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和書>小説・ノンフィクションライトノベルSF

野生のライオン ―捨てられた人工知能―

野生のライオン ―捨てられた人工知能―

著: 黒川文 画: maca
発行: POPノベルス
価格:525円(税込)
10ポイント還元
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対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 黒川 文(くろかわ ぶん)
 1967〜
 兵庫県神戸市生まれ。工学系大学院出身、メーカー勤務、専門は機械設計。小説は、主に長編エンターテインメントと短編純文学を書いている。日常生活に潜む何気ない不気味さをリアル感を持って書き上げることをモットーにしている。

解説

 ネットサーフィンが好きな高校1年生の芽衣はある日、奇妙な動きをするウイルスを発見する。その時は特に気にも留めていなかった。たいしたことはないだろうと……。
 だが、この日から芽衣の人生は少しづつ暗転し始める。周囲からの孤立、周囲とのいざこざ、親友の裏切り……。そして、これら一連の暗転劇にはとんでもない力が働いていたのだ……! 果たしてその力の正体とは? そして、更に芽衣に襲いかかる試練とは……?

 パピレス<ライトノベルス人気投票>の読者選考にて、多数の支持を獲得した作品です! 待望の電子書籍化!

目次

一、ライオンの脱走
二、ライオンの正体
三、ファイルシェア
四、孤立!
五、九死に一生
六、とまどい
七、情報攪乱
八、ライオン破壊作戦
九、ライオン孤立
十、ライオン化する友人
十一、ライオンの逆襲
十二、エピローグ

抄録

「おぉ」
 パソコンの画面が何度か明滅を繰り返した。
 ただ、それだけの出来事だったが、ネットの動きを監視していた芽衣《めい》は直感的にファイア・ウォールにロックを掛けた。掛かったのは小さな本体に大きなデータがくっついたウィルスだ。データをパソコンに持ち込もうとしたのか、これから持ち出そうとしたのかは、調べてみないとわからない。だが、自分の仕掛けた罠《わな》にまんまと掛かった獲物をみて、十五才の少女はにんまりと微笑んだ。

 黒澤芽衣にとりパソコンは宝物だった。今のところ生きがいと言ってもいい。
 一ヶ月前に都立紅葉が丘高校に入ったにもかかわらず、誰もお祝いしてくれない中で、唯一、兄から、いらなくなったパソコンをもらったときには素直に喜んだ。
 芽衣は、重たい段ボール箱を自分で担いで部屋に持って行き、兄貴に手伝ってもらって据え付け、ネットワークへの接続だけお願いした。インターネットは、兄貴が東大に合格したときに親父が喜んで、彼の要望通り光回線を通している。芽衣の回線はそこから屋内ルーターで分岐して使わせてもらうだけだった。
 このあと、何にもわからず、一から手取り足取り教えて欲しかったが、パソコンをただでもらっている引け目もあり、自分でマニュアルを見ながら操作を覚えた。しばらくは、マニュアルに従っていたが、そのうち、不法侵入により欲しいソフトが手に入ることを知り、暗証番号の解読からはじめて、あまり日数の経たないうちにこんなことばかり詳しくなってしまった。技術力もない「なんちゃって」ハッカーなのだ。
 当初、兄貴は芽衣を適当に手足にするつもりのように思えたが、もくろみは外れたようで、つまらないネット遊びに興じている芽衣を見放して何も言わなくなった。

「お兄ちゃん!」
 芽衣がパジャマ姿のまま、健一が調べ物に向かっている横にやって行くと、ちっと、舌打ちしながら振り向いた。
「今忙しい、それに、女の子なんだから兄貴の前でもちゃんとしろよ、乳首が見えてるぞ」
「え、嘘、やだ、見ないでよ」
「馬鹿、見えてねえよ。まあ、見えても何にもなさそうだが」
 確かに胸はなかった。
「もう、変なこと言わないでよ。あのさ、話は変わるんだけど、新種のウィルス君に興味はないかな、安くしておくよ」
「新種のウィルスだあ? ウィルスソフトに掛かったんじゃないのか?」
「違うよ、今のとこ、どんなソフトも素通りだよ。でもね、罠を掛けたのだ」
 健一の目つきが少しだけ鋭くなった。芽衣は続けた。
「あのね、他人のパソコンにネットを介して侵入して、CPUの空き時間に計算をさせてデータだけ引き上げるの。データの送り先はね、東京都文京区まで突き止めたんだけど」
 文京区本郷は、健一の勤め先の東都大理学部の所在地だった。
「待て、その問題から手を引くんだ。お前の身が危ない」
 芽衣は健一の顔を見てふふん、とせせら笑った。
「ほら、引っ掛かった。文京区なんて嘘よ。プログラムを作った人に特徴があったから、お兄ちゃんのところの学生と推理したの。でも、何なのこんな計算、大学のコンピュータを使えば一発じゃないの?」
 健一は今度は芽衣をにらんでいた。
「大人をからかうと今にいたい目に合うぞ。それだけは忠告してやる。この計算プログラムに関しては今のところ極秘だ。芽衣には感づかれたが、それは俺のパソコンと連動できたからで、他の条件では絶対に検出できないようにしてある」
「そうなの、じゃあ、口止め料」
 芽衣は手を出したが、健一は却下した。
 芽衣はふくれた。
 まあいいか、と、健一は折れた。兄から見ても結構かわいいようだった。
「え、五千円もくれるの」
 芽衣の喜びように健一は意外な顔をした、もっと吹っかけられるかと思っていたようだった。
「その代わり絶対誰にも言うなよ」
「うん、うん」
「あの理香《リカ》とか言う友達にもだぞ」
「わかったわよ、じゃあね」
 健一は、つまんないことに時間を浪費したと言わんばかりに、再び自分の机に向かい始めた。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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