マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ 別冊

この夜が終わるまで【ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版】

この夜が終わるまで【ハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ別冊
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 ジェニー・ルーカス(JENNIE LUCAS)
 本屋を経営する両親のもとたくさんの本に囲まれ、アメリカ、アイダホ州の小さい町で遠い国々を夢見て育つ。十六歳でヨーロッパへ一人旅を経験して以来、アルバイトをしながらアメリカじゅうを旅する。二十二歳で夫となる男性に出会い、大学で英文学の学位を取得した一年後、小説を書き始めた。現在、幼い子供ふたりの育児に追われながらも執筆活動を通して大好きな旅をしているという。

解説

「ほんの数時間、ぼくを愛しているふりをする。それだけでいいんだ」恋人だった元上司ガブリエルの提案に、ローラの心は揺らいだ。しかも報酬は100万ドル。息子のロビーに苦労させずにすむ。ガブリエルは失った父親の会社を以前から買い戻そうとしていた。その会社がついに売りに出たのに、大きな問題があった。売り手の大物実業家の婚約者がガブリエルのかつての恋人だというのだ。彼は実業家の嫉妬を和らげて取引を成功させるため、ローラにひと晩だけ恋人役を演じてくれと言っている。でも、わたしは嘘をつき通すことができるだろうか。ひとりで育ててきた、かわいい息子の父親であるガブリエルに……。

■〈身分違いの恋〉と銘打ちお贈りする企画第2弾は、“ロマンスの新女王”、ジェニー・ルーカスが描く、大人気のシークレットベビーがテーマの作品。息子の存在を知る由もないヒーローは驚愕の真実を知って……。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・プレゼンツ作家シリーズ別冊版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

“きみを迎えに来たんだ”
 ローラは口をぽかんと開けて彼を見あげた。
 ガブリエルの黒い瞳が、欲望であやしく輝いている。彼女の純潔を奪った夜もこんな目をしていた。ロビーを身ごもったあの夜だ。
“きみを迎えに来たんだ”
 夢のなかで、幾度この言葉を聞いたことだろう。
 この十五カ月、ひたすら彼を思いつづけ、ひとりで子どもを産み、ひとりで育ててきた。そのあいだ、ガブリエルの支えと慰めをどんなに必要としただろう。妊娠したと家族に告げたときも、父親の葬儀で悲しみに暮れる母と、しがみついてくる妹たちを慰めながら、長女としての責任を強く感じたときも、ローラが求めたのはガブリエルだった。ロビーを抱いて銀行に日参し、農場をつぶさないためにも借入金の返済期限の延長を頼みこんだときも。
 幸せを感じるときもなかったわけではないが、そんなときはいっそう彼が恋しかった。初めて赤ちゃんがおなかを蹴り、畏怖の念を感じながらひとり笑ったとき。太陽の輝く八月、赤ん坊を胸に抱いたとき。ロビーが彼女を見あげ、父親そっくりの黒い瞳でまばたきしながら、眠そうにあくびをしたとき。
 この一年、ローラはガブリエルを思いつづけ、彼を必要としてきた。それは、日光や空気や水を必要とするのと同じだった。ガブリエルの笑い声、彼との友情、同じ仕事にたずさわる者としての絆などが、日々懐かしく思いだされた。
 そしていま、ついに彼がローラを求めてやってきた。
「わたしを迎えに?」ローラはささやいた。これまでの夢が、ついに現実になったのだろうか。「それはどういう意味?」
「言ったとおりの意味だ」ガブリエルが静かに言った。「きみが必要なんだ」
 ローラは唾をのみこんだ。「どうして?」
 ガブリエルの瞳がかすかにきらめいた。「ほかの女性はすべて、きみの足元にも及ばないからだ」
 ローラの心臓が激しく胸を打っていた。十五カ月前、彼と別れたのはまちがいだったのだろうか。ロビーのことを秘密にしていたのは、誤りだったのか。もしガブリエルがそれまでの考えを変え、ずっと彼女を思っていたとしたら? ひょっとして彼は……。
 ガブリエルが唇をゆがめて、かがみこんできた。「戻ってきて、ぼくのために働いてほしい」
 ローラの心臓が一瞬止まり、やがてまたゆっくりと動きだした。
 そんなことだろうと思った。ガブリエルがわたしに求めるのは、仕事に決まっている。ほかに何があるというの。
 どうやら彼は、ふたりのあいだに起きたあの夜のことを忘れてしまったようだ。ローラが毎夜夢に見る、あの熱い夜を。
「だとすると……よほど重要なことらしいわね」ローラはゆっくりと言った。
 ガブリエルがかすかに笑った。「そうだ」
 ローラの目の隅に、居間に入ってきた母親の姿が映った。片腕にロビーを抱き、もう一方の手には切り分けられたウエディングケーキを持っている。ローラは大きく息を吸いこんだ。
 ロビー。たとえわずかな時間とはいえ、ロビーのことを忘れていたなんて、どうかしている。
 ローラはガブリエルの手を取ると、詮索するような周囲の視線を無視して、家の外まで引っ張りだした。二月の外気が、凍えるように冷たい。
 玄関や納屋の前や私道には、客たちの車が所狭しと停まっていて、農場の外の田舎道まで続いている。道端の生け垣の向こうに見える丘や、その先に広がる北の森が、いままさに紫色の夕闇に沈もうとしていた。
 ふたりは納屋のそばに立っていた。後ろの池に張った氷が、低く垂れこめた空の下で銀色の鏡のように光っていた。夏になると、よく父がその池で娘たちに泳ぎを教えたものだった。そのせいかローラは大人になっても、悩みがあると必ずその池で泳いだ。父親に守られているようで、なぜか心が落ちつく。
 そしていまもまた、ローラは泳ぎたい気分だった。
 ふたりの吐く息が白く漂い、気がつくと、彼女はまだガブリエルの手を握っていた。彼の長い指が、彼女の指にからみついている。指先から伝わる温かさがローラの全身をめぐり、手足の先がしびれるようだった。
 ローラはあわてて手を離し、腕組みをして彼をにらんだ。「はるばる来てもらったけど、残念ながら無駄足だったわね。わたしはもう、あなたのもとで働くつもりはないわ」
「だけどまだ、仕事の内容すら聞いていないじゃないか。それに……」ガブリエルは言葉を切った。「報酬についても」
 ローラは唇を噛んだ。銀行口座のいまの残額では、満足におむつも買えないだろう。でも、なんとかなるわ。それに何があろうと、ロビーの親権を危うくするわけにはいかない! 彼女は顔を上げ、きっぱりと言った。「たとえ報酬がいくらであろうと、答えはノーよ」
 ガブリエルの唇がかすかにゆがんだ。「確かにぼくは理想的な雇主とは言えなかっただろうが……」
「理想的?」ローラは口をはさんだ。「とんでもない。悪夢以外の何物でもなかったわ」
 ガブリエルの瞳に笑みが浮かんだ。「それでこそ、ミス・パーカーだ。ぼくの知っている彼女は、実に駆け引きがうまかったからね」
「ほかの秘書を探して」
「ぼくは秘書など探していない」
「でも……」
 ガブリエルはローラを見た。彼の声は太く、低く、瞳には思いつめたような表情があった。「ぼくがきみに求めているのは、リオでぼくとひと晩過ごしてほしいということだけだ。愛人として」


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。