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遅れてきた恋人【ハーレクイン文庫版】

遅れてきた恋人【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

幼くして孤児となったジェシーは、父の友人に引き取られ、富裕なマッキャンドレス家の子供たちと成長した。けれど12歳のとき、長男キングへの恋心に気づいて愕然とする。兄妹のように育てられ、彼は妹としてしか見てくれないのに。思い悩んだジェシーは家を出て、別の町で暮らした。だが、ある日、一命は取り留めたものの暴漢に襲われてジェシーは深い傷を負い、キングに屋敷に連れ戻された――魅力的な義兄と暮らさなくてはならない。これからずっと。忘れていた。ずっと忘れていたかった恋煩いが、いま再び蘇る。
*本書は、ハーレクイン・リクエストから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 シーツがくしゃくしゃになっていた。ベッドには病人が転げ落ちることのないようにクロム製の柵がつけられていたが、ジェシーは夢のなかで必死に襲撃者から逃れようとしたのだろう。その柵にぶつかったためと思われる痣ができていた。
 彼女がさらされている恐怖に圧倒され、キングは気持を抑えられなくなった。すぐにジェシーを起こして、もう危険はないとわからせようとした。
 だが、彼はためらった。これ以上、ジェシーを怖がらせたくない。
 突然、怒りがこみあげた。もし機会があったなら、彼女にこんな思いをさせた男には、はるかに恐ろしい思いをさせてやる。
 キングはジャケットをベッドの足もとにかけた。そして眠っているジェシーのわきに立つと、誰がそばにいるかが伝わるように願いながら、そっと彼女の名前を呼んだ。
 枕の上にジェシーの髪が広がっていた。乱れた黒髪の幾筋かが、汗に濡れたハート形の顔に張りついている。
 ジェシーに触れたいという衝動をこらえ、キングは話しかけた。話し続けながら、彼女の華奢な体にチューブや機械がつけられていないことに気づいてほっとした。
 つまり、命にかかわる深刻な状態ではないということだ。明らかにわかるけがは、包帯が巻かれた両手だけだった。ジェシーはその両手を弱々しく振り回し、夢のなかで襲ってくる男と戦い続けている。
 キングはついにそんな様子に耐えきれなくなった。彼女の夢の世界に入りこもうと、話しかける声を少しだけ大きくする。
 ジェシーと会うのは四年ぶりだった。ときどき話はしていたが、いつも電話でだった。なぜか距離を置こうとする彼女に、キングは理由をはかりかねてじつのところ途方に暮れていた。
 なんの予兆もなく、ある日ジェシーは教師の職を得ると、ダブルM牧場を去っていった。なぜ相談もせずに彼女は家を出ていったのか、キングにはわからなかった。そしていまも、彼女に対する自分の感情を言葉で表現できずにいた。
 キングにとってジェシーは、ずっと彼のジェシーだった。牧場ではいつもキングのあとをついてきた少女であり、アンドリューの死の寂しさに耐えて、すがりついてきた少女だ。
 彼女に感じていた友情は、やがてひとりの女性への親密な思いへと変化したが、ジェシーが突然去ってしまったため、彼にはその変化を理解する時間がなかった。そのときから、キングの心には誰もうめることができない大きな穴があいていた。
 キングは彼女に触れようとした。とにかく、ジェシーの心をさいなんでいる恐ろしい悪夢から救いだしたかった。
 ふいにジェシーが手を大きく振り回し、片手をベッドの柵に激しくぶつけた。その痛みで、彼女は悪夢から目覚めた。
 うめいてまばたきをしたジェシーは、まわりの状況となじみのないにおいになじもうとした。鼓動が速くなる。
 ベッドのわきに大きな男性の影を見た途端、小さな悲鳴がもれた。聞き覚えのあるハスキーな声が耳に届いたのはそのときだった。
 キング! とても大きくて、魅力的で、心配そうな顔をしている。襲われてから初めて、ジェシーは安全だという気分に包まれた。
「キング?」
 それでもまだ信じられず、ジェシーはささやくように問いかけた。
「ああ、ジェシー・ローズ」
 キングはそっと呼びかけた。
「いったいなにをされたんだ?」
 懐かしい呼びかけに、ジェシーは胸がつまった。ずっと泣けなかったが、心の奥深くからわきでるように涙があふれてきた。
 わたしをジェシー・ローズと呼ぶのはキングだけ。ほかの誰もそうは呼ばない。
 キングはベッドの片側の柵を下ろした。
「きみを抱いてもいいかい、ジェシー? きみが無事だとこの手でたしかめたいんだ」
 だが、その言葉は必要なかった。柵が下ろされた瞬間、ジェシーは彼の腕のなかに飛びこんでいた。
 彼女を抱きしめて、キングは安堵の吐息をついた。ジェシーは震えながらも、必死で苦しみを押し殺そうとしているのがわかった。
「我慢しなくていいんだ、ジェシー・ローズ。こうしてぼくがここにいる。もう誰にもきみを傷つけさせはしない。聞こえるかい? 絶対にだ!」
 キングはジェシーを両腕で抱きあげ、窓際の大きな背の高い椅子まで運んだ。そして腰を下ろすと、彼女を自分の膝の上にのせた。
 ジェシーはキングに身をまかせた。かつて、キングは彼女の世界そのものだった。それから……。ジェシーは思い出を心の隅に押しやり、彼のシャツに顔をうずめた。
 心の古傷を刺激したくない。新しい傷だけでもつらいのに。
 すすり泣きが、しゃくりあげるようなむせび泣きになった。
「怖かった、とても怖かったわ、キング。死ぬんだと思った」
「わかっているよ。もう大丈夫だ、ジェシー」
 彼女を優しく揺すりながら、キングは言った。
「好きなだけ泣くといい。ぼくはずっときみのそばにいるよ」
 包帯の巻かれた両手を、ジェシーはそっと胸にあて、涙が流れ落ちるにまかせた。襲われてから初めて、自分は生きのびられると信じることができた。もうひとりぼっちではない。キングが守ってくれる。それは、太陽が毎日のぼってくるのと同じくらいたしかなことだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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