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公爵と不器用な家庭教師

公爵と不器用な家庭教師


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイトリン・クルーズ(Caitlin Crews)
 ニューヨーク市近郊で育つ。12歳のときに読んだ、海賊が主人公の物語がきっかけでロマンス小説に傾倒しはじめた。10代で初めて訪れたロンドンにたちまち恋をし、その後は世界各地を旅して回った。プラハやアテネ、ローマ、ハワイなど、エキゾチックな地を舞台に描きたいと語る。

解説

悪名高い公爵にキスされたのに、この胸が高鳴るのはなぜ?

数年前に両親を悲惨な自動車事故で亡くして以来、エリナーは唯一の家族となった妹のためだけに必死で働いてきた。今、少しでも給与の高い仕事を求めてロンドンから赴いたのは、ヨークシャーの荒野に立つ巨大な館。館の所有者で雇い主でもある第12代グローヴスムーア公爵は、英国随一の大貴族ながら、その放蕩ぶりでタブロイド紙の常連だ。公爵が後見人である7歳の少女の家庭教師を務めるのが仕事で、留守がちな彼と顔を合わせることなどないという話だった。ところが到着早々エリナーは公爵と遭遇し、言い放たれる。「これまでの家庭教師のように僕の気を引こうとしても無駄だ!」

■着任するやいなや公爵に侮蔑されたうえ、いきなりキスを浴びせられた家庭教師のエリナー。純真無垢な彼女は悪名高い放蕩公爵に心を鷲づかみにされてしまい……。人気急上昇中の作家ケイトリン・クルーズが描く正統派のロマンスをご堪能ください。

抄録

 なにが起こったのか、エリナーはわからなかった。
 公爵がキスをしている。唇を重ねているのだ。私に、悪名高いグローヴスムーア公爵が。
 こんなことが許されるはずはない。身勝手で、危険で、恐ろしい行為だ。
 なのに、エリナーはいやではなかった。
 それどころか喜んでいた。
 うれしくて言葉では表せないほどだ。
 体には炎が爆発するようなおののきが走っていた。公爵がしっかり抱きしめてくれなかったら、ばらばらになっていたに違いない。
 キスに関して、エリナーの経験はひどく乏しかった。大昔、学校のディスコイベントで唇を重ねたときは、ぎこちないばかりで楽しくもなんともなかった。
 けれど、ヒューゴの唇はなんの抵抗もなくふわりと重なってきた。こんなキスなら何時間でも、その気になれば何日でも続けられそうだ。彼は焦らずゆったりとエリナーの唇をもてあそび、ついばんだかと思うと舌をさし入れて、同じことをくり返した。
 気が遠くなるほどの濃密な時間に、エリナーの頭の先から爪先までがわなないた。
 情熱の炎をそそぎこむ公爵の唇と、頬を包みこんで燃え上がらせる彼のてのひらとでは、どちらがより恐ろしいだろう? 顔は焼き印を押されたように熱いのに、不思議とエリナーは身を引く気になれなかった。
 なおもキスは続けられた。
 キスには、いつ始めていつ終えるという決まりなんてないのだ。エリナーは悟った。本物は、頬に音をたてたり上の空でしたりするキスとは違って、じわじわと炎が燃え広がるような感覚をもたらす。こんなことができるなんて信じられない!
 心の飢えが体へと伝わり、やがて痛みへと変わったとき、エリナーは痛いほどたかぶっていた。
 公爵のすぐそばにいたらどうなるか、知っておくべきだった。彼を意識していたからこそ、なるべく距離をおこうと気をつけていたのに。廊下の真ん中で腰に手を当てて公爵を叱りつけるなんて、いったい私はなにをしていたの? きっと意地悪でおしゃべりな幽霊に、体を乗っとられていたに違いない。でなければ、新しい仕事を初日から失いかねない暴挙に走るはずがない。
 しかも、今はこんなことまでしている。
 わけもわからないままに、エリナーの体は“こんなこと”によって火がつき、真っ二つに引き裂かれそうになっていた。
 けれど、官能の化身のような公爵に唇をむさぼられ、落雷にも似た戦慄に体を揺さぶられながら、エリナーははっとした。これがヒューゴ・グローヴスムーアで、彼はこういうことをする人なんだわ……。
 公爵の頭が切れるのは予想外だった。整った容貌とはうらはらに、軽薄でだらしない性格と思っていたからだ。そもそも顔を合わせることはめったにないと聞いたけれど、本当はこういう展開を予想しておくべきだった。
 公爵は、自分の体を思うぞんぶん使って目的を達してきた男性だ。そうしてなんでも手に入れ、他人を傷つけてきた。なぜそのことを忘れていたの? キスされて舞い上がった自分が、エリナーは急に恥ずかしくなった。
 一刻も早く落ち着きをとり戻さなくては。
 公爵の胸に手をついて押しのけようとしたが、うまくはいかなかった。彼の体は鋼鉄のように強靱だったからだ。しかも、薄いTシャツごしにふれた肌はやけどしそうなほど熱く、彼女は手をどけられなくなってしまった。
 だめだとわかっているのに。
 公爵がゆっくりと顔を上げ、こちらを見つめるウイスキー色の瞳がきらりと光ると、エリナーは彼の思惑を感じとった。いろいろ感じすぎて、今にも気絶しそうだ。いっそ激情に負けて、へなへなと床に倒れこんでしまいたいとも思ったが、エリナーの強い意志はそうするのを許さなかった。ここで負けてはだめ。ヴィヴィのことを考えないと。
「十四人の家庭教師が全員辞めたのは、このせいなのかしら?」追及する声が震えているのに気づいて、エリナーはぎょっとした。「テストのつもりなの? ジェラルディンがすぐそこにいるのに!」
 褐色の瞳に光をひらめかせたものの、公爵は黙って両手を下ろした。その瞬間、胸に押しよせたのは安堵よ、とエリナーは自分に言い聞かせた。失望であるはずはない。
 キスの感覚は、エリナーの体の至るところに残っていた。唇しか合わせていないのに、下腹部には官能の炎が渦を巻き、胸はずしりと重くなり、しびれていた。それに目もじんわりとうるんでいる。単純な涙でないのは、誰よりもエリナー自身がわかっていた。
「誰からもほめられずに生きるのは、それはそれでなかなか痛快なんだ」ヒューゴが上品にうそぶいた。「僕をおもしろい男だと思わないか、ミス・アンドリュース? 噂どおりの放蕩者だとわかってよかっただろう? とことん下劣で冷たい、傲慢な男だと」
 何度となく新聞で目にした非難だが、本人が声に出して、しかもほろ苦い絶望さえうかがわせながら言うのを聞くと、エリナーの胸は痛みをおぼえた。
 けれど、エリナーはその気持ちを押しやった。だって、ありえないことだからだ。男性に情熱的に抱きしめられてキスをされるなんて、私の柄じゃない。そういうのはヴィヴィの専門分野だ。公爵のような男性が私にちょっかいを出すのは、タブロイド紙に書いてあるとおりの悪癖でしかない。私をからかって喜んでいるのだ。
「なにもなかったふりをするのが、いちばんいいでしょうね」声の震えを抑えられたことに感謝しながら、エリナーはできるかぎり冷静に言った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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