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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

内気なマーメイド

内気なマーメイド


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マリオン・レノックス(Marion Lennox)
 オーストラリアの農場で育ち、ロマンスを夢見る少女だった。医師との結婚後、病院を舞台にしたロマンス小説を書くことからスタート。現在はハーレクインの常連作家として、作品の舞台も多様になり、テンポのよい作風で多くの読者を得ている。トリシャ・デイヴィッド名義でも作品を発表していた。

解説

嵐が運んできたのは、結ばれぬ運命の哀しき恋――

貧しい家に生まれたクレアは幼少期にいじめられ、今は身寄りもない。苦学のすえ弁護士になるも、同僚の陰謀で失業してから孤島暮らしだ。ある日、嵐の海で溺れかけていた男性ラウールを助け、彼女はしだいに友情以上の気持ちを抱くようになっていった。そんな中、ラウールが衝撃の告白をする。「僕はさる国の皇太子なんだ」驚き、動転するクレアに、彼は一緒に王国へ来ないかと提案した。彼女は悲惨な身の上から、人前に出るのが怖く、内気だった。妃なんて務まるはずがない。つかのまの慰み者になるのがおちだわ。しかし、平民と皇太子の間に未来なんてないと知りつつも、彼を愛してしまったクレアはつかのまの夢に溺れていくのだった……。

■壮絶な人生を送ってきた天涯孤独のヒロインが恋に落ちた男性は、王位を受け継ぐために国王夫妻から帰国を求められているプリンスでした。一筋縄ではいかない身分違いの恋の結末やいかに? 人気作家マリオン・レノックスが贈るシンデレラ・ストーリーの決定版!

抄録

 ラウールが目覚めると、あたりは明るかった。まだ夕方なのか、それとも、日付が変わったのだろうか? さしあたり、わからなくても不都合はないが。
 まだ長椅子の上だった。体のあちこちに痛みが潜んでいる。動けばつらいことになりそうだ。
 だが、今のところ動くつもりはなかった。こうして女性のぬくもりを感じながら横たわっているのは、なんとも気持ちが安らぐ。クレアのタオルは滑り落ち、胸に彼女の素肌が触れている。彼女はラウールの胸を枕にしていた。
 危険と恐怖と疲労にさらされた二日間の末に得た、この大きな安心感には抗しがたいものがある。
 これまでぼくは何度も危険な目に遭っている。ほかの隊員と体を密着させて眠るしかなかったことも何度かあり、そのうちの何人かは女性だった。危険の中にあるときは、互いに抱きしめ合ってきた。
 だが、こういう感覚は初めてだ。この女性こそぼくの正しい相手だという感覚を抱いたのは。彼女を自分の一部のように感じてしまう。
 ばかげた考えだ、とラウールは自らを戒めた。何か薬をのんだわけでもないのに。ぼくはどうしてしまったんだ?
 クレアが目覚め、目を開けて体をわずかにずらした。だが、離れることはなく、まだ彼に抱き寄せられたままだった。
「すてき」彼女は眠る前と同じことを言った。まるで祝福の言葉を口にするように。
「何が?」
「風がやんでいる……」
 風もやんだのか。言われるまでラウールは気づかなかった。
「痛みはどう?」
「ないわ」クレアは少し考えてから答えた。「じっと横になっていれば」
 それなら好都合だ。ふたりはじっと動かずにいた。ロッキーが長椅子の下をくんくん嗅ぎまわっている。たぶんそれでふたりとも目が覚めたのだろう。
 それともほかの、もっとありふれた理由からか?
「トイレに行きたいわ」クレアがつぶやき、ラウールは“ぼくも”と言った。暖炉に薪を足す必要もある。それに、実を言えばひどく空腹で、馬一頭でも食べられそうだった。ミルクと紅茶で足りるはずもない。だが、彼女がこのままでいてくれるなら、何もかも無視してかまわない。
 ところがそのとき、ロッキーが長椅子に前足をかけ、期待に目を輝かせてふたりを見つめた。
「えさをちょうだいっていう目よ」クレアは少し体を動かし、負傷していないほうの手で犬の耳の後ろをかいてやった。彼女がそのあと発した言葉は声色が変わっていた。「タオルがなくなっているわ!」
「そうだね」満足げに聞こえないようにするのに、ラウールはかなりの努力を要した。
 クレアはとっさに毛布を胸の上まで引き上げ、彼をにらみつけた。さほどきつい目ではない。薬がかなり効いているらしく、まだぼうっとしているように見えた。実のところ、とラウールは胸の内でつぶやいた。そのぼうっとした様子が美しい。大きな緑色の目が焦点を合わせるのに苦心している。
「気づいていたのね?」
「まさか。ずっとロッキーを見ていたからね」
「嘘つき」
 にやりと笑うクレアを見て、両手が使えていたら殴られていたかもしれない、とラウールは思った。だが、彼女の片手はまだしっかり固定されている。ぼくは安全だ。
「生きなくちゃ」クレアが唐突に言った。
「なんだって?」
「命をつなごうとがんばったのよ。どうせなら、なんとか生きていきましょう」
「つまり、薪を足して、トイレに行って、犬にえさをやり、自分たちが食べるものを探さなくてはならない、ということか?」
「そして、本土との連絡方法を考えるの」
 ラウールは護衛たちのことを考えた。フランツと話した時点では、ぼくは部隊にいると思われていた。だから護衛たちは職務を離れていたのだ。彼らはあの日の六時に、翌日の行程を確認するために電話をかけたはずだ。そして、誰かがぼくは休暇中だと伝える。彼らはただちにフランツに連絡を取る。“彼は今朝から休暇に入った。帰郷の準備をしていると思う”とフランツが伝える。
 護衛たちは慌てふためいたはずだ。
「どうしたの?」クレアは手をついて体を起こした。腕を動かす際に少し顔をしかめながら。
「何が?」
「あなたの顔よ。心配してくれている人がいるんでしょう。奥さま? パートナー? 家族?」
「妻もパートナーもいない」
「家族は? ご両親は?」
「両親はぼくが五歳のときに亡くなったが、祖父母がいる」
「母国のマレタルに?」
「ああ」ラウールは目を閉じ、自分が行方不明だと祖父母が知ったときの騒ぎを思った。これだけ時間がたつと、騒ぎどころではないだろう。
 クレアはもう起き上がっていて、毛布を顎に引き寄せ、目下の問題に神経を集中させていた。「屈辱でしょうが、オーストラリアの航空海難救助隊は優秀よ。風向きや海流をたどり、あなたのおおよその現在位置をつかめる。今にも上空にヘリコプターが飛来し、行方不明の兵士を捜しに来るわ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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