マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

闇の王子と清らな愛人

闇の王子と清らな愛人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 メイシー・イエーツ(Maisey Yates)
 ロマンス小説を書く前から、熱心な読者だった。自分のヒーローとヒロイン作りが楽しめる今の幸運が信じられないという。オレゴン州南部の自然の中で、通りの向かいに住む両親の手を借りながら、夫と幼い3人の子供と共に暮らす。朝起きて家の裏口に熊を見つけるような生活と、自宅で書くエキゾチックな街で起こる物語との落差を楽しみながら、執筆に励んでいる。

解説

心と体に傷を負い、野獣と呼ばれる王子。その孤独を癒やせるのは私だけ……。

ベルはエーゲ海の島国オリンピオスに飛び、古城を訪ねた。そこに城主アダムの怒りを買ったベルの父が投獄されているのだ。残酷な事故で一瞬にして美貌と妻を失ったアダムは、悲嘆のあまり城に引きこもり、荒んだ生活を送っているという。病気の父のため、身代わりの囚人になると申し出たベルに、彼は冷酷に告げた。愛人になるなら父親を解放してやろうと。近く公の場に出るとき、自分の醜悪さを和らげる美女が必要だと。ベルは震えながらも彼の黒い瞳に澄んだ光があるのを見て取り、魅入られたように自らこの野獣の生け贄になることを決意した。

■愛を失い古城に引きこもる王子が出会ったのは、愛を疑わない無垢な乙女──。人気急上昇のメイシー・イエーツが贈る、『美女と野獣』を彷彿とさせる、胸に迫るせつないロマンスです。

抄録

 これは罰だ。疑問の余地はない。重なったアダムの唇には曖昧さがなかった。やさしさも、ためらいもない。分かち合いや快楽とも無縁だ。彼は激しい怒りの味がした。もしかしたら憎しみの味も。
 ベルはあまりにびっくりして何もできなかった。ショックであらがうこともできず、ただアダムのたくましい腕にとらえられたまま、固い壁に押さえつけられていた。
 アダムが顔を傾けてベルの唇を無理やり開かせると、二人の舌が触れ合った。ベルがはっと息をのんだ拍子に、アダムの舌がさらに深く入り込んだ。
 ベルは待った。きっとむかつくような感覚に襲われるに違いない。そして、最悪の状況に陥ったときにはアドレナリンが放出されるはずだ。車を持ち上げるほどの力がわき上がり、強靱な王子も押しのけられるだろう。
 ところが、そうはならなかった。代わりに別のものがベルに襲いかかった。意思とは裏腹に、熱さと物憂い感覚がみぞおちから手足に向けて広がっていく。やがてベルは無意識のうちに体をしなやかに曲げて、アダム・カツァロスという山にもたれかかった。
 これは以前からある奇妙な感覚で、ベルは恐怖と呼んでいた。肌がちりちりするような熱を感じる。それが一瞬の閃光の中で一体となるのを、二人の唇が触れ合った瞬間に恐ろしいほどはっきりと感じ取った。
 アダムの唇は傷を負い、ほほえむことは不得意かもしれない。けれども、キスの能力が損なわれることはまったくなかった。
 キスがこんなふうに感じられるなんて想像もしていなかった。あまりに生々しく、荒々しく、破壊的だ。どれもすばらしさや心地よさを連想させるものではない。キスをしたことがあるのはトニーだけだ。そして、彼とのキスですてきだと思ったのは、誰かと近づけたと感じられるところだった。
 このキスはまったく違う。激しくて、しかも怒りに満ちている。それがベルの防御の壁を破り、ただの唇の接触では届かない場所にまで触れた。
 ベルの心臓は激しく打った。胸から飛び出すのではないかと思うほどだ。考えることも、息をすることもできない。膝から力が抜け、ベルは床に倒れ込まないようにアダムのシャツをぎゅっとつかんだ。
 アダムは片手を持ち上げてベルの髪に指をくぐらせると、その手を握って引き寄せながら、うなるような声をもらした。またしても角度が変化し、頭がくらくらするほどキスが深まった。彼が再び声をもらしたとき、その声の何かがベルの周囲の霧を貫いた。
 私は何をしているの? この……怪物にこんなキスを許しているなんて。彼は私の父をとらえ、次には私を囚われの身にした。故郷には私を待っている男性がいる。私を大切に思っている人が。彼が今の私を見たらショックを受けるだろう。それに、絶対に私をこんな目にはあわせない。
 なのに私はここで彼を裏切り、自分自身を裏切っている。わけのわからない欲求の波にさらわれ、流されている。
 ベルはアダムを押した。彼の胸を、肩を押した。ところが、まったく動かない。そこでアダムの唇に歯を立てた。
 アダムがうなり声をあげて後ろに下がった。険悪なまなざしをこちらに向けている。「後悔させてやるぞ」
「私が後悔しているのは、あなたとまともに向き合う場所に身を置いたことだけよ」
「それでも」アダムが損なわれた顔をゆがめて嘲笑った。「君は僕の腕の中で震えていた」
 それを聞いてベルはなおさらアダムが憎くなった。なぜなら真実だったから。さっき感じたのは……なんなのかさえわからない。自分にあるとは気づかなかった何か性的な欲求だろう。
「猛獣を前にしたら、獲物はそうなるものでしょう」ベルは言い放った。「獲物は震えるわ。食べられてしまうと知っているから」
 アダムが笑った。その暗い声がベルの胸に反響し、震えを引き起こした。「ああ、確かに。あとほんの少し時間があれば、君をまるごと味わっていた」
「あなたにはうんざりよ」そう言うことで、それが真実になればいいと、ベルは心から願った。「あなたが孤独なのも、この城に隠れていたのも当然ね。顔の傷跡はあなたが抱える問題の中でも最も小さいものよ。あなたを野獣にするのは傷跡じゃないわ」
 ベルは身をひるがえし、できる限り速く廊下を駆け抜けた。怒りと恐怖で何も目に入らなかった。最悪なのは、自分が恐れているのがアダムではないことだ。ベルは後ろを振り向かずに走りつづけた。いくつもの部屋が続く迷路の中を何度も曲がって、これまで来たこともない初めての場所に入り込んでいた。
 ようやくほっとして足を止めた。アダムは追ってきていない。胸に手を当てて息を整えながら、闇に包まれた周囲を見回し、呆然とした。城のこの一角は、打ち捨てられたかのようだった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。