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愛人記念日

愛人記念日


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

「君には1カ月、僕の愛人になってもらう」それが結婚記念日の、夫の贈り物だとは!

けたはずれに裕福で、誰もが振り返るハンサム。大富豪の実業家マラカイは、アディーが5年間別居している夫だ。結婚記念日の日、彼女はそのマラカイの前で怒りに震えていた。妻の義務として、僕とベッドへ行ってもらいたい、ですって? たしかに、私は結婚式の直後、花婿から逃げ出した。彼が私を妻にしたのは、ビジネス上の戦略だと知ったからだ。私の慈善活動への支援を打ち切るのは、有無を言わせないため? 疎遠な妻は、愛人へ格下げにされてもしかたないの?だが夫との再会を、アディーの無垢な体は熱く意識していて……。

■実力派の新作家ルイーズ・フラーの初邦訳作品をお届けします。結婚式当日に、実はヒーローに利用されていたことに気づいたヒロイン。さらに夫は愛人になれという残酷な要求をしてきて、ヒロインはなんとも皮肉なハネムーンへ行くしかなくなるのでした。

抄録

「そわそわするですって? なぜ私が?」
 彼女の頬はしだいに赤くなり、目の色も濃くなっていった。
「ここで僕と二人きりでいると、お互いに手を出さずにはいられなくなるからだ」
 アディーが鋭く浅く息を吸う音が聞こえ、マラカイの全身に勝利感が広がった。そわそわしているどころではない。妻は抑えきれないほどの欲望を感じている。
「そんなの、ずっと昔のことだわ」彼女はこわばった声で言った。「あれからいろいろ変わったのよ」
「変わっていないこともいろいろある。たとえば……」マラカイはアディーの背後に手を伸ばし、赤毛にそっと触れた。「ここも変わっていない。昔と同じく生命力があって美しい」つややかな巻き毛を指に巻きつける。
 鼓動が激しくなり、アディーは彼の手を払いのけた。「そろそろベリーショートにして、ブロンドに染めようかと思っていたの」
 アディーはマラカイの輝く黒い目から視線を引きはがした。ほんの少し触れただけで、私が夫になびくとでも思っているのかしら? 髪を撫でられただけで、彼にしなだれかかり、私への脅し文句を忘れるとでも? でも、そうなのかもしれない。全身が小刻みに震えているのは、夫に近づきたいからに違いない。少なくとも、私の愚かで節度のない体はマラカイを求めている。
「ここからなら歩けるわ」雨粒のはねる歩道を見て、アディーは早口で言った。「そんなにひどい降りでもないみたいだから」
 振り向いてマラカイを見たアディーは、すぐさま後悔した。グレーの瞳のせいで、蛇ににらまれた蛙のように動けなかった。
「なんなの?」彼女はかすれる声で尋ねた。「なぜそんなふうに私を見るの?」
「なぜだと思う?」猫のようにけだるそうに身を乗り出すと、マラカイはアディーの手を取って指をやさしくもてあそんだ。
 わからないし、わかりたくもないと言おうと口を開いたのに、言葉はかたくなに出てこなかった。口は乾き、手首から先は別の生き物のように脈打っている。アディーは身を引いて、背中を革張りの座席に押しつけた。
「どうだっていいわ。ここにこうしていることが、現実とは思えないし」
「そうかもしれない。ただ、僕には君という存在がこれ以上ない現実に思える。それに、僕が今感じているものもだ」
 アディーは体が宙に浮きあがった気がした。このままずっと遠くまで飛んでいけたらいいのに。でも、闘うことも飛ぶことも無理だ。考えることさえむずかしく感じられる。
 もの憂げな目でじっと見つめられていると、スプーンからしたたる温かいシロップみたいに、熱いものがゆっくりと体に広がっていく。アディーは催眠術をかけられたように、ただマラカイを見つめるしかなかった。座席にもたれて目を閉じ、温かくて男らしい匂いを吸いこんで、彼の言葉を本当だと信じられたらいいのに。でも、なぜ本当でないと思うの? とてもすてきな声なのに……。
 頭の中で、夫の言葉が何度も繰り返された。“僕が今感じているものもだ……”
 やがて、アディーはゆっくりとマラカイから指を引っこめた。本当らしく聞こえるのは、本当だからだ。おそらく、今のマラカイはそう思っているのかもしれない。けれどその気持ちは変化する。どんなに美しく魅力的に聞こえても、冬の太陽のように短い間しか続かない。
「だからといって、正しいとは言えないわ」アディーは静かに言った。
 そして横を向いたけれど、マラカイから強烈な視線を向けられているのはわかった。
「正しくではなく、よりましにするんだ。今度はうまくいくんじゃないか? 期待もなければ、約束もプレッシャーもないのだから」
 その言葉に、アディーの心は揺れた。
 顔を上げてマラカイの目をのぞきこむと、そこには熱く激しいなにかがあって、アディーは息をするのも忘れそうになった。
「やめて!」彼女は手を上げた。「そんなこと言わないで。それから、こんなに近づくのもお断りよ。私は望んでいないもの」
「それは君が自分を信頼していないからだ」
 マラカイも手を上げ、自分のてのひらとアディーのてのひらを合わせた。
「なぜあらがおうとする? 僕が君を欲しいように、君も僕を欲しいと思っているだろう、アディー。そうではないと言ってごらん。僕は間違っていると言ってみるといい」彼の目の奥でちらちらしているのは、小さいが赤々と燃える欲望の炎だ。
 口を開くべきだと、アディーにはわかっていた。マラカイの言葉を否定したいのに声が出ず、そのせいで意味のある言葉を並べられなかった。
 鍋からミルクが噴きこぼれるように、アディーの全身は熱くたぎっていた。そして突然、彼女はそこに溺れたくなった。闘うのをやめて、温かい液体のような欲望に身を任せたい。マラカイが指と指をからめて乱暴に引き寄せると、キスをするのだとわかり、彼女はうれしくなった。キスは言葉ほど複雑でないことがあるからだ。
 指を夫の唇に押しあてたアディーを見て、マラカイの瞳が欲望に陰った。アディーはマラカイの顎からつややかな黒髪へと手をすべらせ、熱に浮かされたように彼の唇を自分の唇へ引き寄せた。
 唇が触れ合ったとたん、官能的なうずきがアディーの骨盤のあたりに広がる。広げた指に力をこめ、ますますキスを深めるうちに、彼女の頭はくらくらしてきた。
 うめき声をあげ、アディーは体を弓なりにした。マラカイの舌が唇の間からすべりこみ、彼の手が腰や太腿をさぐると、アディーの抑えていた感情はあふれ出しそうになった。
「アディー……」


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