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秘書と結婚?【ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版】

秘書と結婚?【ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ別冊
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェシカ・スティール(Jessica Steele)
 イングランド中部に、七人兄妹の六番目に生まれた。現在はウースターシャーの風光明媚で文化財に富んだ村に夫とともに住んでいる。公務員として働きながら夜の時間を執筆にあてていたが、夫の励ましを得てフルタイムの作家となった。一番の趣味は旅行で、メキシコ、中国、香港……と、取材をかねてさまざまな国を訪れている。

解説

結婚なんて絶対にしないと、チェズニーは心に誓っていた。両親や姉たちの悲惨な結婚生活を目の当たりにしていれば、それも当然というものだろう。仕事に生きがいを求めようと決め、チェズニーは個人秘書の職に応募して首尾よく採用された。上司は、大企業の取締役であるジョエル・デヴェンポート。金髪で青い瞳の彼に、チェズニーはたちまち魅せられてしまう。でも、有能な秘書が上司に恋するなんてもってのほか。つのる思いを秘めて仕事をこなしていたある日、チェズニーはジョエルの突然の言葉に呆然とする。「2年間の期限付きで結婚してほしい」

■〈身分違いの恋〉と銘打ちお贈りする企画第1弾は、ジェシカ・スティールが描く大人気のボスと秘書の恋物語。魅惑のボスの名ばかりの妻になった秘書の、切ない片想いははたして実るのでしょうか?
*本書は、ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「やあ、ポメロイ」ジョエルは立ち上がった。「それにチェズニーも」彼女にも声をかけ、とびきり美人ながら色気たっぷりの連れを紹介した。「イモジェンを知っているかな?」
 短い紹介が続いたが、ジョエルは自分の個人秘書のチェズニーにお小言があることは口にしなかった。こき使っておいて言えるものなら言えばいい。そのあとふたりはまた出口に向かった。
 フィリップはフラットの建物の玄関でたずねた。「また会ってもらえるかい、チェズニー?」
 彼は好きだし楽しい相手だ。それに商売敵と出かけるとジョエルがいやがる。「喜んで」こたえたものの彼は今週の土曜日を考えているかもしれない。「電話番号を教えるわ。たぶん来週なら」
「楽しみにしているよ」電話番号を教えたとき彼が身を屈めたが、身を引くのを感じたのか頬のキスにとどめ、チェズニーが建物に入るのを待った。
 フラットの調度は両親や祖父母や姉たちからのもらい物や、自分で買った家具の寄せ集めだが、いい感じに調和して家庭的な雰囲気を醸し出している。
 でもくつろいではいられない。手を洗って早速、冗談で書斎と呼んでいる小さな寝室に向かった。
 仕事を始めて四十五分経ったとき外のブザーが鳴った。フィリップかしら。なぜ戻ってきたのだろう。チェズニーは小さな玄関ホールで建物の表玄関に通じる受話器を取った。「どなたでしょうか?」
「デヴェンポートだ」歯切れのいい声が返ってきた。
 デヴェンポートですって。まさか胸にあるお小言を浴びせたくて、美しいイモジェンを置いてきたわけではないでしょうね。こんなに夜遅く? まさか。でも彼は愛想のよい口調ではない。
「中へどうぞ」チェズニーも歯切れよくこたえた。わたしは解雇の理由になることをしたかしら。そうは思わない。それにくびを言い渡すために家を訪ねたりしないだろう。それともするかしら。
 玄関で待ちながらチェズニーは彼の用向きがなんにしろ心構えだけはしておき、呼び鈴が鳴るなりドアを開けた。ふたりは交戦中の敵さながらに冷たくにらみ合った。やがてジョエルが口を開いた。
「まだ着替えていないのか」敵意に満ちている。彼が黒いワンピース姿をさっと眺めた。前にはなかった胸元の谷間の優美な丸みに一瞬視線が注がれた。
 チェズニーは両手で胸を隠したい衝動を覚えながら背を向け、中に入るように勧めて居間に案内した。もしわたしが寝ていたとしても、彼はブザーを鳴らしたにちがいない。
 居間で向かい合うと、チェズニーがたずねる前にジョエルが口を開いた。「朝あの書類が必要だと君は知っていたはずだ」彼は空港から会社に立ち寄り、命じた書類がデスクにないのを発見したらしい。「それなのに君は――」
「訪ねてくださって助かりました」彼女は内心はらわたが煮えくり返りながらも穏やかにさえぎった。「少しわからない点があって。もしお疲れでなかったら手を貸していただけますか?」彼がいぶかしげに目を鋭くした。ああ胸がすっとした。「書斎にどうぞ。あの書類を作成しているところなんです」
 彼の目がきらりと光った。一戦交えるために訪ねてきたのに怒る理由がなくなって気に入らないのだ。おあいにくさま。
 チェズニーが期待に添うつもりだったと知り感心したのかどうか、彼は書斎までついてきた。室内にはタイプして印刷した書類もある。
 ジョエルは疑問にはすぐこたえたものの、にこりともしない。怒りの矛先を奪われたことが気に入らなくて、まだ一戦交わしたいのだろうか。
「朝八時までにデスクに用意するつもりでした」
 その骨折りに敵意のまなざしが返ってきた。チェズニーは悦に入りながら彼を玄関まで見送った。彼はドアの取っ手に手をかけてチェズニーを見下ろし、ためらってから言った。「昨日話し合ったのに君がポメロイと出かけるとは思わなかった」
 話し合った? フィリップがライバル企業のトップだと教えられただけだ。わたしの仕事は極秘だと念押しする必要を感じたらしいのが腹立たしい。
「もしフィリップがわたしから秘密情報をきき出そうと狙っているなら、会社に電話して名乗るわけがないでしょう」憤然と浴びせたので、彼女のクールなイメージはぼろぼろになった。「二カ月近くあなたの個人秘書をしてきたわたしが、秘密でもなんでも情報をもらすと本気でお考えですか?」かんかんに怒ってまくし立てると、彼はクールな仮面が壊れるのを楽しむように見つめ、ずうずうしくもほほえんだ。
「仕事が忙しくて最初のデートでおやすみのキスもできず、気の毒なことをしたね」彼が魅力たっぷりに言った。
 向こうずねを蹴ってやりたい。チェズニーは懸命に自制した。「あなたこそキスもしないで寝るおつもりのようですけど」にこやかにこたえたが“まさか”と言わんばかりの瞳を見ていやな気分になった。お色気たっぷりのイモジェンがどこかで待っているのかしら。
 それには触れず彼は外に出て、いともやわらかな声で言った。「あまり遅くまで無理しないように」
 チェズニーはジョエルの後ろ姿をねめつけた。ひとでなし!


*この続きは製品版でお楽しみください。

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