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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル

蝶になれないシンデレラ

蝶になれないシンデレラ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アニー・バロウズ(Annie Burrows)
 つねに本を読んでいるか、頭の中で物語を創作しているような子供だった。大学では英文学と哲学を専攻し、卒業後の進路は決めかねていたところ、数学専攻のハンサムな男性と出会い、結婚する決心をしたという。長年、2人の子供の子育てを優先してきたが、彼女の頭の中にある物語に興味を持ってくれる人がいるかもしれないと思い、小説を書きはじめた。

解説

家なき乙女が助けを求めたのは、“元親友”の不遜な伯爵――

「私を名ばかりの妻にしてもらいたいの」震える心を抑えこみ、ジョージアナはひと息に言った。父亡きあと住む家を失った彼女は、男性恐怖症だというのに、利己的な継母に花婿探しを強いられそうになっていた。切羽つまった彼女が頼ったのは、大好きだった幼なじみ――離れていた10年間、手紙ひとつくれなかったエドモンドだった。近寄りがたい伯爵となった彼は、ジョージアナの願いをすげなく断る。だが、胸の谷間もあらわなドレスを継母に無理やり着せられ、絶望的な思いで社交界デビューしたジョージアナの前に、再びエドモンドが現れた――冷たいグレーの瞳に怒りをたぎらせて。

■エドモンドは冷淡な態度をとったことを詫びると、花婿探しに協力すると申し出ます。行動をともにするうち、10年前に身分違いのふたりの友情が大人たちの手で引き裂かれていたことがわかり……。人気作家が英国摂政期を舞台にみずみずしく描く、可憐な初恋物語。

抄録

 ジョージアナはため息をついた。この三日そうしていたように厩舎の時計が鳴るまで待って、最後の鐘の音が消えるまでぐずぐずしていても仕方がない。彼には来る気がないんだもの。いつまでも友達でいると約束したときはまだ子どもだった。それから考えが変わったんだわ。
 当然でしょ。私は家族の目にさえひどい失敗作なんだから。彼がもう友達でいたくないと思ってなんの不思議があるの? ばかげた夢にしがみつくのは、もうこれっきりにしなきゃ。
 立ちあがりかけたとき、犬の吠える声がした。エドモンドが来たってことにはならないわ。自分にそう言い聞かせながらも、倒れそうになるほどすばやく、彼が来るはずの方角へと体を向けていた。
 その拍子に左足が土手のぬかるみにはまり、川に落ちないように必死に腕を泳がせながら、思わず毒づいた。せっかくあれだけ支度に時間をかけたのに。近づいてくるのが誰にしろ、ここに着いたときには、片足で立っているか、ブーツの脱げた足を空中に振りあげているか、葦の中に尻もちをついた私を見ることになりそう。
 もしも、もしもあれが、髪の毛一本乱したことのないエドモンドなら……恥ずかしくて、泥だらけのブーツを投げつけてやりたくなるかも。
 幸い、ブーツは音をたてて泥から抜けた。ちょうどそのとき、一匹の犬が土手を喜び勇んで駆けてきた。斜面を駆けおり、盛大に尻尾を振りながら、川のほとりにいるジョージアナの周りをぐるぐるまわる。
「ライオン?」ジョージアナは年老いたスパニエルの耳の後ろをかいてやった。本当にライオンだ。するとエドモンドも近くにいるんだわ。体を起こすと品のいい身なりの青年が見えた。
 のんびりと湖のほとりの道を歩いてくる。ぴかぴかのブーツを早春の朝日に輝かせ、風になびくコートから、すばらしい仕立ての上着と真っ白なスカーフをのぞかせて。とても短くした栗色の髪は少しもはみださずに帽子のつばの下におさまっていた。
 眼鏡のレンズに光が反射して、彼の目は見えなかった。あれをかけてきたのは、ふたりのあいだに壁を作るため? この十年で視力ががくんと落ちたのなら別だけど、少なくともここで眼鏡をかける必要なんかないはずだ。
 そんなものがなくても、ふたりのあいだに越えられない溝があることは、とっくにわかってるわ。
 エドモンドは足を止め、身分の低い者に立場をわきまえさせる、冷たく尊大な目を向けてきた。相手に丁重にお辞儀をして、すごすご引きさがることを要求するまなざし。風に乱れた髪と、片方が泥だらけのブーツと、ところどころ擦り切れそうなほど薄くなった手袋をいやでも意識せずにはいられないまなざしだ。
 いっそブーツが脱げていればよかった。そうしたら、あの無表情な顔に投げつけてやれた。高価なコートに泥の染みが飛び散ったら、さぞ愉快だっただろうに。そう思っていると、ライオンがぜいぜいいいながら足元にごろりと横になった。
「かわいそうに、こんな年寄りの犬をここまで歩かせたの?」冷ややかなまなざしを跳ね返そうと、食ってかかる。
「歩かせてやしない。林までは馬車で来たんだ」
「馬車で来たの?」ジョージアナは非難の目を向けた。わずか一キロ半の距離を馬車で来るなんて、何を考えてるの? 厩舎には申し分なくすばらしい馬がたくさんいるのに。
 まるでこの思いが聞こえたように彼が言った。「君に会ったら、ライオンが喜ぶと思ったのさ」スパニエルの名前をほんの少し強調したのは、この会合を喜んでいるのは犬だけだという意味だろう。「だがここまで歩くのはこいつには無理だ。それに幌のない馬車で僕の隣に乗るのが好きだからね」
 これを肯定するように、ライオンが腹をなでてくれと仰向けになる。ジョージアナはかがみこんでこの要求に応え、顔を隠した。彼の態度でまだこんなに傷つくなんて信じられない。あんなに何度も目に入らないふりをされたあとで。
「何か頼みがあったのかい?」エドモンドはうんざりしたような声で言った。「それとも、ライオンを連れてフォントネー・コートに戻るべきかな?」
「大事な頼みがあることはわかっているはずよ」ジョージアナは鋭く言い返し、立ちあがった。「さもなければ、メモを送ったりしないわ」
「で、それが何か話すつもりはあるのか?」彼はチョッキのポケットから時計を取りだした。「重要な仕事が山積みなんでね」
 ジョージアナは息を吸いこむと、わざと深く膝を折り、くるぶしのところでもだえている犬や、片方の腕にかけた乗馬服の裾が許すかぎり優雅にお辞儀をした。
「貴重な時間を割いてくれてありがとう」
「どういたしまして」エドモンドはこれも高い身分に伴う義務のひとつだと言わんばかりに片手を振った。「だが、急いでもらったほうがありがたい」
 急げ? 急げですって! 三日も待ちぼうけを食わせておいて、ようやく来たと思ったらさっさと終わらせろだなんて。あの古臭い屋敷と、融通のきかない召使い、堅苦しい生活にそんなに急いで戻りたいの? 一度でいいから、思いきり彼を揺さぶり、あの顔に浮かんでいる、残りの世界に対する軽蔑と不愉快な自己満足を突き崩してやりたい。
 どんな感情にしろ、それを浮かべるところが見たいものだわ。
「いいわ、そんなに知りたいなら」
 ここに来た目的をあの独善的な顔に叩きつけてやる。そうすれば、少なくとも泥だらけのブーツを投げつけたのと同程度のショックを与えられるはずよ。
「結婚してもらいたいの」


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