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二挺拳銃お姫様

二挺拳銃お姫様

著: 南野海 画: 坂本アカネ
発行: POPノベルス
価格:525円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 南野 海(みなみの うみ)
 東京都在中。ミステリー、ライトノベル、児童文学とさまざまな小説新人賞に投稿を続ける。2006年度のジャイブ小説大賞で奨励賞を受賞。小説以外にも、マンガや映画、そして海をこよなく愛するダイビングインストラクター。

解説

 時は江戸の世、大阪城に暮らす千姫様は退屈をもてあましていた。そんな姫様の退屈しのぎのため、真田の忍者(補欠)の十一が呼ばれる。だが、この十一はとんでもない性格の持ち主で千姫様はいいように振り回されるばかり。激怒する千姫様だが、その時天から何か大きなものが降ってきて、千姫様と十一は巻き込まれてしまう……。
 千姫様が目を覚ましてみると目の前に現れたのは全く見たこともない人たち。宇宙人? 地球に帰る? 時代がズレた? しかもここは西部劇時代のアメリカ? 何が起こっているのか千姫様は全く理解できない。しかも、何やら危険な忍者・白虎とやらまで出てくる始末……。
 でも、千姫様にとって一つだけ確実に理解出来たことがある。それは、“拳銃”とやらをぶっ放すのはとっても楽しいということ……。

 パピレス<ライトノベルス人気投票>の読者選考にて、多数の支持を獲得した作品です! 待望の電子書籍化!

目次

[第一章 お姫様と補欠の忍者]
[第二章 戦国号、漂流する]
[第三章 墓石という名の町へ]
[第四章 お姫様と死にそうな狼]
[第五章 白いドレスの亡霊]
[第六章 不気味な酒場でちんちろりん]
[第七章 役者と女優]
[第八章 毒蜘蛛《どくぐも》と鉄鬼]
[第九章 死にそうな狼と血に飢えた狼]
[第十章 蜘蛛の巣と地獄の調べ]
[第十一章 死神、死すべし]

抄録

「見たい、見たい、見たい〜ぃ。出雲《いずも》のお国が見たい〜っ」
 千姫《せんひめ》は前々からそう思っていた。唄《うた》や踊りを交えながら、男装したお国が茶屋の女と戯れる。お子様は見ちゃだめっぽいが、だからこそ見たい。自分はもう子供ではない。そういうちょっぴり危険な香りが楽しめるお年頃だ。面白いに決まっている。だけど一度も見たことがない。これまで我慢してきたが、最近新しい出し物が大評判という噂を聞くと我慢できなくなった。
「ご無理を言ってはいけません。千姫様は軽々しくお城を離れるわけにはいかないのです」
「なんでよ〜、あたしが人質だからぁ?」
「そ、そのようなことはありません」
「ふん、どうせ、あたしは籠《かご》の鳥よ」
「千姫様!」
 侍女のお松は顔を引きつらせて否定したが、千姫には自分の立場は十分わかっている。自分が秀頼の妻として大阪城に送り込まれたのは、徳川家から豊臣に差し出された人質という意味だ。千姫が御供を連れて京まで行き、お国の歌舞伎踊りを見ることを秀頼の母、淀君が許すはずがない。
 だが千姫は退屈しきっていた。淀君にいじめられる以外、城内ではなんの問題もなく暮らしていたが、好きなように外に出ることはかなわず、退屈でしょうがない。なにより自分の目で外の世界を見、人々から話を聞き、自分の考えと責任で行動を決定したかった。この城の中に、花嫁としているだけが自分の価値だなんてとても耐えられない。
 結婚したのは七歳のとき、秀頼は十一。もちろん、その時点で実際の夫婦生活があったわけではない。あくまでも家康の孫娘と秀吉の息子が結婚するという形式が重要だったのであり、子づくりできる年齢かどうかは意味がなかった。それどころか十五歳になった今でも秀頼との仲はママゴトのままだ。それも不満の原因なのかもしれない。
 どうして、秀頼様は抱いて下さらないのかしら?
 千姫はそう思うと顔の温度が三度くらい上がった。
 で、でもさ、こんな可愛くてぴちぴちしたあたしをほうっておくなんて、なんか変よね?
 それは必ずしもうぬぼれではなかった。事実、千姫は希代の美少女として評判だったのである。ぱっちりして愛らしいが意志の強そうな瞳、きりりとした口元、つんと少しだけ反った鼻筋、両耳の前で胸まで伸ばし、それ以外は後ろに結っている艶《つや》光りする黒髪。真っ赤な地に桜柄の振り袖《そで》姿もイケている。おてんばな性格とその愛らしさで城内の男を虜にしていた。それなのに当の秀頼だけがつれない。
 幼いころから一緒に暮らしていたから、妻として見てくれないのかもしれない。ひょっとして妹のように思われているのではないか? それとも自分と折り合いの悪い淀君に遠慮しているのか? そう思うと情けなくなる。
 あたしがこれほどお慕いしているのにっ!
 じつは千姫は秀頼との夫婦生活を待ち望んでいた。
 ああ、接吻《せっぷん》ってどんな味なのかな?
 思っただけで頭が爆発しそうになる。
「千姫様、お顔が真っ赤です。熱でもあるのでは?」
 お松が心配そうに言った。
 そうだ、今はそんなことを考えている場合ではない。お国の歌舞伎踊りが見たい。自分の目で外の世界を知りたいのだ。秀頼様が相手にしてくれない以上、他のことで憂さを晴らさなくてはいけない。そのことを訴えていた最中だった。
「大丈夫。熱なんかないの。だから京まで行くの」
「ですから、無理ですって」
「いいよ、淀君様に直接話すから」
「そんなことをしたら、松が叱《しか》られます」
 お松が泣きそうな顔で訴える。千姫としても子供のころから姉のように自分の面倒を見てきたお松を困らせるのは忍びない。
「ほら、姫様の大好きな餡《あん》ころ餅《もち》でも食べてご機嫌直してください」
 お松は絶妙の頃合いで用意していた餡ころ餅を勧めた。
 なんかなあ、こんなんで誤魔化されると思ってんのかしら? あたしはもう十五よ。
 そう思いつつも、あんぐりと大口開けて餡ころ餅を頬張《ほおば》ると、口の中に広がる甘さがつい優しい気分にさせる。
 まったくもう。餡ころ餅にだまされたわけじゃないからね。お松の立場を考えてやってるんだから。あたしは大人なのよ。わかってんのかしら?
 けっきょく千姫は折れた。
「しょうがないなあ。じゃあさ、なんかあたしを喜ばすネタはないの?」
「ネタですか?」
「だからさ、たとえば外に出れないかわりに、城内でなにか面白いものを見れるとか」
「う〜ん」
 お松は唸《うな》りながら考えると、突然ぽんと手を叩いた。
「忍者。忍者に忍術を見せてもらうっていうのはどうですか?」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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