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傷だらけのエンジェル

傷だらけのエンジェル


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

愛も恋も知らないあの頃、あなたが世界のすべてだった。運命のいたずらが、大人になった二人を再び巡り逢わせて……。

各地を転々としながらその日暮らしを続けるクィン。里親からの虐待、孤独、人間不信。彼女の人生は試練の連続だったが、新天地ラスベガスへ向かうその道中でも、新たな試練がクィンを襲う。交通事故現場で少年を保護した直後、何者かの発砲を受けたのだ。しかし、瀕死で警察署に逃げ込んだ彼女は知らなかった。たくましい腕で抱きとめてくれた刑事が、かつて一人だけ心を許した少年――20年前に同じ里親のもとで絆を結んだ、ニック・サルダーノであることを。あの頃の少年少女は、一人の男と女として、今ふたたび巡り逢った。

抄録

 グリーソンはサルダーノの頭の包帯を見やった。「きみ、犯人に心当たりは?」
「ありません。でも、そろそろ身元が判明している頃でしょうから、うちのボスに訊いてみたらどうですか。ラスベガス警察殺人捜査課のサマーズ警部補に」
「ほかに何か、手がかりになりそうなことはありませんかね、ミス・オマーラ?」
「ありません」クィンは答えた。「とにかく、まともに判別できたのは炎と子どもだけだったんです」
 グリーソンは息を吐いた。「ありがとうございました。もし何か思い出すようなことがあれば、こちらのサルダーノ刑事におっしゃってください。彼からわれわれのほうへ知らせてもらえれば結構です」
 立ち去ろうとする捜査官を、ニックが手を挙げて制した。
「待ってください。彼女はもう用済みってことですか」
 グリーソンは肩をすくめた。「怪我をされたのはお気の毒ですが、それはわれわれの案件とは別ですので」
「冗談じゃない。ハイウェイで彼女を撃ったのも、ここで彼女を殺そうとしたのも、バーバの手下だってことは明らかでしょう」
「ラスベガスはそちらの管轄ですね」
 横で聞いていたクィンにも、しだいにわかってきた。FBIたるもの、有益な情報を提供できない者にいつまでもかかずらってはいられないというわけだ。驚きはしなかった。ただ無性に腹が立った。
「もういいわ、ニック。FBIに守ってもらおうとは思わない。仲間をふたり犠牲にした上に、幼い子どもを荒野に置き去りにするような人たちだもの。わたしは自分でなんとかする」
 グリーソンは顔を赤らめ、彼女にまっすぐ指を差されると怯んだ。
「出てって! そっちの人も連れて、さっさと出てって」
 ふたりの捜査官は、ひと言も発することなく病室をあとにした。
 ドアが閉まると、とたんにクィンは弱気になった。じわじわと不安が湧いてくる。
「自分でなんとかするなんて、無理よね」小さく呟く。
「大丈夫だ。きみはひとりじゃない。ぼくがついてる。ぼくはもう、黙ってきみの前から消えたりはしない」
「ひとつ、教えて」
「何だい?」
「奥さんはいる?」
「いないよ」
 クィンは大きく息をついた。
 ニックが真剣な面持ちで訊いた。「正しい答えだった?」
 クィンは目を上げ、大人になった彼をしばらく見つめたあと、戸惑ったように横を向いた。「ちょっと訊いてみただけ」
 ニックは彼女の顔を手のひらで包み込み、もう一度自分のほうへ向かせた。「ゆっくり行こう」
 ニックは彼女のまつげにかかる髪を人差し指でそっと払うと、そのまま頬をなぞった。
「昔、きみはぼくの大切な妹だった」
 その声に催眠術をかけられたかのように、クィンの視線は彼の顔に引き寄せられた。
「あなたはわたしの王子様だった」彼女は小さく微笑んだ。「王女様になりたいなりたいって言うわたしに、あなたは厚紙の王冠をこしらえてくれた。アルミホイルで包んでね」
「うん、そうだった」ニックはベッドに腰を下ろして彼女の手を取った。まだ信じられない思いだった。この女性――凛々しく美しい彼女は、かつて自分とひとつ屋根の下で暮らした、あの小さな女の子なのだ。「お互い、空白の期間を埋めないといけないな。きみについて知りたいことが山のようにあるよ」
 クィンの胸に不安が兆した。誰かと深く関わるのは怖い。関係がいつ終わるかと、びくびくしなければならないのが怖い。
「その前にアントン・バーバに殺されてしまうかも」
「きみは死なない。ぼくが死なせない。退院したら、きみはぼくの家へ来るんだ」
 クィンは耳を疑った。今まで誰にも頼らずに生きてきた。つらくても苦しくても、自分ひとりの力で切り抜けてきた。これからはニックがそばにいてくれる。魔の手から、ニックが守ってくれる……そう思っただけで涙があふれた。
「荷物がバイクにのってるの。あれがないと困るんだけど」囁くように言った。
「うちのガレージに移しておくよ。それでいいだろう?」
 クィンの声は震えた。「ふたりの人間が、こんなに長い時間を経て偶然再会する確率って、どれぐらいなのかしら。でも、これは偶然じゃないと信じたい」
「あるべき状態に戻ったんだよ。あの頃、ぼくは妹としてのきみが大好きだった。そして今は、大人になったきみのことをとびきりすてきだと思っている。あらためて、きみという人を知りたい」微笑むニックの瞳に、昔はなかった光が宿るのをクィンは見た。ニックは彼女の手を口元へ持っていった。
 肌に伝わる吐息の温かさ、唇の柔らかさ。これが夢なら、どうか醒めないで。クィンは心から願った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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