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笑顔の行方【ハーレクイン文庫版】

笑顔の行方【ハーレクイン文庫版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★1
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

妊娠2カ月のチャーリーを恋人は捨て去り、急死した。以来、誰かとかかわって傷つくことを恐れるチャーリーは、幼い娘と二人ひっそりと暮らしていたが、予期せぬ事件が起きる。いつものように牧草地で娘を遊ばせていた、そのときに、突如、牛が襲いかかってきたのだ。瞬間、娘の死を覚悟した。誰かが車ごと突進して、間一髪で救ってくれるまでは。車から出てきたのは凍てついた瞳をした精悍な容貌の男性だった。何かかけがえのないものを失ったような、虚ろなその顔に、チャーリーの胸はざわめいた。何かが始まる予感がして。
*本書は、シルエット・ラブストリームから既に配信されている作品のハーレクイン文庫版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 ファームハウスは古びてはいるものの、よく手入れされているようだった。平屋の白い建物は正方形で、そのまわりを幅の広いポーチが城壁のようにとり囲んでいる。北側の屋根の上には茶色い煉瓦の煙突があった。冬の寒い日にはきっと、あそこから煙が周囲の木立よりも高く立ちのぼるのだろう。
 横にいる女性はまだ泣いている。といっても、もうすすり泣き程度だ。ジャドは彼女をとがめる気になれなかった。彼自身、しばらくは泣きたい気分だったのだ。浅い溝を渡りはじめると、ジープはぱちぱちと異様な音をたてた。家に着くころには今にもとまりそうだった。けれど、そんなことはどうでもいい。みんな無事なのだから。ジャドはエンジンを切り、隣の女性をちらりと見た。顔には泥が、膝には血がこびりついている。彼女は震える指で、娘の顔のまわりの乱れた巻き毛をとかしていた。ジャドは仕事柄、ショックに見舞われた人間を数多く目にしてきたので、女性の緊張の糸が切れないうちに家のなかへ入れてやりたいと思った。
「よければ、なかに入るのに手を貸そう。それから、牽引車を呼ぶために電話を使わせてほしいんだが」
 そう言われてはじめて、チャーリーはこの男性が自分たちを救うためにどんな犠牲を払ったかに気づいた。顔をあげ、じっくり彼を見つめる。瞳は透き通るようなブルーだ。目鼻立ちは整っていて、顎はがっしりしている。鼻がかすかに曲がっているのは折れたことがあるからだろう。顎の右側には小さなぎざぎざの傷がある。体はかなり大きかった。肩幅はシートの幅の半分はありそうだ。彼が自分の腰に腕をまわして安全な場所へ運んでくれたときの感触を思いだし、チャーリーは身を震わせた。
「どうぞ、わたしのことはチャーリーと呼んで」
 男性はほほえんだ。「昔、チャーリーという男を知っていたけど、きみほどきれいじゃなかったな」
 彼女が落ちつきをとり戻すのに必要なのは、まさにそんなたわいない言葉だった。「シャーロットの愛称なの……シャーロット・フランクリンよ」
 彼は片手を差しだした。「はじめまして、“シャーロットの愛称”さん。ぼくはジャド・ハンナだ」
 チャーリーは一瞬ためらったあと、ジャドの手を握った。彼はしっかりと、それでいてやさしく、握りかえしてくれた。さりげないふれあいが彼女の不安をさらに少しとり除いた。チャーリーはため息をつき、車のボンネットから吹きだす煙を指さした。
「ミスター・ハンナ、あなたの車がこんなことになってしまって、本当に申し訳ないわ」
「ジャドだ」彼はそう言ったのち、レイチェルを見おろした。「車をだめにしただけの価値はあったよ。さあ、家に入ろう。手を貸すよ」
 ジャドはチャーリーの腕からレイチェルを抱きあげてポーチへ運んだ。
「ここで待っているんだよ。ぼくらでママを助けるんだ。いいかい?」
「ママ、助ける」レイチェルは復唱して階段に座りこんだ。手にはまだしおれた花束を握っている。
 チャーリーは急いでハンドルの下をくぐり、運転席側から外へ出た。立とうとした瞬間、足首からくずおれた。すかさずジャドが彼女を抱きあげて階段をのぼった。抗議の声をあげる暇すらなかった。まったくの他人に体をあずけているせいで落ちつかず、チャーリーはそわそわしはじめた。
「ミスター・ハンナ、わたし――」
「ジャドだよ」
 チャーリーはため息をついた。「ジャド、困るわ」
 彼は立ちどまった。「お嬢さま、今まで出会ったなかでもっとも勇敢な方の手助けをする栄誉を、このぼくにお与えください」
 彼女は赤面した。「なにを言ってるのか――」ジャドのまなざしがチャーリーを黙らせた。
 彼は静かな声で言った。「きみたちはふたりとも死んでいたかもしれないんだ。わかるだろう?」
 花びらをむしっている娘を見おろし、チャーリーは顔をくしゃくしゃにした。
「この子なしでは生きる意味なんてないわ」
 ジャドは胸がつまる思いがした。他人のために喜んで命を投げだす人間がいるという事実を頭ではわかっているつもりだ。だが、子供のためなら本当に自らを危険にさらすことさえいとわないシャーロット・フランクリンの姿勢を見て、無欲の献身をはじめてまのあたりにした気がした。かつてはぼくの母もこんなふうにぼくを愛してくれたのかもしれない。そう思ったが、それを覚えてはいなかった。彼は階段に腰かけているレイチェルに目をやった。
「ああ、わかるよ」ジャドは静かに言った。それから少し声をあげた。「おいで、おちびちゃん。おうちに入ろう」
 驚いたことに、レイチェルは見知らぬ男性の言葉に素直に従い、ふたりに続いて家に入った。ジャドがチャーリーをおろすが早いか、レイチェルは母親の膝によじのぼって胸に頭をもたせかけた。
「この子は大丈夫かい?」ジャドは尋ねた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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