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エーゲ海に呼ばれて【ハーレクイン・ディザイア傑作選】

エーゲ海に呼ばれて【ハーレクイン・ディザイア傑作選】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアハーレクイン・ディザイア傑作選
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャサリン・ガーベラ(Katherine Garbera)
 フロリダで育ったのち、イリノイに引っ越した。テーマパークで知り合った夫との間に二人の子供がいる。高校時代水泳チームの練習中に物語を作り始めた。ジョージア州ロマンス作家協会マギー賞を受賞後、作家デビュー。ウォールデンブックスのベストセラーリストにも登場している。

解説

あなたの愛は求めない。だからお願い、息子を奪わないで……。

息子と暮らすアヴァの前に、ある日思いがけぬ人物が現れた。海運王クリストス・シアキス――かつてアヴァが心から愛した男性。2年前、ギリシアを訪れたアヴァは彼と出会い恋に落ちたが、彼の兄との不貞を疑われ、追い払われたのだった。もしかして、クリストスはようやく認めてくれたの? 私の息子が、お兄さんの子などではなく彼自身の子だということを。だがクリストスの話を聞き、アヴァのはかない希望は打ち砕かれた。兄が亡くなり、一族の血を継ぐ兄の息子を連れ戻しに来たのだという。クリストスは最後に、傲慢な口調で付け加えた。「息子と離れたくないなら、僕は君と結婚しても構わない」

■様々な時代の選りすぐりのディザイアの話題作をお贈りする“ハーレクイン・ディザイア傑作選”。今作は、ホットな作風で大人気のキャサリン・ガーベラが、秘密の命をテーマに描く物語。尊大なギリシア富豪がヒロインを翻弄します。

抄録

 何もかもクリストスに決めさせ、むしろ彼が結婚を強要してくればいいのに、とアヴァは思った。けれど、セオのために強くならなければ。両親とはまったく違うタイプの親になりたい。つまりそれは、自分の力で生きていくということだ。
「結婚すればセオは私生児でなくなるんだ」陰りゆく月の光の中で、クリストスの低くかすれた声が響く。
 クリストスがセオのことを話すたび、アヴァは釈然としない気分になった。「今どき、そんなことは恥でもなんでもないと思うわ」
「アメリカではそうかもしれない。でも、ぼくの父から見れば違うんだ。それに、正統な後継者たちが死んでしまったから……」
 ヴェニーとアルシアの死を思うと、アヴァは胸が張り裂けそうだった。セオが従姉たちと会うことは永久にないのだ。それでも、セオが二の次だったことに、アヴァは怒りも感じた。「あなたにとってセオが、シアキス一族の後継者というだけの存在なら、これ以上話すことはないわ」
「あの子は単なる跡継ぎじゃない」
 アヴァは胸の前で腕を組んだ。「そう?」
「ぼくに何を言わせたいんだ?」
「セオに対する本当の気持ちを知りたいのよ」
「好きだよ。あの子を見てると、スタヴロスを思い出す。兄が恋しいよ」
 アヴァはほろりとさせられ、両腕を下ろした。彼の言葉には真実味が感じられた。「いいわ、あなたがセオを連れて帰りたいわけはわかった。でも、わたしと結婚しようと思うのはなぜ? あなたはギリシア人の女性としか結婚できないんじゃなかったの?」
 クリストスは勢いよく吹き出した。「時代は変わったんだよ」
 アヴァは立ち上がり、息がかかるほど彼のそばに近づいた。言ってほしい……きみがかけがえのない女性だとようやく気づいたんだ、と。きみなしでは生きていけない。だから結婚してほしい、と。アヴァは黒曜石のような彼の瞳をのぞき込み、そこに警戒心を感じ取った。やっぱり、そんなふうに言ってもらうのは途方もない夢らしい。
「二人の間に今みたいな壁があるままじゃいやよ」アヴァはニッキのような妻には絶対になれそうになかった。スタヴロスは妻を日の当たらぬ場所に追いやり、ほかの女たちと浮かれ騒ぐところを妻に見せつけた。ニッキはそれを黙認していた。アヴァは自分に自信のなかった五年前のように、黙ってクリストスの日陰に溶け込むのはごめんだった。セオを生む前なら、甘んじて受け入れたかもしれないが、今は違う。
 クリストスが深く息をつき、アヴァの頬を温かい息がかすめた。彼はアヴァの腰に両手をまわし、彼女を引き寄せた。「じゃあ、ぜひとも近づいてくれ」
 アヴァは彼の胸に両手を当てて二人の間に距離を置いた。クリストスをコントロールできると思ったのが間違いだった。
「そういう意味じゃないわ」だけど、彼に触れられているのが自然なことに感じる。彼の胸に頭を預けて寄り添いたい。昔のように彼の腕に包まれたい。ああ、もう……どう考えても間違っているのに、今はこのまま離れたくない。
「これくらい、ぼくらの間ではずっと当たり前だっただろう」クリストスは小声でささやいた。
 確かにそうだった。アヴァは顔を上向け、彼と視線を合わせた。引き締まった厚い唇がすぐそばにあった。彼のキスを思い出し、アヴァは下唇を噛みしめて自分を抑えた。身を乗り出して、彼の唇に唇を重ねるようなばかなまねをしないように。
 誰かが咳払いをした。ぱっと体を離そうとしたアヴァを、クリストスはしっかり抱き寄せた。
「なんだ、アントニオ?」
「セオ坊ちゃまがぜいぜい息をされています」アントニオが言った。
「あの子、喘息があるのよ」アヴァはクリストスから離れて、家へ駆け戻り、書斎に置いたままのバッグを急いで取りに行った。バッグをつかんで廊下へ出ると、アントニオとクリストスがいた。「セオはどこ?」
「キッチンです」
 アントニオが指し示した方向へ走ったアヴァは、椅子に腰を下ろした息子を見つけ、ぱっと足を止めた。懸命に息をしようとするセオの小さな胸がへこんだり戻ったりを繰り返している。
「まあ、セオ」アヴァは息子の座る椅子のわきに膝を突いた。
「大丈夫だよ」セオの言葉は切れ切れで、普段の口調とはまるで違っている。
「大丈夫じゃないでしょう」
 セオはかぶりを振った。「ママ、ぼく、吸入器はいやだ」
 アヴァは反論しなかった。喘息のことで息子ともめるのはしょっちゅうだ。ひ弱さを嫌うセオは、薬が必要なときにそれを認めようとしないのだ。「わかってるわ、ベイビー」
 アヴァは吸入器とそれにつける長い補助具を取り出し、吸入器を振った。クリストスが無言で戸口に立っているのはわかったが、まったく気にしなかった。
 セオは肩越しにクリストスを振り返り、アヴァの胸にもたれた。「ババに見られたくないんだ」
「大丈夫よ」
 セオはかぶりを振った。
 出ていってくれるように頼もうと、アヴァはクリストスを振り返ったが、彼はさらに近づいてきて、テーブルにもたれた。「お母さんの言うことを聞きなさい、セオ。話は吸入が終わってからしよう」
 アヴァが吸入器を掲げ、セオがそれを口にくわえた。アヴァは息子をじっと見守り、静かに数を数えながら薬液を噴霧した。
 クリストスがセオの肩に片手を置いた。吸入が終わり、アヴァが目を上げると、クリストスの顔には彼女と同じようにセオを心配する表情が浮かんでいた。パティオでのばかげたやりとりのあと、二人の距離が狭まった一瞬だった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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