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がんばる王子様

がんばる王子様

著: 高月まつり
発行: フロンティアワークス
レーベル: ダリア文庫e シリーズ: オマケの王子様
価格:630円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
みんなの評価 ★★★★★1
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著者プロフィール

 高月 まつり(こうづき まつり)
 6月21日生まれ・双子座・O型。東京在住。仕事中によくやるのは、飼い猫たちの腹に顔を埋めること。ふわふわの腹毛に癒されます。

解説

 ヨーロッパ小国の大公殿下・理央と教育係のルシエルは秘密の恋人同士☆ 日本で育ったため、「オマケの王子」と言われる事も多く、まだまだ勉強中。そんな理央を支えるルシエルは、相変わらず厳しいが、二人きりの時は熱烈な愛を言葉と身体で伝えてくれる。そんな中、大公としてチャリティーパーティーを開くことになった理央。無事に成功したかに見えたその夜、理央にさらなる試練が……!!

※ イラストは含まれていません。

抄録

「殿下。私の話をお聞きなさい。大公殿下…………、リオ、俺の話を聞け」
 ルシエルの、公でない「素」の口調。
 理央は、ルシエルのこの口調に弱い。
 弱いというか……ルシエルを好きだと自覚したのが、彼が初めてこの口調を使用したときだったので、理央は立派な成人男子であるにもかかわらず、条件反射で「恋する乙女」状態になってしまう。
「なんでそう勝手に話を作るんだ。俺がいつ、リオと別れたいと言った? 俺は毎日平常心を総動員して、お前の傍にいるんだぞ? なぜか分かるか?」
 ルシエルは理央の頬を両手でそっと包んで上を向かせた。
 理央は、彼の美しいすみれ色の瞳の中に映る自分と見つめ合う。
「リオがあまりに愛しくて、気を抜くと自分を制御できなくなるからだ」
 剛速球ストレートど真ん中。
 理央の顔が、みるみるうちに赤くなる。
「傍にいれば触れたいと思うし、触れてしまったら今度はキスをしたくなる。だがきっと、キスをしたらしたで、もっと多くを望むだろう。そうなったら……仕事にならない」
 ごもっとも。ごもっとも……です。ルシエルさん。
 理央は首まで赤くして、真剣な表情で愛を語るルシエルを見つめた。
 ここまで想われ、言葉で聞かせてもらっておいて、「飽きられた。好かれてない」と思う人間はいない。
 理央は心底安堵すると共に、自分の放った見当違いの言葉をどう取り繕えばいいのかと動揺した。
 それを見透かしたルシエルは、わざと理央を煽る。
「ベッドの中であれだけ可愛がってやってるのに、それでも俺の愛が信じられないのか。だったら、俺の愛がしっかりと感じられるように内容を充実させようか?」
「いや……その……充分……満足してます。というか、もう少し手を抜いてくださっても大丈夫ではないかと……」
「ふっ。手を抜くだと? 俺が中途半端なことをするか」
「こっちの体力と体格も考えてくれよっ! 軍人上がりのルシエルとはわけが違うっ!」
 理央も幼い頃から武道をたしなみ、合気道は段位を持っている。
 体格も、日本人成人男性の平均よりも立派だ。
 しかし欧米人と比べると、東洋人は骨格が華奢で背が低い。理央は半分とはいえ、華奢で小柄な日本人の血を引いており、軍隊の厳しい訓練も受けていなかった。
「それは充分考慮している。……というか、今頃そんなことを言うなんて、リオは随分我慢強いんだな。はは」
 それ、笑うところじゃないからっ! 俺は二十年間日本で暮らしてきたんですっ! そして日本は、セックスについてパートナーへ積極的に意見しませんっ! いや、もしかしたら積極的な人もいるかもしれないけど、俺は違うっ! 日本人的奥ゆかしさを持ってますっ!
 奥ゆかしいから、当然こんなことを声に出さない。
 理央はムッとした顔でルシエルを見上げたまま、心の中でだけ叫んだ。
「そんな可愛い顔をするな。今すぐベッドへ連れて行きたくなる」
「え? 下半身に響くようなことをすると遠乗りに行けなくなるからだめだ」
「よし。響かなければいいんだな?」
 ルシエルは無邪気な笑顔を見せると、理央の唇に触れるだけのキスをする。
 たったそれだけで、理央は体から力が抜けてしまった。
「アルファードさんが……お茶の用意をして待ってる……」
「少しぐらい待たせておいても大丈夫だ」
 ルシエルのキスが額や頬に落ちてくる。
 理央は体が崩れ落ちないように彼の体にしがみつき、優しいキスと甘い囁きを残さず受け取った。
「結局……俺はまたルシエルに振り回されてる」
「ん?」
「ルシエルの方が強引で我が儘だ。……そういや、初めて会ったときからそうだった」
 理央は、ベッドまでの短い距離をルシエルに抱きかかえられながら、小さな声で呟く。
「それを許す大公殿下は、寛大な心を持ち合わせているということだ」
 ルシエルは理央をベッドに座らせ、天蓋の支柱に手を伸ばしてカーテンのタッセルを引いた。
 カーテンは滑るように揺らいで広がり、ベッドをプライベートな空間へと変化させる。
「公私混同……じゃないよな? 城に戻ってきた段階で、俺はプライベートな時間を過ごしてるんだよな?」
「ご自分で言ったではありませんか。ベッドの中はプライベートだと」
「ルシエルさん。口調がプライベートじゃないデス」
「趣向を凝らして、私の愛を再確認していただこうと思って」
 ルシエルのすみれ色の瞳が、意地悪そうに光った。
 も、猛禽類っ! 猛禽類がここにいますっ!
 射すくめられた理央は、心の中で悲鳴を上げる。
「さて。どんな風に愛して差し上げようか」
 ルシエルはジャケットを脱いでネクタイを弛めると、理央をその場でゆっくりと押し倒した。
「……背中に黒い羽根が見えるぞ。ルシエルって、天使みたいな名前を持ってるくせに最悪じゃないか」
 自分でも往生際が悪いと思う。だが理央は、照れくささを隠すために、いつもこうして一言二言悪態をついた。
「天使ではないが、フランス語で『Le ciel』は、空を意味する。大公殿下には、是非とも覚えておいていただきたい」
「へぇ、だから『お空の王子様』か。なるほど。はあー」
 ルシエルはオーデン空軍では戦闘機のパイロットだ。
 理央は素直に感心するが、ルシエルは逆に渋い表情を浮かべる。
「単語一つで感心してどうされる」
「フランス語は別に覚える必要ないし。感心してもおかしくないだろ?」
 理央は右手を伸ばし、ルシエルの頬を優しく撫でながら小さく笑った。
「そういうわけにはいかない。あなたもご存じのはずだ。外交を担う王族は、数カ国語を操る」
 ルシエルは、理央の着ているパーカのファスナーをゆっくりと下ろしながら呟く。
「そのうちな。今は、そういう話はなし」
 理央はルシエルの背に両手を回し、きゅっと彼の体を抱き締めた。
 言葉で「やろう」と言えない理央は、いつもこうしてぎこちない態度でルシエルを誘う。
「私にどうしてほしいか、リクエストをしていただきたい」
「……え?」
「強引で我が儘な部分を改める。これからは大公殿下の望み通りにいたしましょう。さあ、私にどうしてほしいか言いなさい」
 どう考えても、脅迫されているようにしか聞こえないルシエルの申し出に、理央の体がカッと熱くなった。
 行為をねだることさえ口にできないのに、どんな風にしてほしいなど言えるはずがない。
「大公殿下」
「ルシエルの……したいように……」
「それではいつもと同じになってしまう。私は、大公殿下がしてほしいと願うことを、すべて行う。それが私の、あなたへの愛の証だ」
 熱烈な愛の言葉は感動的だが、理央の体は恥ずかしさのあまり汗をかいた。
 ルシエルの愛撫を思い出すと心拍数は跳ね上がり、その動きを口にしてねだろうものなら、きっと呼吸を忘れる。軽く死ねる。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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