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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

光と影のはざまで

光と影のはざまで


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

ニースのヴィラ・ジャスミンで催されるパーティは盛況だった。主催者はジョアンヌの母。輝くばかりの美貌の持ち主である。その母親の陰で、ジョアンヌは20年間ひっそりと生きてきた。ところが、巨額の財産を一世代で築き上げた投資家ベンとの出逢いが、ジョアンヌの運命を狂わせる。彼の心を射止めたくて、生まれて初めて化粧をし、消え入るような思いで真紅のドレスに身を包んだのだ。だが、彼は見もせず、母のもとへと向かった。胸の痛みに耐えかねて、ジョアンヌはそっと顔を伏せた。

抄録

「賢い母娘だよ。クレアの手に負えない男たちは皆、君のところへ送りこまれるってわけだな。たいしたチームワークだ。僕は見当違いをしていたよ。初めて君を見たとき、僕はほとんど君に気がつかなかったほどだったのに」ベンは苦い笑いを向けた。「君は本当に無邪気な子供のようだった。化粧っ気なしで、まっすぐな髪に、大きな青い目をして……ときには君がかわいそうになったほどだ。こんな環境で育てられるなんて、と思ってね。だが君は僕をけむに巻いていたんだ。時々おかしいとは思っていたんだが」ベンの目は炎色のドレスに包まれたジョアンヌの体の方へゆっくりと下りて行った。「今夜、僕は君がランソンと踊っているのを見た。そして仮面ははがれた。君は奴を誘惑していたじゃないか。えん然とほほ笑んで、流し目をして……君を見ていて、自分の目はなんと節穴だったかと自分で自分を殴りつけたい思いにかられたよ」
 ベンはまだジョアンヌのあごをつかんでいる。口を震わせながら彼女は身をふりほどこうとした。
「放して」よろめきながら彼女はつぶやいた。
「どうして?」ベンは手に力を込め、それからその手を喉のところまでずらした。思いがけず冷たい肌をセクシーな指でさわられてジョアンヌは身震いした。ベンの目が光った。その奥には軽蔑するような光がたたえられている。「どうして君は震えているんだ?」
「怒っているからよ。安っぽく扱われるのは嫌だからだわ」
「そうかい?」ベンは口を歪めた。「誰がそんなことを信じるものか。君とランソンは半時間ほどここにいていったい何をしていたんだ?」
「あなたには関係ないわ」
「確かにね」ベンは笑った。「だが答えは明らかだ。君と君の母親が、どんなに巧妙で小ざかしいゲームをしているかってことがよくわかるよ……。君の思いどおりにいかなかったのは悪かったが、まあ、気にすることはない。どちらにしろ僕をここへ引っぱってきただけのことはしてもらおう」
 ジョアンヌが身動きする前に、ベンの唇が下りてきて、夜気で冷たくなった彼女の唇に軽く触れた。彼女は身を固くし、身震いをした。ジョアンヌはベンのキスを渇望していた。だが同時にまた、彼を恐れてもいた。彼女は顔をそむけると、ベンの肩を強く押した。
 だがベンは微動だにせず、彼女の喉の柔らかい肌を強くつかんだ。
「やめて!」彼の指が痛かった。彼の語った言葉一つ一つのようにその痛みがジョアンヌの心を強く刺した。ベンは私を憎み、軽蔑している。彼が私にしたソフトなキスは侮りで毒されているのだ。
「どうしたんだ?」ベンはからかうように言った。「君のやり方を邪魔してしまったかな? さあ、お嬢さん、君がランソンにしたことを僕にもしてくれたまえ」
 ジョアンヌは怒って抵抗しようとしたが、ベンの唇が彼女を黙らせた。強く強引な口づけにとうとうジョアンヌも唇を開いた。ベンの唇の執拗な動きが彼女の内なる欲望を目覚めさせたのである。ジョアンヌはもはや考える能力を失った。感覚だけが研ぎすまされ、絶え間なく湧き上がってくる情熱が体を揺さぶった。ジョアンヌは無我夢中で彼にしがみついていった。
 ベンが深く息を吸い込むのがわかった。ベンの手は強く彼女を抱き締め、その唇は彼女の唇の上で燃えた。ジョアンヌは思わず叫び声を上げ、ベンの豊かな髪をつかんで、さらにその顔を引き寄せていた。サム・ランソンがキスしたときは、ジョアンヌはその腕の中で、嫌悪感に震えながらじっとしているばかりだったが、今、彼女は、ベンの官能的な愛撫を体中の神経で感じながら燃え、ろうのように溶けていくのだった。
 突然ベンはジョアンヌを突き放した。走ったあとのように息をきらしている。「君は確かにクレアの娘だよ」ベンの口調はとげとげしかった。
 情熱を取り交わしたあとのその言葉に、ジョアンヌは冷たい水を頭から浴びせられたような思いがした。ジョアンヌは震えながら、苦痛に耐えようと必死の努力を払った。ようやく声が出せるようになったとき、ジョアンヌはかすれ声でつぶやいた。「あなたは何を期待していたの? 白雪姫?」
「わからんね」ベンはそうつぶやき、歩き出した。ジョアンヌは震えながら、惨めな気持で、月の光に照らされた水面を見つめていた。よほど注意深くしなければ、私はベンを愛してしまうかもしれない。そうなれば絶望的な状態に陥ってしまうだろう。彼を愛しても、苦しみばかりがあるに違いないのだから。
 ベンはいったいどうしてここにやって来たんだろう。あんなにおおっぴらにクレアを追い回して、映画に出資するとまで公言した理由はなんなのだろう。たった一つ確かなことがある。それは――ベンが私たち母娘を憎んでいるということだ。
 ジョアンヌはずっと母を愛してきたが、だんだんと、母と一緒に暮らすことは自分にとって危険なことであると感じ始めていた。あの美しさ、名声、魔力の影の中で生きている限り、私は決して自分自身になれないのではないだろうか。
 私は行かなければならない。母の影の中から出ていかなければ。さもないと私自身が影になってしまう。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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