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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

月光のアフロディテ

月光のアフロディテ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サラ・クレイヴン(Sara Craven)
 イングランド南西部サウス・デボン生まれ。海辺の家で本に囲まれて育った。グラマースクール卒業後は、地元のジャーナリストとして、フラワーショーから殺人事件まで、あらゆる分野の記事を手がける。ロマンス小説を書き始めたのは一九七五年から。執筆のほかには、映画、音楽、料理、おいしいレストランの食べ歩きなどに情熱を傾けている。サマセット在住。

解説

会ったこともないギリシャ人の祖父から手紙が届いた。病床に伏し、死ぬ前に一目ヘレンに会いたいと言うのだ。ヘレンは同情をおぼえるも、父と駆け落ちした母を勘当し、亡くなるまで許さなかった祖父を恨む気持ちもある。迷う彼女の前に、ある日、祖父の使者だという謎の富豪が現れる。その男、デイモンは美しいが、微塵の甘さも感じさせない野獣のような鋭い目で、力ずくでも君を連れていく、と告げた。容赦なく追いつめられて、怯えるヘレンは思いもしなかった。このあとの船旅で、デイモンの激情の炎に焼かれようとは。

抄録

 部屋の中に緊張感が漂い、ヘレンは身を硬くした。ふたりともなにもしゃべらず、動こうともしない。ヘレンには父がふたりだけにするために、わざと買う必要のない葉巻を買いに行ったことがわかっていた。
 いつまでも知らん顔をするわけにもいかず、ヘレンはこっそりとデイモンのほうをうかがってみた。デイモンはゆったりと椅子にもたれてヘレンを見ている。
「そう怖い顔をしないでください。ぼくがちょっと触っただけで粉々になってしまいそうじゃありませんか」デイモンはヘレンがごくりと音をたてて唾をのみ込むのを見て苦笑した。
「心配しなくてもいい。あなたのからだの感触を試そうなどというつもりはありませんから」
「そう願いたいものですわ」ヘレンはやっとのことでこう言った。
 デイモンの顔がきびしくなった。
「でも、ぼくと一緒にギリシャへ行かなければ、そんなこともおじいさんの耳に入らないと思いますがね。ぼくはきみを押し倒すことだってできるんだ」
 デイモンが近づいて来たので、ヘレンは怖くなってからだを丸くした。
「わたしに触らないで! そばに来ないで!」声がかすれていた。恐る恐る見上げると、デイモンはまるで巨人のようだった。
 デイモンはやさしい声で言った。「きみは頑固な娘ですね、エレーニ。ぼくは無理なことは言っていないはずです。そうでしょう? たったひと月ですよ。いや、ほんの二、三週間、きみにひと目会いたいと言っている病気の老人のところへ行ってくれと頼んでいるだけじゃありませんか」
「あのひとは独裁者よ」ヘレンは負けずに言い返した。
「過去のことをこれっぽっちも後悔していない、鬼のようなひとなのよ。手紙を読んだだけでわかるわ」
「たとえそうだとしても、あのひとがいなければきみはこの世に生まれていないんですよ。そりゃ、ミハエルがきみにそんなことを頼むのは筋違いかもしれない。でも、きみだって哀れみというものがあるでしょう? その氷のような顔の下に熱い血は流れていないというのですか?」
「あなたにそんなことを言われる筋合いはないわ」ヘレンはそんなことはあり得ないと思いながらも、デイモンがあきらめて帰ってくれることを願っていた。
「それに、わたしの名前はヘレンよ、エレーニじゃありません」
「おじいさんはいつもきみのことをこう呼ぶんですよ」デイモンにやさしく言われて、ヘレンの目の奥がうずいた。
「やめて!」浅黒いデイモンの顔がかすみ、ヘレンは両手で顔を覆った。しばらくして涙がおさまり、目を上げると、デイモンは片手をマントルピースに置いてじっと床を見つめていた。ヘレンの手の届くところには男物の清潔なハンカチが置いてあり、ヘレンは少しためらっていたが、「ありがとう」とつぶやいて、そのハンカチで涙をぬぐった。
「ぼくはもう帰らなければならない」デイモンは内ポケットから手帳を取り出し、金のシャープペンシルを走らせると、そのページを破ってマントルピースの上に置いた。
「ぼくの泊まっているホテルのルームナンバーです、エレーニ。週末にはギリシャへ帰るつもりです。行く気になったら電話をください」デイモンは考え直すように付け加えた。「伝言をしてくれてもいい、そのほうがよければ……。こんなふうな出会いになってしまってとても残念です」
「わたしもよ」ヘレンは弱々しい声を出した。
「でも、おじい様はあなたに感謝するでしょうね。どういうふうにこの勝利を報告するの? 第一ラウンドでノックアウトとでも言うの? きっとボーナスを弾んでくれるわよ」
 デイモンはヘレンの言葉をおもしろそうに聞いていたが、淡々と言った。「そんなふうには言いませんよ。だってまだ戦闘は開始されていないのだから。ボーナスのことは……」デイモンはにやりと笑った。「……これから考えよう」
 デイモンは大股で近寄って来ると、手首をつかんでヘレンを立たせた。ヘレンのからだに腕をまわすと引き寄せた。
「なにをするの!」ヘレンは小さな叫び声をあげたが、すぐにデイモンのくちびるでしっかりと口をふさがれてしまった。
 不意のくちづけが終わり、ヘレンがまだ涙のあとの残っている目を見開いて、茫然とくちびるに手を当てたまま立っていると、デイモン・レアンドロスは冷ややかな目をしてドアに向かって歩き出した。
 デイモンがドアのノブに手をかけたところで、ヘレンはようやく我に返った。
「ひどいひと!」ヘレンのからだはぶるぶると震えていた。「きっと後悔させてみせるわ!」
 デイモンは肩ごしに振り返った。「今ごろ言っても遅いですよ、エレーニ。ぼくはもう後悔しています」デイモンは言い残すとヘレンの前から姿を消した。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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