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侯爵と麗しのサファイア

侯爵と麗しのサファイア


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

愛してしまったのは、永遠の愛を誓ってはくれない人。ロマンスの名手L・ヒースが情感豊かに綴る、切ない愛の一幕。

マティルダはその午後、ハンサムな来訪者に厳しい視線を向けていた。妹の求愛者として現れたレクストン侯爵は、英国社交界最高の花婿候補と謳われ、家柄も立ち居振る舞いも完璧だ。しかし、かつての自分のような不幸な結婚をさせないため、マティルダは二人の外出にお目付役として同行する。完全無欠な侯爵の、不適切な一面はすぐに明らかになった――冬空を思わせる青い瞳はマティルダに向けられるときにだけ、暗く官能的な熱を帯びるのだ。危険な男性だ。妹にはふさわしくない。憤りつつも、彼のまなざしに体は熱くなって……。

抄録

 妹へのティリーの影響力を理解しているとは、レクストン侯爵は賢い男だ。「正直に言うと、ランズダウン邸に戻ってから、あなたの名前が舌先に上った記憶はないの」
 レクストンの翳を帯びた視線がティリーの唇に落ち、ティリーは“舌”という言葉を口にしたことを後悔した。それどころか、彼の舌と自分の舌が親密な一戦を交えているところが目に浮かんだ。理由はわからなかったが、あのすばらしい形をした唇はティリーの唇を開かせ、すべてを包み込むような――あまりに深いキスをし、それは足の裏にまで感じられるもののような気がした。今もブーツの中で爪先を丸めたくて仕方がない。この男からは、今すぐに逃れなければならなかった。
「送りたいならどうぞ。でも、あなたのことをジーナに何と言ったかは教えないわ。姉妹の会話は姉妹だけのものだから」ティリーは牝馬を前に進ませ、レクストンが横に並んだことに満足感を覚えた自分がいやになった。
「君たちは僕の整った顔立ちについて、時間をかけて話したんじゃないかな」
 ティリーは鼻で笑った。何て傲慢。まったく、男というものは……。
「それに、君たちは二人とも、これほど完璧な男は知らなかったはずだ」
 煉瓦の壁にでもぶつかったように、レクストンの言葉は急にとぎれた。その口調はいかにもおどけたふうで、少し自嘲気味だった。これほど容姿が整っていて、自分が近づけば女性は必ず足元にひれ伏すとなると、それゆえの苦労もあるのだろうか?
「昨日の午後、あなたの馬車の中で失神せずにいるのは大変だったわ」
 レクストンの笑顔に、ティリーは鞍から転げ落ちそうになった。何も言わず黙っておけばよかった。これほど完璧な男性が存在するなど、理不尽だ。
「僕の機知と模範的なマナーに、すっかり魅了されたんだろう」
 もうたくさんだ。この男性にうっとりするつもりはない。「私、なぜあなたは私のことばかりきいて、妹のことはきかないのかと質問したわよね」
「詮索が好きな人はいないからね」
「それでも、私の力量を試すことは心に決めていたみたい」
「君のほうが注目に耐えられそうに見えたからだよ。妹さんはこれまで、誰にも口説かれたことがないのか?」
 本気で心配しているようなその声にだまされたくはなかった。「あなたが初めてよ。この危険な海は、十八歳ではまだ泳ぎこなせないと思ったから、あの娘が十九歳になるまで待つことにしたの」
 ほのかな朝日の下で、レクストンが頭の中で計算しているのが見て取れた。彼がいまだにティリーに関する情報――おそらく現在の年齢を見極めようとしていることに驚いたが、それは姉妹のうち興味深いのがティリーのほうだからで、その事実は少しも光栄に思うことではなかった。ティリーが注目を浴びる理由はただ一つ、醜聞だ。レクストンは計算結果に満足したようだった。ティリーは彼の結論をきくつもりはなかった。答えが合っていようと間違っていようと、自分には何の関係もない。
「今夜、僕と劇場に行くことを思い止まるよう、妹さんを説得したかい?」
「いいえ。あなたが妹にふさわしい紳士だとは思わないけど、害がないこともわかってるから」
 悪魔を思わせるあの笑みが、またも浮かんだ。その笑みをいとも簡単に、さりげなく浮かべるレクストンが憎たらしかった。女性に対して、どこまでも自然にふるまえる男性なのだ。それは、たいていの男性よりも経験が……肉体的な経験が多いからに違いない。
 レクストンは口を開き、また閉じて頭を振った。「女性が僕と一緒にいて安全だと思うなんて、僕のことを知らないからだと言おうとしてしまった」どこかばつが悪そうだった。「女性と戯れることには慣れているが、本当のことを言うと、君の指摘したとおりだ。僕は妹さんを傷つけるようなことをするつもりはない。とても感じのいい女性だ。一緒にいると楽しい」
 レクストンは“本当のことを言うと”と口にしたが、その言葉にはどこか嘘が織り交ぜてあるのがわかった。ティリーはそれを確信しながらも、具体的にどこが嘘かは指摘できなかった。彼の抑揚にかすかな変化が、罪悪感を示す何かが感じられたのだ。あるいは単に、ランズダウンと過ごした時間のせいで、男性が正直にもなれることを信じきれなくなったのかもしれない。
「妹さんはどんなチョコレートが好きかな?」レクストンはたずねた。
「本人にきけばいいでしょう」
「それでは驚かせることができないだろう」
 レクストンがジーナにチョコレートを贈るのも、妹を口説くのもいやだと思う自分は、何と不誠実な姉なのだろう。「中心が柔らかいチョコレートよ。いちご味の」
「君は?」
「私はチョコレートは好きじゃないわ」
「何が好きなんだ?」
 性行為で好きなのはどんな体位かとか、キスはどういうふうにされるのが好きかといった、まるきり不適切な質問をされているように思えたのは、きっと朝の静けさのせいだ。なぜレクストンはティリーの思考を、低俗な場所に堕としてしまうのだろう? 「それは、あなたが妹を勝ち取るために必要な情報とは思えないわ」
「それはそうだが、妹さんの心をつかむためには、君に気に入られなきゃいけないってことを、すでに教えてくれたじゃないか」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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