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淑女と娼婦【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】

淑女と娼婦【ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ニコラ・コーニック(Nicola Cornick)
 イギリスのヨークシャー生まれ。詩人の祖父の影響を受け、幼いころ歴史小説を読みふけり、入学したロンドン大学でも歴史を専攻した。卒業後、いくつかの大学で管理者として働いたあと、本格的に執筆活動を始める。現在は、夫と二匹の猫と暮らしている。

解説

伯爵に蔑みの目を向けられたのに、彼の誘惑に抗えないなんて……。

なぜ姉の突飛な頼みを聞き入れてしまったのかしら? 純朴でまじめなルシールはしきりに後悔していた。父の死後、姉は相続のためにさる伯爵領内の屋敷に住む必要があった。だが、留守中にルシールが姉になりすますのはあまりに無謀だった。双子の二人は顔がそっくりでも、性格もふるまいも……なりわいも違う。ルシールは地味な教師で、姉は社交界に名を馳せる高級娼婦なのだから。領主のシーグレイブ伯爵はもちろん、村人からも白眼視される毎日。次々とつらい目に遭い、思わず涙を流してしまった彼女を見て、伯爵は目の前の女性が自分の知る人物らしくないことに気づいた。ほどなくルシールは仰天の誘いを受ける――僕の愛人にならないか、と。

■太陽と月ほど違う性格の双子の姉に代わり、不機嫌な伯爵や村人と渡り合わなければならなくなったルシール。皆の敵意は本来、姉に向けられているとはいえ、手酷い仕打ちに傷つきます。うぶな彼女と伯爵との成就しそうもない恋は、いったいどうなることやら……。
*本書は、ハーレクイン文庫から既に配信されている作品のハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「どういう状況になるか注意しておいただろう、ミス・ケラウェイ」その口ぶりに同情しているようなところはないし、まなざしには優しさのかけらもない。怒りと自分の中にわきあがる不思議な感覚に身を震わせながら、ルシールは相手の目をまともに見すえた。
「おっしゃるとおりですわ、シーグレイブ伯爵。あなたはもうご自分の脅しをせっせと実行に移していらっしゃるんですね。この前お会いしたときに、礼儀正しいふりなどしないで、はっきり警告してくださったらよかったではありませんか!」
 なぜか、ルシールの腹だちまぎれの言葉はシーグレイブ伯爵の痛いところを突いたようだ。彼が無意識のうちに手綱をぐいと引いたため、大きな黒馬が急に止まった。
「ぼくは何もしていない」いつもはやわらかな口調が珍しくとげとげしい。
 ルシールは泣き声になった。「では、あなたが直接手を下す必要はないのでしょう。わたしはもうみんなから“淫婦”と軽蔑されていますし、家政婦はどの店に行っても食料品を売ってもらえません。ここでは誰でも好きなようにわたしを侮辱してかまわないようですね。いくらわたしでも、こんなにあからさまに嫌われているところにいつまでもいるほどずうずうしくはありません!」
 今にも目から熱い涙があふれそうになった。怒りと悲しみにさいなまれ、ルシールは伯爵に背を向けて両手で顔をおおった。
 すると、彼女の腕をつかんでいる手に力が入った。「あんな意地悪ばあさんに何を言われても、うろたえることはない」シーグレイブ伯爵は耳もとでささやいた。「セリーナ・マッチがあんなひどい態度をとったのは、きみを非難しているからではない。息子が相続権を奪われてがっかりし、腹をたてているからだ」
 ルシールは唾をのみこんだ。人々の侮辱の言葉は自分ではなくてスザンナに向けられたものかもしれないが、それでも心は深く傷ついた。あんなに激しい敵意を向けられたのは生まれて初めてだ。
「理由はどうあれ、ミセス・マッチの言ったことは村人全員の考えです」ルシールは大きく息を吸いこみ、必死に涙をこらえると、叔母が振りあげたカリフラワーを思いだして弱々しい笑みを浮かべた。「とにかく、助けていただいたことには感謝しなければなりませんね。もう少しで叔母の野菜と一緒にさらしものになるところでした。ところで、評判のことを考えると、あなたがわたしと話をしているところを見られたら、どちらのためにもならないのではないでしょうか。どうぞここでお帰りください。わたしはもう大丈夫ですから」
「ぼくの評判は変わらないよ」シーグレイブ伯爵はもの憂げな笑みを浮かべた。「それに、きみの評判も――」
「とっくに地に落ちていますわ」ルシールは代わりに言い、疲れたように肩をすくめた。「あなたのお望みどおりに!」
 相手が自分と一緒にいることをいやいやながら我慢しているのは一目瞭然なので、シーグレイブ伯爵は黙りこんだ。ところが、彼のほうはこの出会いを精いっぱい長引かせたいと思っていた。ルシールを見つめるまなざしが急に熱っぽくなった。この女性は美人ではないが、並はずれた魅力がある。それが多くの男たちの心をとらえたのだろう。彼女はどこにでもいるタイプの女性ではない。卵形の顔、濃いブルーの大きな瞳、先端が少し上を向いた小さな鼻。ピンク色のやわらかな唇はほほ笑むためにある――いや、口づけされるためにあるのだ。それから、無意識のうちに挑戦的な雰囲気を漂わせる顎、優美な曲線を描く首……それはまさに見る者に強烈な印象を与える。
 彼女の体はロンドンで会ったときほど肉感的ではないものの、ハイウエストの黄水仙色のドレスの上に着ているぴったりしたブルーの上着のおかげでいっそう引きたって見える。だが、それほど簡単に説明できないのは、あの輝くブルーの目にはっきりと表れている知性だ。前に会ったときに気づいた強欲さや軽薄さとはまるっきり違うではないか。さらに困惑させられるのは、頼りなげで清純な雰囲気があることだ。そのせいで守ってやりたいという気持ちをかきたてられる。ほかにどんな理由があって彼女を助けに行ったというのだろう? あの状況を自分の都合のいいように変えて、徹底的に恥をかかせることもできたのに……。
「それでも、やはり昼間外出するのは愚かな行為だったね」シーグレイブ伯爵はゆったりした口調で言った。「きみが村の中を飛びまわるのは暗いときだけだと思ったよ」
「蝙蝠のように?」ルシールはもの問いたげな視線を送った。
 スザンナになりすましていることを暴露する恐れがあるので、ルシールは自分を抑えようと努めた。スザンナなら絶対にこんな話はしないだろう。けれど、最初悲嘆に暮れていたかと思うと、次には不愉快な状況から救いだされて大きな安堵感を覚える。おまけに、シーグレイブ伯爵と一緒にいると、なんとも言いようのない気持ちの高ぶりを感じた。そのため、今はとんでもなく向こう見ずなまねをしかねない状況なのだ。そんなことをしたらシーグレイブ伯爵に軽蔑されて非難されるという考えが頭になければ、スザンナの計画がだいなしになっても、大して気にもしないだろう。けれど、ついさっき屈辱的な経験をしたばかりなのに、伯爵から軽蔑されるのはとても耐えられない。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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