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ミス・ルーシーの情熱 淑女の秘密 III

ミス・ルーシーの情熱 淑女の秘密 III


発行: ハーレクイン
シリーズ: エロティカ淑女の秘密
価格:200pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ポーシャ・ダ・コスタ(Portia Da Costa)
 英国人作家。図書館司書をしていたとき、友人に頼まれて人間とゾンビのロマンスを書いたのをきっかけに創作を志す。1991年にデビューを果たしてからは、多数の作品を雑誌やアンソロジーに寄稿。さまざまなジャンルの小説を書き分けるが、特にエロティック・ロマンスには定評があり、2007年には表彰も受けた。イギリスのヨークシャーに夫とともに暮らす。

解説

裁縫サークルに集った淑女たちは、紅茶とケーキを前に刺激的なお喋りに興じていた。「ルーシー、あなた、会を休んでいるあいだにアバンチュールを経験したのではない?」ルーシーはどきりとした。あの日、世にも美しい紳士と過ごした甘美な時間。あれは現実だったのかしら?興味津々の視線を浴びながら、彼女はみずからの体験を語りはじめた――その日、雨でぬかるんだ道を自転車で走っていたルーシーは、バランスを崩し、転んでしまった。天使のような微笑みを浮かべた美青年イーサンが現れたのは、そのときだった。逞しい腕に抱き上げられ、どこかへ運ばれていく途中で、彼女はいつしか眠りこんでいた。ところが目を覚まして仰天した。一糸まとわぬ姿でベッドにいる! カーテンで仕切られた部屋の向こうから聞こえてくるのは、水が撥ね、濡れた布が肌を打つ音。ベッドを抜け出し、カーテンの隙間から奥を覗き見る。そこにいたイーサンは……。

抄録

 ここはどこ? 目を覚ますと彼女は思った。それとも、これも夢? わたくしはまだ夢のなかにいるの?
 まぶたを閉じ、状況を頭のなかで整理する。ここは温かい。体は乾いている。彼女が横たわっているのは、適度に固く寝心地のいい羽毛のマットレスだ。全身は清潔なシーツと、何枚ものブランケットに覆われている。
 なんてことなの、わたくしは何も身につけていないわ!
 ああ、もしもこれが夢なら――夢というものが、こんなにもすばらしいものなら、わたくしはもっと早くに自転車から転げ落ちるべきだったわ。美青年のたくましい腕に抱き上げられて、一糸まとわぬ姿で温かく快適なベッドで目を覚ます。そんな経験ができるのなら、多少の打ち身やすり傷なんてものの数ではなくってよ。
「さあ、これをのんでください。気分がよくなりますよ」すでに何度も耳にした、あの声が響いた。あわててまぶたを開けると、ベッドのかたわらに立つ、救いの天使の堂々たる体躯がぼんやりと見えた。
 力強い腕がむき出しの肩を包み込み、彼女を抱き起こした。陶器のカップが唇に触れる。カップのなかの液体は温かかった。だが、紅茶でも、ミルクでも、ホット・チョコレートでもなかった。
 ハーブティーだわ。
 お茶というより、液体のかたちをした香りと言うべきだった。心地よい匂いがルーシーを包み込む。
 どんなハーブかはわからなかったが、味は花を思わせた。ほのかに甘いが、決してしつこい甘さではない。ひとくちのんだだけで元気が出てきた。眠気が残っているうえ、生まれたままの姿で、どこともわからない部屋にいるのは奇妙な感じがする。しかし、これはこれで正しい――自分はいるべき場所にいる、という気もした。いままで感じたことのない不思議な安らぎが全身を包む。わたくしを救ってくれたヒーローの顔が見たい――そう思いながらも、彼女はまたしても眠気に襲われた。
 やがて時間の感覚が薄れ、ふたたび眠りに落ちる。そのあとも、目を覚ましては意識を失う、というサイクルを何度も繰り返した。だが、心やさしい大柄な男性がすぐ近くにいると考えると、それだけで気持ちは穏やかになった。眼鏡がないうえ、明かりは揺らめくランプの光だけだったため、男性のがっしりとしたシルエットしか見えなかった。髪は茶色で、肩幅は広い。外で見たときと同じ白いシャツ、黒っぽいヴェスト、ズボンを身につけている。夢うつつのこの状態では、会話は必要ないような気がした。それでも、ベッドのかたわらの男性は、穏やかな、心地よい声で話しかけてきた。体調を気づかう質問のひとつひとつに、ルーシーは答えを返した。彼はルーシーのためにハーブティーのお代わりと、薄いけれど美味しいスープを用意すると、ほどけかかった三つ編みを解き、髪を後ろに撫でつけ、水で冷やした布で額を拭いた。そのあとは、大きなコートでルーシーの裸身を包み、なかば抱き上げるように、なかば付き添うようにして、彼女を裏庭の離れ家に連れて行った。そこはコテージのようだった。彼はルーシーを温かなベッドに寝かせると、手と顔を洗えるように、水とタオルを用意した。
 本来なら、わたくしは死ぬほど恥ずかしい思いをしているはずよ。この人は赤の他人で、しかも男の人。そしてわたくしは、裸で彼の家に――彼のベッドにいる。
 さまざまな思いが、現れては消え、押し寄せては引いていく。しかし、ルーシーはただ微笑んでいた。道徳や倫理などどうでもよかった。ここは安全で温かい。面倒を見てくれる人もいる。彼女は幸福だった。
 完全に目が覚め、頭がしっかり働きはじめたときには、すでに朝が来ていた。
 いつまでもここにいたら、迷惑がかかる。わたくしはもう元気になったわ。彼のもとを離れないと。ここを出なくては。
 でも、出ていきたくない。
 おそるおそるまぶたを開ける。まず目に入ったのは、ベッド脇のチェストの上で、かすかな光を放つランプだった。ランプの横には彼女の眼鏡が置いてある。意外なことに、まったく壊れていない。ルーシーは繭のようなシーツのなかから、音をたてないように腕を伸ばし、眼鏡をつかんだ。
 眼鏡をかけたとたん、すべてのものがくっきりと見えた。彼女がいるのはかなり広い部屋で、中央の二組の巨大なカーテンで二つに仕切られている。カーテンの向こうから音が聞こえてくる。水がはね、濡れた布が肌を打つ音。
 わたくしを救ってくれたあの騎士は、体を洗っているんだわ。
 ああ、なんということなの。ああ、信じられない。
 考える時間も、ためらっている暇もなかった。ルーシーはひそやかにブランケットの下から抜け出し、ベッドの端で体を起こした。頭は少しぼんやりしていた。軽いめまいも襲ってきたが、すぐにおさまった。素足を床に下ろし、足音をたてないようにつま先立ちで進む。眼鏡以外は何も身につけていなかった。
 カーテンのわずかな隙間が彼女を誘惑する。隙間の奥に視線を向けた。つぎの瞬間、ルーシーは握り拳で唇を押さえ、あえぎ声を封じた。
 このコテージで、生まれたままの姿をさらしているのは、ルーシーだけではなかったのだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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