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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

白衣に隠した純情

白衣に隠した純情


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

籠の鳥のように育ったけれど、今、愛する彼のもとへ飛んでいきたい。

両親から惜しみない愛情を受けて育ったアニカの人生は一変した。反対を押し切って看護師をめざしたとたんに家族から見放され、今は介護施設で働いて生活費を稼ぎながら実習をこなす身の上だ。唯一の心の慰めは、実習先の小児科医レイエスをひそかに眺めること。浅黒い肌に黒い髪と瞳を持つ彼には野性的な魅力がある。ある日、話がしたいとレイエスに言われて天にも昇る心地になるが、彼はすげなく告げた。「きみの兄さんから、見守るよう頼まれたんだ」レイエスにとってわたしはただの友人の妹……。アニカは意気消沈した。じつのところ、純真無垢な彼女に自分のような男はふさわしくないと、彼がどうにか気持ちを押し殺しているとも知らずに。

■人の役に立ちたいと、粉骨砕身して看護や介護に明け暮れる日々のアニカと、純粋で努力家の彼女に惹かれるわけにいかず悶々とするレイエス。じりじりするような純愛ストーリーをご堪能ください。

抄録

「ほかに失敗したことは?」
 アニカは言いたくなかったが、ロスの笑顔を見ると打ち明けてもいいような気がした。
「クレジットカードを持っていたけど、毎月の請求書を家族の会計士に送るだけだったの……」
「今は違うのかい?」
「ええ」
 アニカの声が低くかすれ、ロスは聞きもらすまいといつのまにか身を乗り出していた。
「三カ月たって、請求書の支払いがされていないことにようやく気づいたの。だから今はその金額を自分で払いつづけているわ」
「だが、きみは看護の仕事が好きなんだろう?」アニカが首を横に振るのを見て、ロスは眉根を寄せた。
「どうかしら。ときどきどうしてこの仕事をしているのかわからなくなることさえあるの。パティシエになりたかったときと同じ。ジュエリーデザインの勉強もしたけれど、それも間違いだったわ」
「看護師を選んだのも間違いだったと思っているのかい?」ロスは尋ねた。
 アニカは小さく肩をすくめ、かぶりを振った。彼は不安を打ち明けてもいい相手だろうか?
「ぼくには話してくれ、アニカ。信用してくれていい。このことは決して――」
「信用?」アニカは目を見開いた。「どうしてあなたを信用できるの?」
 予想外の切り返しだ。ロスは思案した。だが、そう簡単に信用しないのも当然ではないか? 確かなのは、彼女はぼくを信用していいということだけだ。
「家に帰って、ゆっくり休んだほうがいい」ロスはいったん妥協したが、やはりこのまま放ってはおけないと思い直した。「夕食を一緒にどうだい?」
 どんな女性もこれには飛びつく。そして、ぼくはいつも後悔し、早まるなと自分を叱りつける。本当に夕食に行くことなどないからだ。たいてい一時間後には最寄りのホテルの部屋のドアノブに朝食ルームサービスの注文票をかけているか、市内のフラットに直行している。しかし、アニカは誘いに飛びつくこともなく、コーヒーを飲み干して立ち上がった。
「遠慮するわ。仕事がしづらくなりそうだもの」
「そうだな」ロスは同意した。二人のうち少なくとも一人は分別があって何よりだ。
「今日のこと、キャロラインにも誰にも言わないでくれる?」
「休日や長い休暇中にだけ介護施設で働くと約束してくれるかい?」
「無理よ」
 二人はロスの埃っぽいピックアップトラックとアニカの高級スポーツカーが止めてある駐車場へ向かった。ロスは平然としていたが、気が張り詰めていたアニカは自分の車の鋭い解錠音に飛び上がった。
「キャロラインには何も言うつもりはない」
「ありがとう」
「だが、気をつけてくれ。いいかい?」
「わかったわ」
「どの病棟でも言えることだが、とくに子供相手の小児病棟で失敗は許されない」
「失敗しないわ」アニカは言った。「いつも細心の注意を払っているもの」本当だ。ささいなことまで慎重すぎるほど慎重になり、しじゅう確認ばかりしている。頭が痛くなるほど。そこまで神経質にならないほうが楽ではないかと思うときもある。
「家に帰って寝るんだ」ロスは言った。「運転はできるかい?」
「もちろんよ」
 ロスはアニカに運転させたくなかった。彼女をピックアップトラックに押し込んで農場へ連れて帰りたい。あるいは、カフェに戻って三時まで話したい。せめてキスだけでもできないだろうか?
 だが、今は分別を忘れなかった。
「それじゃ、おやすみ」ロスは言った。
「おやすみなさい」
 しかし、二人とも動こうとしなかった。
「どうしてスペインへ行くの?」珍しくアニカのほうから沈黙を破った。
「解決したいことがいくつかあってね」
「わたしもあと数週間の実習で……」アニカが笑みらしきものを浮かべた。「解決したいことがいくつかあるわ」
「少しでも何かが解決するのはいいことだ」
「ええ、とても」アニカはうなずきながら、もう一度挨拶して早く別れなければと思った。
「もし気持ちが変わったなら……」ロスはそこでぐっと口をつぐんだ。今は自制しなければならない。
 アニカは葛藤していた。自分の車に乗りたくない。彼のピックアップトラックに乗って、解決すべきことを少しのあいだ忘れたい。どこか人里離れた場所へ連れていってほしい。その黒い瞳に宿る情熱が欲しい。分別を忘れ、無謀な行動に走りたい。
「安全運転で」
「あなたも」
 二人は淡々と言葉を交わした。いたって礼儀正しく。だが、二人の心は危険な場所へ向かっていた。二度とそこから戻れなくなりそうな、とびきり甘美な場所へ。
「さあ、帰るんだ」ロスの声に、アニカはキスをされているような気がした。彼の目は確実にキスをしている。まるで体中にキスされているみたい。
 アニカは震えながら自分の車に乗った。イグニションキーがうまく差し込めない。気持ちを落ち着け、車の明かりをつけてからようやく差し込んだ。
 信号機のところでロスの車が隣に来た。郊外へ向かうための右ウインカーが点滅している。アニカは市内へ向かうため、このまままっすぐ進む。
 車をまっすぐ進めるには、ありったけの意志の力が必要だった。


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