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ティーカップに愛を ベティ・ニールズ選集 18

ティーカップに愛を ベティ・ニールズ選集 18


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュベティ・ニールズ選集
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ベティ・ニールズ(Betty Neels)
 イギリス南西部のデボン州で子供時代と青春時代を過ごした後、看護師および助産師としての教育を受けた。戦争中に従軍看護師として働いていたとき、オランダ人の男性と知り合って結婚。以後十四年間、夫の故郷オランダに住み、ベティは看護師、夫は病院事務と、ともに病院で働いた。イギリスに戻って看護師の仕事を退いた後、よいロマンス小説がないことを嘆く女性の声を地元の図書館で耳にし、自ら執筆を決意した。1969年、「赤毛のアデレイド」を発表して作家活動に入る。穏やかで静かなロマンス、その優しい作風が多くのファンを魅了した。2001年6月、惜しまれつつ永遠の眠りについた。彼女が生みだした作品は百三十以上にも及んでいる。好きな映画は『逢いびき』(英1945年)、尊敬する人物はウィンストン・チャーチルだったという。

解説

愛を注がれないわたしはまるで、からっぽのティーカップ……。

見習い看護師のアグネスは夜勤明けに講義に出席したとき、最前列のまんなかだというのに思わず居眠りをしてしまい、オランダ人外科医フラーム・デル・リンセンに叱責された。長身で肩幅の広い彼がぱりっとした服を着た姿はいかにも魅力的で、壇上の彼を見上げる周囲の女性たちは恍惚のため息をついている。アグネスはデル・リンセン医師の冷たく光る碧眼に射られ、赤面した。「君は尊敬心に欠けている。それに厚かましい」ああ、もしも姉みたいに美人だったら、こうは言われなかったのかしら? 自分への自信のなさと淡い想いとに心乱れるアグネスだったが、それからまもなく、ひどく惨めな姿を再び彼に目撃されてしまう!

■優しく穏やかな作風が今なお愛され続けるベティ・ニールズの名作。牧師の家庭に生まれた5人きょうだいの末娘アグネスは姉たちに似ず冴えない器量で、親から“かわいそうな子”と呼ばれる始末。ちょっぴりいじけ気味な彼女の小さな恋の行方は?

抄録

 それは朝食のすぐ後、ミースが注文し忘れた果物を買いに、アグネスが表通りの近くにある果物店に出掛けた時だった。近道をしようと思い、高いれんがの壁にはさまれた薄暗い路地に入った。見ると、男の子が数人、地面にしゃがみこんで何かをのぞきこんでいる。子供たちはアグネスの足音を聞きつけて振り返り、一目散に逃げ出した。その様子ではきっと何かわるさをしていたにちがいない。アグネスは路上に横たわっている小さなものを見て走り出した。猫――かわいそうにがりがりにやせこけ、しなびたようにぐったりした首にはきつく縄が巻きつけられていた。アグネスは濡れたきたない石畳に膝をつき、縄を解こうと焦った。が、ナイフかはさみがなければどうにもならない。アグネスは猫を抱き上げると、広い通りに向かって夢中で走った。通りに出るとアグネスは一瞬立ち止まった。どこかの店、通りがかりの人でもいい、ポケットナイフでも持っていないかしら。しかし、歩いているのは女の人ばかりで、一番近い店も少し先に行かないとない。また走り出そうとした時、誰かに名前を呼ばれた。歩道の脇にミニが止まっており、デル・リンセン先生が開けたドアを手で支えていた。アグネスは車の中に転げこみ、ナイフが要るのとあえぎながら叫んだ。
 先生はひと目で状況を見てとり、車を車道に戻した。「ここには駐車できないが――あの信号まで――じきだ。早く赤に変わってくれ」
 信号は赤になった。先生はすばやくポケットナイフを取り出し、注意深く縄を切り、車の列が再び動き出したのでハンドルを握った。猫はぐったりとしていた。
「ああ、どうしよう。動物病院へ連れていって!」アグネスは気も狂わんばかりだった。
「家に行こう。すぐそこだから」デル・リンセン先生は言った。「まだ息があるなら、見込みはある」
 家に着くと先生はアグネスから猫を抱きとり、先に立って細長い玄関ホールへ入っていった。鏡板を張りめぐらした壁、手のこんだしっくい塗りの高い天井、白と黒の市松模様の床にはなめらかな敷物が敷かれていた。が、その時は猫のことがただただ心配で、アグネスは部屋の様子も何も目に入らなかった。自分が美しい敷物の上に雨のしずくをぽたぽたしたたらせていることも、スカーフが頭から脱げて髪がぐっしょり額にはりついていることにも気付かなかった。中年のがっしりとした体つきの男が静かに現れ、アグネスがレインコートを脱ぐのをにこやかな顔つきで手伝い、それから機敏な足どりでホールを横切りひとつのドアを開いた。高い窓が並んでいる広々とした明るい部屋だった。大きな机、その後ろのどっしりといかめしい椅子、それにもっと座り心地のよさそうなのが、そこここに幾つか置かれていた。ぎっしりと本の詰まった本棚もある。アグネスは厚いカーペットを踏んで、デル・リンセン先生の後についていった。
 先生は小さなテーブルの上に猫をそっと下ろし、身をかがめてその体を調べた。アグネスは正視していられなかった。
「飢えで弱っているんだな。一、二箇所傷跡があるが、他には外傷もないし骨折もしていない。縄でしめられた影響はほとんどない」
 アグネスの目から、思わず涙が二筋こぼれ落ちた。アグネスは恥ずかしくなり頬を赤くしたが、先生は見ないふりをしてベルを鳴らした。さっきの男が足音もなく現れると、先生はオランダ語で何か用事を言いつけた。アグネスは急いで涙を拭いた。
「食べ物を与えて休ませれば、二、三日で元気になるだろう。ところで、あいつを何と呼ぶことにしようか?」
「この猫を飼ってくださるんですか?」
「飼っていけないかな? 家の家政婦は一匹飼っているし、デイジーも気にするまい」
「デイジー?」アグネスは先生がその名前をことに優しく言ったのに気付いた。先生の恋人かしら。
「僕の金色のラブラドル犬さ。それ、ヤープがミルクを持ってきた」
 猫は鼻をひくりとさせ、舌の先をわずかに出したが、ミルクをなめる力はなかった。アグネスは濃い温かいミルクに指先をひたし、猫の口に持っていった。少しすると猫はまた舌を出し、弱々しくはあったが一所懸命にアグネスの指をなめはじめた。デル・リンセン先生はデスクの端に腰を掛け、その様子を見ていた。
「一日二日は、二時間おきに少しずつミルクを飲ませよう」
 ヤープが古毛布を敷いた箱を持ってきて、猫をそっと箱の中に寝かせ、連れていった。
「台所だよ」先生は、問いかけるアグネスの目に答えて言った。「暖かいし、大勢の目で見ていてやれるからね。暇をみて友達の獣医の往診を頼もう」
「ありがとうございました。わたし、感謝の気持でいっぱいです」アグネスは自分の足に目を落とした。靴は泥だらけで濡れていた。きっとカーペットを汚してしまったわ!
「さて、コーヒーでも一杯飲むことにしようか」
 アグネスはその時になって、やっと落ち着いて先生を見詰めた。先生はズボンにセーターという服装で、ひげがのびていた。
「ずっと病院にいらしたんですね。それじゃ、さぞお疲れでしょう。コーヒーは、せっかくですが……わたし、ミースに頼まれて買い物に行くところだったんです」ミースという名前が、前日の先生とのやりとりを思い出させ、アグネスは急にもじもじと赤くなった。が、先生はそんなことは忘れてしまったように、機嫌よく言った。
「たいしたことはない。眠くはないが腹ぺこだ。朝食をとる間一緒にいてくれないかな。それに君のレインコートもまだ乾いていないだろう」


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