ」アビゲイルはすまして答えた。「ロンドンに引き返すなり、あなたの代わりを探すようなことはしなかった。仕事を探すのに忙しかったから」
「異性に近づく暇なんてなかった、というわけか?」
「あなたとは違うわ」こらえきれずに出た皮肉だった。ほかの女性とのつき合いに走るだけでなく、婚約指輪と披露パーティの準備をさせるほど深い仲になるなんて。アビゲイルは顔をそむけたが、傷つき嫉妬している自分にいらだっていた。
「だが、僕もうまくいかなかった」レアンドロがそっと言い、手を伸ばしてアビゲイルの手首をとらえた。
 親指で肌をなでられて声をもらしそうになり、アビゲイルは手を引っこめようとしたができなかった。凍りついたように動けない。
「いいことを教えようか?」親指でなおも彼女の肌をなでながら、レアンドロが問いかける。「今日、君と再会したのは必然だったんだ、アビゲイル」
「なにを言ってるのか、わからないわ」アビゲイルがかすれた声で反論すると、彼が口元をゆがめて笑みを返してくる。
「いや、君はわかっている」やさしい口調で相手の言葉をただす。「だからこんなに震えているんだろう? 君のことは僕の体がまだ覚えている。君は二度とベッドに誘ってはいけない相手だと、愚かなことだとわかっている。だが、ほしいものはほしい。君だってひどく……おかしな終わり方をしてしまったと思わないのか?」
 純粋な好奇心をうかがわせる、静かでさりげない口調だった。今の言葉を頭の中で繰り返しても、聞き違いなどではなさそうだ。
 では、レアンドロは今でも私をベッドに誘いたがっているのだ!
 アビゲイルはあらためて、握られた手をふりほどこうとしたが、レアンドロは放してくれなかった。
 彼のまなざしに、けだるげに力がこもる。「もう一度、僕がなにを言っているかわからないと言うつもりなんだろう? そんなことを口にするなんて、どうかしていると。違うのか?」
 そのとおりだった。アビゲイルは乾いた唇を湿して、動悸を静めようとした。レアンドロは今でも知る限りいちばんセクシーな男性だけれど、もう惹かれる気持ちは残っていない。なぜなら、彼女を侮辱し、なじり、不信感をぶつけてきた男性に惹かれるなんてありえないことだから。
 なのにアビゲイルの肌はほてり、脚のつけ根は熱く潤っていた。視線がひとりでにレアンドロへ吸い寄せられ、耳は甘く心をとろかす低い声に釘づけだった。
 速まる動悸は握ったアビゲイルの手首を通して、レアンドロにも伝わってきた。彼女のやわらかな肌が、記憶をよみがえらせる。軽くふれているだけで、アビゲイルの全身の感触が、のぼりつめるときのうめき声や叫び声が、自分の下で身もだえし、わななく姿がはっきりよみがえってきた。強烈なたかぶりに、レアンドロはいったん姿勢をただし、こわばった下腹部を落ち着かせようとした。
 そのとき、開きかけたアビゲイルの唇に目がとまった。
 彼はキスをするつもりだとアビゲイルが思った次の瞬間、レアンドロの唇が唇に重なった。花が太陽の光のほうになびくように、体が本能的に彼のほうに引き寄せられていく。
 アビゲイルの体の奥に、細かい震えが立て続けに走った。レアンドロがほしいと、彼女はずっと思っていた。大嫌いで、そばに一緒にいるだけで怖くなり、大きな秘密をかかえたために顔を合わせただけで平静を失ってしまうのに、彼のキスだけでは満足できそうになかった。
 こらえきれずに小さくうめいて、アビゲイルはレアンドロのセーターの背中に両手を回して荒っぽく引き寄せた。体を密着させたまま、レアンドロがアビゲイルの肩をつかみ、うしろの壁に押しつけた。


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