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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・セレクト

一輪のばらを手に

一輪のばらを手に


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

25歳のライザは、妻子持ちの男にだまされてから、もう二度と恋はしないと誓って仕事に打ち込んでいる。財閥のギフォード一族の放蕩息子に言い寄られても、友人以上の関係になるつもりはなかった。ところが2人の関係をマスコミが騒ぎ立てたことから、ライザは金目当ての欲得女というレッテルを貼られてしまう。くだんのプレイボーイの叔父で、ギフォード家の家長キア・ザッカリーは、甥とライザの仲を割きにかかる。彼は財閥の若き長としての権力を発揮して甥を外国にやり、代わりにライザのことは、自らの欲望のはけ口にしようとし……。

■その早すぎる死が惜しまれたシャーロット・ラム。ハーレクインで長く愛された作家です。彼女が描くヒーローは傲慢で容赦なく女性の心を翻弄します。この作品のキアも然り。男性不信のヒロインの心を、はじめは強引に、最後は愛の力でこじ開けます。

抄録

「あのはげたかどもにぼくの写真をとられてもいいというなら、いますぐ出ていってもいいんだ」
 キアの意地悪な言葉はつぶてのように感じられた。この男、自分の写真が新聞に出るのをわたしが恐れているってこと、よくわかっているんだわ。
「もういなくなったかもしれないわ」ライザはそう言って居間の窓辺に近より、カーテンのすき間からそっと外をうかがった。
 車はまだそこにあったが、中には誰も乗っていない。もしかして、釣りのコンテストのことを確認しにパブに行っているのかしら? パブが開店するにはまだ時間が早すぎるけど、朝食をとりに行ったとか?
「いなくなってるわ。急いで!」とキアに言うと、キアはさほど急ぐふうでもなくそばに来て、物思わしげにからの車を見つめた。
「きみひとりになっても大丈夫かい?」
「大丈夫よ。ほら、いつまでもつったってないで、急ぐのよ!」
「スーツケースに荷物を詰めなくちゃ」キアはたっぷり時間があるかのように、ふらりと動きだした。
「もういまにも戻ってくるかもしれないわ」ライザはそう言って、ふと思い出した。「まだ住所を交換してなかったわね。車の修理ができたら、請求書を送ってちょうだい」
 ライザはバッグの中から名刺をとりだし、キアに渡した。その名刺は営業用で、彼女の自宅の住所は入れていない。キアはそれをじっくり眺めると、冷笑するように眉をあげた。
「ギフォード・ビル? あんなところに事務所を借りられるとは、よくよくもうかっているらしいな」
「仕事はうまくいってるわ」ライザは誇りをもって答えた。設立当時は、彼女にモデルクラブの経営ができるなんて誰も信じてくれなかった。資金を貸してくれる銀行もなかったから、自分のお金をつかうしかなかったのだ。だが、いまではどこの銀行でもあたたかく迎えられる。
「そうだろうな」キアはのんびりと言った。「それにギフォード家の人間とつきあいがあるとなればね。あのブロックのビルは彼らが数年前に建てたものだろう? ロンドンの高層ビルにまた新しい怪物をふやしたってわけだ。ガラスとコンクリートのね。反対の声もかなりあったようだが、きみは気に入っているのかい?」
「気に入ってるわよ。でも、いまは建物の好みをうんぬんしてる場合じゃないわ。さあ、出ていくの、いかないの?」
 キアは名刺をジャケットのポケットにしまうと、玄関に向かった。ライザはすぐ後ろにくっついていたので、彼が突然くるりとふりむいてスーツケースをおろしたときにはびっくりした。キアはやにわに彼女の両肩をつかみ、かがみこんで唇にキスをした。
 ライザは驚きのあまり逃げる暇もなかった。荒々しく唇をむさぼられる衝撃は、彼の胸に抱きすくめられるにおよんであっという間にやわらいだ。頭が働かず、されるがままに目をとじる。
 その快さは想像を超えており、全身から力が抜けていくようだ。頭のてっぺんから足の先まで甘美な震えが走り、それからようやくライザは恍惚境から自分を引きずりだし、彼を押しのけた。
 彼も目をとじていたらしく、見あげるとまぶたがゆっくり開いて、青くきらめく目が現れた。その目の輝きにライザは身震いした。わたしはどんな顔をしているのかしら? 体が熱っぽく、怒りと狼狽が心を揺さぶっている。わたし、どうなってしまったの? この男、わたしに何をしたの?
 ライザはやみくもにドアに手を伸ばし、くぐもった声で何事かつぶやいた。“早く出ていって”と言ったつもりだが、キアにわかったかどうか。
 わかったにせよわからなかったにせよ、キアは無言で彼女の前をすりぬけ、外のレンタカーに乗りこむと、一度もふりかえらずに走り去っていった。ライザはドアをしめ、そのままそこに寄りかかった。足がへなへなとして、いまにも倒れそうだ。体は激しく震えている。
 キスひとつにこんなに心をかき乱されるのは久しぶりのことだ。もう何年になるかしら、と心につぶやいて、思い出すまいと目をとじる。あのときはひどく傷ついて、若さゆえになすすべも知らなかった。ようやく立ち直ったときには、もう二度とあんな目にはあうまいと心に誓ったものだ。危険を避けて通れば傷つくこともないのだからと、男性を選ぶ目も慎重になった。好ましくなさそうな相手とはつきあわないようにしたが、それと同時に好きな相手にさえかたくなになってしまった。キア・ザッカリーのようなタイプは、もしパーティなどで知りあったとしたら本能的に避けていたはずだ。
 彼が危険だということは、最初に顔を合わせた時点でわかっていた。あの瞬間から火花が散り、ライザは自意識過剰になっていた。昔のことを思うと、もうあんなことには耐えられるはずがないと自覚される。最初のうちはすばらしかった。恋が始まったばかりのころは……。頭がおかしくなったみたいに地に足がつかず、ふわふわとして楽しかった。でも、どんなに高いところをさまよっていても、最後には必ずどん底に落ちて傷つくのだ。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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