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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

伯爵と憂愁のシンデレラ

伯爵と憂愁のシンデレラ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ルーシー・ゴードン(Lucy Gordon)
 雑誌記者として書くことを学び、ウォーレン・ベイティやリチャード・チェンバレン、ロジャー・ムーア、アレック・ギネス、ジョン・ギールグッドなど、世界の著名な男性たちにインタビューした経験を持つ。また、アフリカで野生のライオンがいるそばでキャンプをするなど、多くの貴重な体験をし、作品にもその体験が生かされている。ヴェネチアでの休暇中、街で出会った地元の男性と結婚。会って二日で婚約し、結婚して二十五年になる。二人は三匹の犬とともにイングランド中部に暮らしている。

解説

運命の伯爵がシンデレラに捧げたのは、光り輝くガラスの靴ではなく……。

100万ポンドをわたしに? この人は本気で言っているの? ジャクリーンはイタリア人伯爵ヴィットリオの話が信じられなかった。伯爵の父がまだ若かりし頃、彼女の亡父が賭で稼いだ大金を持ち去り、酔って記憶が曖昧でそのままになっていたのを、彼が返しに来たという。赤字続きの雑貨店を営み、貧苦のうちに逝った父を思うと胸が痛んだ。店は人手に渡り、彼女はそこに住み込みで働かせてもらっているのだ。伯爵の凛々しい瞳に心を奪われる一方、憤りもこみ上げた。今さら何を言うの!即座に受け取りを拒んだジャクリーンだったが、ほどなく、思いがけない苦境に立たされることになる――彼女の決断に反対の店主に解雇され、路上に放り出されてしまったのだ!

■世界で不動の人気を誇る作家ルーシー・ゴードンが描く、シンデレラ・ストーリーをお届けします!いきなり仕事も住む家も失ってしまったジャクリーンに手をさしのべたのは、なんと彼女が突っぱねたばかりの伯爵でした。一筋縄ではいかない恋の運命やいかに?

抄録

 ジャッキーが顔を上げた。その気弱な表情に思わずキスをしたくなる。ヴィットリオはその欲望に屈した――ただ額に唇を押し当てただけだったが。
「話せば楽になることもある」ヴィットリオはつぶやいた。
 ジャッキーは頬の涙を拭った。「でも、なんと言えばいいか……わたしではなく父のことだし」
「ある意味ではそうだろう。大学に行きたかったと言っていたね。何を学びたかったんだ?」
「語学よ。けっこう向いてるの。一番得意なのはイタリア語」ジャッキーが言った。「夜間学校の講座をいくつか受講したわ。父と一緒に休暇で訪れたいと思って。父はイタリアに行きたがっていたの。若い頃一度行ったことがあるんですって」
「そのときのことは聞いているのか?」
「ええ。すごく楽しかったそうよ」
「僕の父との出会いは?」ヴィットリオは尋ねた。
「イタリア人の友達の話はしていたけど、伯爵だとはひと言も。イタリアで知り合って、数週間後にこっちで再会したと。すごく気が合っていたみたい」
 ヴィットリオはうなずいた。「ああ。僕の父もそう言っていた。二人で冒険みたいなこともしたと」
「そうらしいわね。本当に楽しかったと言っていた。でも――」ジャッキーがふと言葉を切った。
「でも?」ヴィットリオは緊張した。やはりあの話が続くのかと思うと、心がざわつく。
「翌日その親友は突然姿を消したそうよ。置き手紙はあったけど、ごく簡単なものだったらしい。〈さよなら、友よ。フランコ〉みたいな。住所も何も書かれていなくて、父から連絡もできなかったし、彼から連絡が来ることもなかった。せっかく仲よくなれたのにと、それだけは不満そうだった」
「相手について、ほかに何か聞いていないのか?」
「ええ。フランコという名前だけ。知っていたら、話したのではないかしら。ひょっとすると、あなたのお父さんが、身分を明かさなかったのかも」
「かもしれない……」ヴィットリオはつぶやいた。
 目と目が合い、ジャッキーは息を奪われた。なんて強いまなざし。男性からこんな目で見つめられたのは初めて。ジャッキーは急に大きくなった自分の胸の鼓動が気になって仕方がなかった。
「ジャッキー――」ヴィットリオはどう続けたものか迷った。これには思っていた以上に勇気がいる。
「どうかした? 大丈夫?」
「ああ――だがどうしても君に言わなくては――」
 ジャッキーは突然目の前がぱっと明るくなった気がした、まるで雲間から日が差したみたいに。彼も好意を持ってくれているなんて考えもしなかったけれど、こうなるとつい期待してしまう。
 星占いの記憶がよみがえってくる。〈運命が驚くほど新しい展開を迎えようとしています……〉
 それだわ。これは運命の瞬間。彼はきっと、この出会いにどれだけ心を揺さぶられたか告げようとしているのよ。ああ、早く聞かせてほしい。
 ジャッキーは彼の手を両手で握りしめた。
「話して」ジャッキーは息を吸い込んだ。「初対面からこんなにも心が通じているのだから――」
「ああ、そうだな……」ヴィットリオはつぶやいた。
 話せば気詰まりな時間が訪れるのはわかっていた。それでも彼女はまるで温かく誘導するように手を差し伸べてくれている。ありがたかった。だからこそ不安になった。自分の告白で二人の間にあるものを壊してしまうことが。
 ヴィットリオは彼女の両手を取って、唇に引き寄せた。「君は想像もつかないと思う――」
「大丈夫。父から予期せぬ事態に備えるようにといつも言われていたから」ジャッキーは彼と目を合わせた。幸福と期待に満ちた目で。「だからどんなことにも備えている。さあ話して、ヴィットリオ」
 ヴィットリオは鋭く息を吸った。いよいよだ、勇気を振り絞って彼女に何もかも話すんだ。
 だが、きらめく彼女の瞳を見ると、勇気が出てこなかった。父親の苦しむ陰に潜んでいたひどい真実を知れば、この輝きは即座に消えてしまう。彼女の心痛を思うと体が震えた。だめだ、とても話せない。
「もう行かなくては」彼は落ち着きなく言った。
「そうなの? でも――」
「大事な電話がかかってくるんだ。ホテルに戻らないといけない」
 ヴィットリオが立ち上がり、ジャッキーも渋々あとに続いた。魔法に満ちたひとときが一瞬にして消え去り、わびしさだけが残った。
 川沿いに引き返す途中で、霧雨も降りだした。
「急ごう、本格的に降りだす前に」
 二人は一目散に先を急ぎ、店にたどり着いた。
「またすぐに会いに来る」ヴィットリオは言った。「話の続きはそのときに。それじゃ」
 ヴィットリオは、いたたまれずその場を逃げ出した。責められている気がしてならなかった。臆病にもほどがある。
 こんなことになるとは夢にも思わなかった。まさかここにきて、彼女を腕に抱いて、慰めて、守ってやりたくなるとは――傷つける以外ならなんだってしてやりたくなるとは。不意を突かれ、なすすべもなかった。それに、もう後戻りもできない。
 店の中で、ジャッキーは階段を駆け上がって窓から外を見た。彼はちょうど角を曲がるところだった。
 寂しく吐息をつく。何かあったのは明らかだった。キスの寸前で、彼は心変わりをしたのだから。
 彼は求めている、求めていない、どっち? 無言で何か訴えかけているように思えた。あれはわたしの勘違い? でも確かに何か言おうとしていた。
 いったいなんだったの?
 ジャッキーはそれから慌ただしく店を開けた。土曜はいつも忙しい。それでもヴィットリオのことが頭から離れなかった。胸の鼓動を速める、あの瞳が。


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