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身代わり秘書の純真

身代わり秘書の純真


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイトリン・クルーズ(Caitlin Crews)
 ニューヨーク市近郊で育つ。12歳のときに読んだ、海賊が主人公の物語がきっかけでロマンス小説に傾倒しはじめた。10代で初めて訪れたロンドンにたちまち恋をし、その後は世界各地を旅して回った。プラハやアテネ、ローマ、ハワイなど、エキゾチックな地を舞台に描きたいと語る。

解説

かごの鳥が自由を求め、普通の暮らしを手に入れたとき……。

「私はヴァレンティナ」「私はナタリーよ」何から何まで自分にそっくりな女性と空港で出会い、ヴァレンティナ王女は鏡を見ているような錯覚に陥った。そして妙案がひらめいた。2カ月後に迫る政略結婚の前に、夢にまで見た普通の暮らしを経験できるまたとないチャンスだ。仕事に疲れ切った様子のナタリーを懸命に説き伏せた彼女は、世界的な大富豪アキレスの秘書として化粧室をあとにした。魅惑的な金色の瞳にたやすく正体を見破られるとは――アキレスが生涯忘れ得ぬ人になるとは夢にも思わずに。

■互いに真実には触れぬまま、禁断の愛に落ちるふたり。めくるめく2カ月が過ぎ、ヴァレンティナは彼への想いを振り切って帰国しますが、お腹には小さな命が宿っていて……。C・クルーズの官能的なロイヤル・ロマンス、『すり替わった王家の花嫁』関連作です。

抄録

「すまないが」アキレスは一瞬の間をおいて言った。胸の内にはまだ、急激に湧き上がってきたどす黒い感情と怒りが居座っている。「聞き違いをしたようだ。きみがこの仕事を辞めるつもりだなどと本気で言うはずがない。‘僕’のもとを離れたいだなどと」
 自分でもぞっとするようなことを言ったのが信じられない。おそらくある程度はそのとおりなのだろうが。それにしても、僕の秘書がなんのためらいもなく辞めると言いだすとは、いきなり頬を引っぱたかれたようだった。
「いま考えているところなの」ナタリーは答えた。まだ微笑している。彼女自身の持つ危うさや、アキレスの心にうねるどす黒い感情になど気づきもせずに。そのどす黒い感情は、彼の身内に眠るモンスターを目覚めさせるのが、いかにたやすいかを彼に思い知らせた。
 だが、ようやく我に返ったアキレスは、声をあげて笑った。「報酬アップの交渉のつもりなら、褒められた作戦とは言いがたいな、ミス・モネット。きみはいまのままで充分、仕事に見合った報酬を得ている。もらいすぎだと言う者もいるかもしれない」
「そんなに? そうかもね」ナタリーに心を動かされた様子は少しもなかった。「でも、あなたのライバルたちは、あなたがどれほど私を当てにしているか、ちゃんと気づいているかもしれない。億万長者に顎でこき使われているんだから、私はもっともらってもいいかもしれないと」
「前に癇癪を起こしてきみを困らせたことはなかったと思うが」
 ナタリーは穏やかにほほ笑んだ。「あなたがなかったと言うのだから、そのとおりなんでしょうね」
「僕はいつも癇癪を起こしている。だが、それできみに迷惑をかけたことはない。つまり、迷惑をかけられないようにするのがきみの仕事の一部でもある」
「それはそうね」彼女の謎めいた笑みが深まった気がする。「私がその仕事が得意じゃないのは確かだけど」
 アキレスはありえない気分だった。ナタリーのまなざしには、冷ややかな挑戦めいたものがある。まるで二人は対等だと言わんばかりだ。狭い空間越しに手を伸ばし、向かいに座る彼女に触れたくなるのはなぜだ? 彼女の肌が見た目どおり柔らかいかどうか確かめるために。あのセクシーな唇を味わうために……。
 僕はいったいどうしてしまったんだ?
 アキレスは頭を振って、何よりもまず思考を鮮明にしようとした。「これがきみの交渉術なら、アプローチの方法を考え直したほうがいい。やりすぎだということくらい、きみもよくわかっているはずだ」
「これが報酬や癇癪のような問題を話すのに絶好の機会だと考える者もいるのよ」ナタリーの声は相変わらず平板で落ち着いていた。「要するに、一日二十二時間労働を期待され、災難に見舞われれば怒鳴られるってことを繰り返していると、人の思考は自動的にどこかが壊れてしまう。それこそが人間の自然な姿なのよ」
「きみはどこも壊れてなどいない。それに、世界じゅうを旅するのに忙しくて、僕が払った金を使う暇もないじゃないか」
「たまったお金を楽しく使う時間が一日にあと二時間もあれば、どんなにいいか」
「ほかの連中は僕と五分でも過ごす機会が得られるならなんでもする」アキレスは彼女に思い出させた。「それとも、きみは僕が誰か忘れてしまったのか?」
「やれやれ」
 ナタリーがかぶりを振り、ボスをとがめようとしていることに、アキレスはひどく驚いた。よりによってこの僕を。
「もっと礼儀正しくしても罰は当たらないんじゃないかしら?」
 礼儀……。秘書が彼に礼儀を教えようとしている。
「とりあえず飛行機には乗ったんだから、今日、辞めようとは思っていないわ」ナタリーが“今日”という言葉を強調したのは、聞き逃しようもなかった。
 そしてそのことで、アキレスの心の中に何かが築かれはじめた。大きくてどす黒く、途方もないものが。それが怒りではないかと思うと恐ろしくてならなかった。
 だが、彼ははねのけた。たとえそれがなんであろうと。悪魔ははるか昔へ置いてきた。もう二度とあそこへ戻るつもりはない。
「辞めたいのであれば、引き留めはしない、ミス・モネット」アキレスは冷たい口調で請け合った。「なぜ、僕がきみを引き留めると思ったのかな。辞めないでくれなんて誰が言うものか。僕が指をぱちんと鳴らすだけで、きみの後任などすぐ決まる」
 アキレスが知っているはずの秘書なら、その言葉を聞いて、喉にこみ上げる塊をのみ下し、すぐに顔をそむけただろう。そして、スカートを撫でおろして皺を伸ばしながら、謝罪の言葉のひとつも口にしていたはずだ。ナタリーが彼を怒らせたのは、この数年で二、三度しかなかったし、たいていは彼女がうまく言い逃れてその場を切り抜けてきた。それを期待して、彼はナタリーを見つめた。
 ところが、今日のナタリーは悩ましいポーズで彼の注意をそらし、自信に満ちた穏やかな目で見つめ返した。アキレスはそのせいで、彼女をめちゃくちゃにしたいような気にさせられた。あの平凡なポニーテールに両手を差し入れ、つややかな赤褐色の髪の手触りを楽しみたい。あるいは真っ白なブラウスの下に。いっそのこと、あのスカートの下に手を入れてみようか。
 本来ならそんなことを考える自分にぞっとするはずなのに、そうならないのがひどく腹立たしい。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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