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さよならから始めて【ハーレクイン・セレクト版】

さよならから始めて【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 ダイアナ・ハミルトン(Diana Hamilton)
 イギリスの作家。ロマンチストで、一目で恋に落ち結ばれた夫との間に三人の子供をもうけた。就寝前の子供たちにベッドで読み聞かせるために物語を書きはじめる。ロマンス小説家としてのデビューは1987年、その後数多くの名作を世に送る。2009年5月、ファンや作家仲間に惜しまれつつ亡くなった。

解説

ビアンカは、決して愛を返してくれない男性を、絶望的なまでに愛してしまったことに気づき、別れを決意する。失恋して酒におぼれる母の姿を見てきた彼女は、自分も母のようになることを何よりも恐れていた。チェーザレは男らしくハンサムな大富豪だが、女性と永続的な関係を築くのはまっぴらだと公言してはばからない。だが初めて女性のほうから別れを告げられたチェーザレは、またも金の力で思いどおりにことを進めようとした。ビアンカの母親が払えない家賃を肩代わりする代わりに、愛人を続けることを強制したのだった。

■大金持ちで、もてる男はいつだって不実――HQロマンスから刊行された初版のあらすじにある名言です。手切れ金さえ払えば女は文句を言わないと信じていた傲慢富豪。ヒロインを繋ぎとめるのは、お金ではなく愛だと気づけるのでしょうか?
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 不都合なのは、あなたを深く愛してしまったことよ。それが彼の質問に対する答えだ。
 でもそう告げることはできない。絶対に!
 私たちの“申しあわせ”に、愛はふくまれていない。
 チェーザレは長い脚を一歩踏み出しただけでビアンカの前にいた。じゃこうに似た、少し刺激性のある香りが彼女を包み、言わねばならないと思っていた言葉をのどの奥に押し返した。
「帰らないでくれ」チェーザレは穏やかに言った。「君が必要なんだ。仕事か何かにさしつかえるのなら、僕が片をつけるから」彼はわずかな、しかし逃れることを許さない力を指先にこめてビアンカのあごを持ちあげ、自分の目を見させた。黒く濃いまつげに囲まれた灰色の目は、高く隆起した頬骨の上で不可解な表情を浮かべている。冷たい感じのする細い鼻に不つりあいな、荒々しい情熱を漂わせた美しい唇。あまりにハンサムな顔に、彼女の心はうずいた。
 しがない庶民がおろおろするような難問を、自分は苦もなく解決できる、とチェーザレが決めてかかっていることで、ビアンカののどはヒステリーじみた反応でつまった。これは財産や社会的地位に関することではない。彼の男らしさや強烈な個性にかかわりのあることだ。
「だめなの」ビアンカはしびれて自分のものでないように感じる唇で、なんとか答えた。
「どうして? 決まっていたことのはずだよ」チェーザレは長い指で彼女のあごをそっと締めつけて、頭をほんの少し下げた。キスで分別を奪う準備だろうか。
 そんな危険は冒したくない。ビアンカはぐいと顔をそむけて息を吸いこんだ。初めはここにいるつもりだった。炎に引き寄せられる蛾のように、彼の存在に引き寄せられて。けれど、ようやく危険をはっきりと察知した触角のおかげで、手遅れにならないうちに救われた。
 ビアンカはやわらかいキッド革のバッグに指を食いこませながら、ひとたび口に出せば決定的な別れになる言葉を、内心でまとめた。
 彼は私の言うことを受け入れるだろう。残念がる言葉をひとつ二つお義理に述べて。考え直してほしいと頼むほどプライドのない人ではない。この言葉が口を出た瞬間に私たちの仲は終わる。あと戻りの道はない。
 ぐっと息を吸って胸を張り、乾いて硬直しているような舌の先を唇にさっと走らせる。「私たちは終わりよ、チェーザレ。もう会わないわ」
 とうとう言ったわ。味もそっけもない言葉はある程度の自尊心を残してくれる。私の心臓をいつまでも残る傷から救ってくれる。こう言うには精いっぱいの決意が必要だった。心の奥から引きだされたように感じられる言葉は、ビアンカの張りつめた神経よりも強く緊張した雰囲気の中で、石ころが落ちたように響いた。
 緊張は、今は彼から来ていた。かすかにこわばった頑丈なあごの線、謎めいた目の奥に一瞬浮かんだ動揺、高く上げた黒髪の頭、その姿勢がばねのような力を秘めた一メートル八十センチ以上ある体を際だたせる。ビアンカは反射的に身震いした。
 チェーザレは自分を二つに引き裂きそうな激情の高まりに耐えようと歯を食いしばった。ビアンカを抱きしめて別れの言葉を撤回させるまで、愛らしい唇にキスしたかった。だが意志の力を振りしぼってその衝動を抑えた。
 彼女を去らせてはならない。そうはさせない!
 鋭く息を吸いながら、チェーザレはちょっと目を閉じた。それからまた開いてビアンカの顔を見た。美しい。クリーム色の肌やつやつやした黒い髪、みずみずしい唇や切れ長なこはく色の目、今夜は黄褐色のつややかなシルクに包まれた、完璧な形の細い体。どこか異国的な感じさえある。
 やわらかい唇がわななくのを、彼女は隠しきれていない。だが目は冷たく決然と光っている。その光が語るのは、唇を重ねて、きゃしゃな両肩から薄いシルクの下で誘うように隆起する胸までゆっくり手を滑らせれば、これまで二人とも抵抗できなかった情熱に火はつくにしても、彼女の決意は少しも変わらないということだ。
 ここ何週間も、チェーザレは二人の関係にどことなく不穏なものを感じていた。彼の住まいに越すのをビアンカが拒んだこと、彼が喜ばせるつもりで贈った品物を断ったときの、彼女の苦痛に満ちた表情、彼女が自分の家に彼を一度も招こうとしないこと、彼女の家族や生いたちや、将来の希望について尋ねたとき、ビアンカがさりげなく話題を変えたこと、などに。
 初めて会ったとき、彼女のことは何も知らなかった。自分のベッドに入れたいと願っていただけだった。今もビアンカについては、当時と同じぐらいの知識しかないことに気づいて、チェーザレは愕然とした。
 うわさされてきたほど、僕は多くの愛人を持っていたわけではない。それに別れの時が来れば、どちらの側もうらんだり嘆いたりしなかった。
 謎めいたところがビアンカをほかの女と違う存在にするのだろうか。それはわからない。わかるのはただ、以前はこんな気持ちに一度もならなかったことだけだ。チェーザレは日ごろの自負心を失って、せつないあこがれを伴った苦痛でいっぱいになった。
 手を伸ばして彼女をとらえ、もう一度だけ引きとめられそうな魔法を使いたい気持ちを、チェーザレは抑えた。そしてぴったりした黒いズボンのポケットに両手を突っこんだとき、衝動的に出た言葉に自分で驚いた。「ビアンカ。僕と結婚してくれ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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