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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

情熱に気をつけて

情熱に気をつけて


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ペニー・ジョーダン(Penny Jordan)
 1946年にイギリスのランカシャーに生まれ、10代で引っ越したチェシャーに生涯暮らした。学校を卒業して銀行に勤めていた頃に夫からタイプライターを贈られ、執筆をスタート。以前から大ファンだったハーレクインに原稿を送ったところ、1作目にして編集者の目に留まり、デビューが決まったという天性の作家だった。2011年12月、がんのため65歳の若さで生涯を閉じる。晩年は病にあっても果敢に執筆を続け、同年10月に書き上げた『純愛の城』が遺作となった。

解説

ケイトは、ある結婚式で、今や社長となったジョスと再会した。16歳だったケイトは21歳の青年ジョスと出会い、恋に落ちた。光あふれる日々。切ないほどに甘い至福の思い出――それが甘美であればあるほど、あとに続く絶望は底が見えない。ある人物から彼に妻子がいると聞かされ、愛は地に堕ちたのだ。なにもかも忘れたはずだった。それなのに長い時を経て、彼と再会してからというもの、ケイトは恋しくてたまらない。彼に会いたくてたまらない。だから、必死に消そうとした。この罪深い想いも。ふたりの間に娘がいることも。

抄録

「どうやって入ったの?」
 答えは必要なかった。ケイトは開いているフランス窓を横目で見て納得した。うっかりしていた。眠ってしまうとは思わなかったのであそこを開けたままにしておいたのだった。
「あれではだれでも簡単に入れたと思うね」ジョスは庭に向かって開いたガラス戸を顎でしゃくって不機嫌に言った。
 勝手に人の家に入りこんでおいて何をぷりぷりしているのかしら?
「だれでも入れたかもしれない。でも実際に入ってきたのはあなただけ。なぜなの? ここになんの用があるというの?」
「その答えはもうわかっているはずだ。君の娘のことを……つまり、‘ぼくたち’の娘のことを話し合いにきたんだ」
 ジョスは“ぼくたちの”というところをわざと強調し、魂の底まで見通すかのような鋭い目でケイトを見つめた。そのまなざしはケイトを非難し、告発している。でもなぜ? 娘に関して彼にどんな権利があるというのか?
「それは……」ケイトは不意を突かれてたじろいだ。さりげなさを装うにはためらいの時間が長すぎた。
「どういう意味かしら?」
「きくまでもないだろう?」
 ケイトはデスク用の椅子の上で落ち着きなく体を動かした。かたくて座りにくい椅子。せめて暖炉の前のソファに座れたらもう少しリラックスできるだろうに。でもそうするにはすぐ前に立っているジョスのわきをすり抜けていかなければならない。
「ジョンの結婚式で君に会ったのは本当に信じられない偶然だった。あのあとの日曜日、いとこのメアリ・ブラダリックに食事に招待されて、たまたま君の話になって……」
 深いグレイの視線に貫かれ、不安に胸がざわめいた。危険な凝視から目をそらしたい。彼がかろうじて抑制している怒りから逃れたい。
「ソフィーはぼくの子、そうだね?」ジョスは否定を許さない口調で言った。
 いいえ、違うわ――そう言いたくて乾ききった唇をなめるが、思うように声が出ない。ケイトは青ざめたかと思うと赤くなり、当惑してジョスを見つめる以外何もできなかった。
 疲労の極にあって頭はまともに回転せず、彼の敵意にうまく対処できない。先週の金曜日、大勢のゲストの前でジョスとやり合うことにでもなったらどうしようと気が気ではなかった。でも披露宴は表面上何事もなく終わり、ソフィーが自分の子であるとジョスが認めることはあり得ないと高をくくったのが間違いだった。
 こうなると予想していたらこれほど無防備に自分をさらけ出すことはなかったろうに。
「なぜ今になって過去を引きずり出さなければならないの?」恐怖にすくみ、ケイトはことさら辛辣に挑んだ。
 ジョスは唇をかたく結び、まるで見知らぬ人でも見るような冷ややかさでケイトを見すえた。その視線を必死で支えているうちに、恐怖のせいか疲労のせいかわからないが、ケイトは突然過去に戻ったような幻想にとらえられた。唇と唇が重なり、熱く、激しく燃え上がっていく……どんなに彼を愛し、どんなに彼を求めたか……。
「過去だって? いいかい、ケイト、ぼくは今まで娘との二十年間を奪われてきたんだ」ジョスのざらざらした声が幻想を破り、ケイトを急激に現実に引き戻した。「これからの二十年まで奪われたくはない。娘の存在をぼくに隠す権利は君にはなかったはずだ」彼は乱暴に続ける。「確かに、君はぼくを必要としなかったし、君の人生にぼくのいる場所はないことをはっきりさせた。しかし……ケイト、どうかした?」血の気が引いた顔に苦悩と驚愕が浮かぶのを見て、ジョスは驚いて言葉を切った。
 ケイトは何かに取りつかれたように激しく震え始め、ジョスは反射的に手をのばしてデスクの上の華奢な手首をつかんだ。
「ケイト、いったいどうしたんだ?」
 喉の奥で小さくうめき、ケイトはそこから逃げだそうとして椅子から立ち上がった。ジョスの真意がわからない。なぜ今さら事実をねじ曲げて自分を正当化しようとするのか、なぜこれ以上私たちを傷つけようとするのか……。
 ジョスを押しのけて駆けだしたいのに体の筋肉がしびれ、硬直している。前に出ようとして脚がもつれ、ケイトはぶざまによろけてジョスに抱き取られた。
 懐かしい匂い。温かくたくましい腕。頬に触れるなめらかな絹の感触は、昔ジョスが着ていた綿のTシャツやラフなウールの手ざわりとはまったく違うけれど、肉体そのものは少しも変わっていない。かたく、弾力があって、その男っぽい匂いは危険なほど強烈に過去をよみがえらせる。自分を取り戻そうと、激情に流されまいと歯をくいしばるが、頭はますます混乱し、一瞬、意識が遠のいていくような酩酊感に襲われた。張りつめた声が自分の名を呼ぶのが聞こえる……。
 ジョスはさっとケイトを抱き上げ、暖炉のそばのソファに運んでいってそこに座らせた。「ブランデーは?」彼は尋問口調できいた。
 ケイトは首を振り、目を閉じる。「飲みたくないわ」
「だろうね。今君に必要なのは飲み物よりちゃんとした食事らしい」ジョスは無愛想に言った。「いくらなんでもそれじゃやせすぎだ」
「余計なお世話」ケイトはむっとしてジョスをにらんだ。「あなたの秘書ほどグラマーじゃないけれど、それだからといってどこかが悪いってことにはならないわ」
「そうは言ってない」彼はあっさりと言った。「ケイト、君はショックを受けて……」


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