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熱い目覚め【ハーレクインSP文庫版】

熱い目覚め【ハーレクインSP文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

国際的企業グループの経営者パトリックは、高級車を降りると、こぢんまりとした工芸品店に足を踏み入れた。カウンターに佇むのは、いかにも無垢で清楚然とした女性。ここを訪ねたのは“話をつけてきて”と姉に泣きつかれたからだ。姉は、この女性イゾベルこそが夫の浮気相手だと確信している。だが、聞いていたようなふしだらな女には到底見えない……。イゾベルの上品で控えめな微笑を見ながら、天使なのか悪女なのか決めかね、パトリックは葛藤していた。美しき彼女の虜にすでになってしまったと自分では気づかぬまま。
*本書は、ハーレクイン文庫から既に配信されている作品のハーレクインSP文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「お気に召したでしょうか?」
 ウエイトレスが皿を下げに来て、イゾベルの皿を横目で見た。
「え……ええ」イゾベルは真っ赤になってわびるように言った。「あいにく、あまり食欲がなくて。きっと暑さのせいね」
「あるいは僕のせいだろうな」ウエイトレスが去ると、パトリックは静かに言った。「いつもはこんなに小食じゃないんだろう?」
「それは、太っているという遠回しな言い方なのかしら?」
「そうじゃない。君のスタイルはとてもいい。それに……」イゾベルが口をはさもうとするのを、片手でさえぎる。「心にもないことを言ってまたしかられる前に言っておく。そんなつもりはない」
 頬のほてりがいっこうに冷めないので、イゾベルはグラスに逃げ場を求めた。彼を好きになるのはたやすい。関心を持たれていると錯覚するのは簡単だ。でも、こんな男性にはかかわらないほうがいい。人を悲しませることしかできないタイプだから。
「ところで、ストラットフォードの店の件だが、やってみる気はある?」
「もちろん、魅力を感じるわ」店がもう一軒あれば商品を置くスペースに余裕ができる。一方の店で縫いぐるみなどの繊維製品を売り、もう片方で金属製品や陶器を販売してもいい。シェークスピアの生まれ故郷という人気の高い観光地で商売をするほうが成功の見込みが高いのは確かだ。
「売り場と倉庫の面積はどれだけほしい? ストラットフォードの店を今の店より大きくするのは認めるよ。小さな店舗に移っても無意味だからね」
 イゾベルは細い眉を寄せた。「移る?」
「そう。もっと大きな店に移るんだ」
「ホーシャムの店をたためってこと?」イゾベルはパトリックを見据えた。「店をもう一軒開く話じゃなかったの?」
「僕がそう言った?」
「事業を拡張したくないかって言ったでしょう。ほかにどう考えようがあるの?」
「それは誤解だよ。もっと大きな町でもっと大きな店舗を持てば、それで十分じゃないか」
「田舎の店主にとって?」
「誰にとってもね。ぼくがわざと誤解させたと思っているなら残念だ。そんな意図は毛頭なかった」
「じゃ、どんな意図だったの?」声を数オクターブはね上げていたことに気づき、イゾベルは声を低めた。「私がストラットフォードに移れば、あなたにとってどんな利益があるの?」
「すべては君のためだ」
「本当?」
「本当だ。男を極端に悪く見ているんだね。チャーリー・アンクラムに何をされたんだ?」
 チャーリー・アンクラムに胸が悪くなるような話を持ちかけられたことを、話すつもりはない。「もう帰るわ」イゾベルは背後の椅子に滑り落ちていたスカーフを拾って肩にかけた。「タクシーを拾うから、あなたは残ってワインを全部飲めば?」
「いや、僕も行く。支払いをするから、二、三分だけ待ってくれないか」
 外はまだ明るかった。空気はさわやかでベルベットのように柔らかい。中庭のテーブルから漂う食べ物のにおいすら不快ではなかった。だが、薪の煙はもっといいにおいがする。保護区域ではばたくきじの鳴き声は、ナイフやフォークの音よりもっと耳に快い。イゾベルはその音色に終止符を打たなければならないのを、残念に思った。
 イゾベルが手助けを待たずに車に乗ったあと、パトリックは上着を脱いで後部座席にほうり、彼女の横に座った。イゾベルは薄地のシャツに包まれた彼の浅黒い肌を強く意識した。
 パトリックが襟のボタンをはずしてネクタイをゆるめたとき、ほのかなムスクの香りがイゾベルに届いた。清潔な男の香りは彼女の心をかき乱した。
 車内に突然広がった緊張感を破るために、イゾベルは何か言いたかった。顔には出さないけれど、パトリックは怒っている。彼女は確信した。でも、この人が状況判断を誤ったのは、私の責任じゃないわ。私はただ彼の真意を知りたかっただけだもの。
 この人は私に関心を持っているのではないかという疑念が、また彼女の意識に入り込んできた。シャノン・ホールディングスが店舗のひとつを空けたがっていることに、今夜のことが関係しているなら、要求に応じる人はほかにいたはず。もっと年上の、気の弱い店子もいるのだから。
 いずれにしても問題が起こることになれば、リチャードが警告したはずだわ。会社の代弁者だもの。パトリック・ライカーは意識して私を選んだ。それをどう解釈すればいいの?
 車の速度が落ちる。イゾベルは家に着いたことに初めて気づいた。門が二、三メートル先に見えている。夜は終わったのだ。
 イゾベルは礼を言おうとして向き直り、パトリックの奇妙な表情を見て驚いた。その顔にはいらだちと不満が半々に浮かんでいる。
 その表情は、彼が自分に魅力を感じているという幻想を吹き飛ばした。イゾベルは深く息を吸った。せめて食事の礼ぐらいは言わねばならない。「ごちそうさま。送ってくださってありがとう」
「こちらこそ」
「あの、コーヒーでもいかが?」自分がそう勧めている声を聞いて、イゾベルは仰天した。なんて無謀なことを! この人の魅力のとりこにならないよう、厳しく自分を戒めたばかりなのに。彼を家に入れたくない。この人の面影を店以外では見たくない。
「いや、けっこう」パトリックは即座に断った。イゾベルは侮辱を感じるべきか、ほっとすべきかわからなかった。「明日は早起きしなきゃならないからホテルに帰る」パトリックは言葉を切り、次に身を乗り出して彼女の唇の端に軽くキスした。「今度このあたりに来たら、電話をしてもいいかい?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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