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シトロンの香る島

シトロンの香る島


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

ギリシアの実業家で、大富豪のミコノスはマーサの愛する夫だが、二人はしばらく別居している。娘が生まれたとき、夫は、マーサが不貞を働いたと罵った。マーサの知人男性を名指しして、あの男の子どもだろう、と。あまりの言いがかりに、マーサは赤ん坊と家を飛び出した。夫が誤解を悔いて迎えに来てくれるのを待ったが、5年もの月日が流れ、ついに夫が現れたとき、マーサの期待は残酷にも打ち砕かれた。夫は娘を自分の子だと認めた一方で、ベビーシッターを雇い、娘をマーサから引き離そうとしたのだ。いや、それとも、マーサを娘から引き離し、妻を再び自分だけのものにするためか……。

■ロマンスの大御所A・メイザーが70年代に執筆した、古典の雰囲気漂う夫婦元さやの物語です。富も愛も惜しみなく注いでくれていた夫は、なぜ突然あらぬ誤解をしてしまったのでしょう。ラスト、思わず絶句するような秘密と愛憎劇が明かされます。

抄録

「気をつけて話すんだな、マーサ。君はまだ僕の妻なんだ。この国では夫の権力はまだまだ捨てたものじゃないんだぞ!」
「それは脅迫のつもり?」マーサは負けじと肩をそびやかしたが、ダイアンにつかまれている薄いシャツの腕が痛かった。きっと痣になってしまう。ダイアンには自分の力の強さがわかっていないのだ。かつては彼の粗暴なまでの厳しさにほれぼれとしたこともあった。だが、今のマーサの心は複雑に揺れ動いている。彼の荒々しい顔に、怒り声に、太刀打ちできぬその強い力に……。そして、こんなにも矛盾に満ちた感情をかきたてる男は、この世にこの人だけなのだと、マーサは改めて思った。
 ダイアンはマーサの不安な表情を見て、自分のしかけているふるまいに気づくと、低くうめいた。彼はこれまで女に手を上げたことは一度もなかった。こうしていがみ合っている今も、マーサを打つことはできなかった。ダイアンは怒りに燃える目でマーサをにらみつけていたが、ふいに手の力をゆるめた。マーサの唇から、ほっと安堵の息がもれた。
「殺せるものなら殺してやりたい!」ダイアンはぎりりと奥歯をかんだ。「君はまだ子供が欲しくないと言ったな。まだ早すぎる、親としての責任を負う前に、しばらく二人きりの生活をしたほうがいいと。僕もそう思ったし、うれしくもあった、君を僕だけのものにしていられるとね」
「支配するのがでしょ」
「ああ、そう言ってもかまわんさ、支配することをだ」ダイアンはいやな声で言った。「君はあっちのほうも支配されるのが、お気に召さなかったのかな」
「ダイアン、よして……」マーサは顔を赤らめたが、彼はかまわず続けた。「そこのところの真偽は知らんが、とにかく君はほかの男に走って僕を裏切った。その結果、君は軽蔑どころではない僕の報いを受けたのさ」
「こんなことを言い合って、いったいなんに……」
「なんに?」ダイアンは意地悪く目を細めた。「こうやって僕が自虐行為を楽しんでいると思えないかね」
 マーサは体をふり離そうともがいたが、無駄だった。「自分を苦しめているですって! わたしを苦しめているんじゃないの。わたしを傷つけようとしているのよ。手を放してちょうだい」
「放してやるとも」だがダイアンは、言葉とは逆にマーサをぐいとひき寄せた。マーサのふるえるひざに彼のがっしりとした脚が触れる。清潔な男の体が匂い、熱い息吹が頬にかかった。「父宛の君の手紙を受け取ったときから、この瞬間を待っていたんだ。痛い目に遭わせてやる、辱めてやる、つまらん小細工を見破って気をくじいてやると」彼は言葉を切り、激しく上下しているマーサの胸に目を落とした。「君がこの年月の間に、どのぐらい変わったか見たかった。僕が苦しんだように、君も苦しんだかどうか見てやりたかったのさ!」
「ダイアン」
 マーサは身動きもできず、ダイアンを見つめた。理性とはうらはらな感情が突き上げてくる。彼は一人の男、かつて自分の夫であった男、そして、この人とはじめて目と目を見交わした瞬間には、体がふるえたものだった。しかし、そんなことは思い出したくもない。民族や社会習慣のちがいも考えず、ただ衝動の虜となったことを、ひと目惚れだったなどと思いたくはなかった。あれは恋じゃない。決して恋なんかじゃなかった。少なくともダイアンにとっては……そう心に叫んでみても、マーサの体はいやおうなくダイアンを感じてしまう。
「その子は……その子は君に似ているのか?」ダイアンの声がかすれた。「髪や目の色は君と同じか? 君のようにかぼそくて、君のように強情なのか?」
 マーサはふるえながら、これ以上ダイアンに触れまいと必死に理性にすがりつき、両手を胸に当てた。「そう……そうよ」マーサはやっとの思いで答えた。「あの子は、わたしに似ているわ。年のわりには背も高くて、ほっそりして、それに意志もしっかりしているわ」
「そうだろうな」ダイアンは、しゃがれた声で言った。目から敵意が失せ、悲痛の色がひろがっていく。「君にそっくりだろうとも。強情で、独立心が強く、そして、器量よしで……」
 マーサは息がつまりそうだった。ダイアンは自分の言葉に激しい感情をかきたてられたのか、苦々しくうめくような声をあげ、マーサをひしと抱きすくめた。いきなりだったので、身の避けようもなかった。
 ダイアンの口がぴたりとマーサの唇をおおい、さあこたえろとばかりにむさぼりだすと、マーサは抵抗心を失っていった。こんなに突然でなかったら、もう少し彼を警戒していたらと、マーサはわずかに残った自制心の端きれにすがりつくような思いだった。だが、まさかダイアンがこんなことをしようとは……。忘れていた感覚が、今また大きな波のうねりのようにどっと体にあふれ、マーサはその中にのまれていく。抱擁はいよいよ激しく、二人は情熱の渦中にいつしか我を忘れていた。昔愛し合ったときそのままに。彼が欲しい。体が疼くほど彼が欲しかった。彼のもとを去ったあとのあのみじめな何週間かのように……。
「マーサ」ダイアンは彼女の耳の後ろのくぼみを唇で探りながら、うめくように名を呼んだ。「あの子の父親はだれなんだ。僕には知る権利もないのか?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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