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キスは闇に紛れて【ハーレクイン・セレクト版】

キスは闇に紛れて【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

エマは、父親の親友の息子ザリオスと6年ぶりに再会する。彼は10歳年上のハンサムな企業経営者だが、悪名高いプレイボーイでもある。惹かれてはいけない人――そうわかっていながら、彼の突然のキスには抗えなかった。ずっと抑えていた想いが溢れ、エマはすべてを捧げてしまう。彼との再会からほどなくして、むごい悲劇がエマを襲った。両親の事故死、そして兄がギャンブルで負った多額の借金が、いっきにエマにのしかかってきたのだ。それだけではない。彼女は、ザリオスと元恋人との復縁を新聞で知る。茫然自失のなか、エマは小さな命を宿していることに気づく。

■イタリア系富豪のロマンスを得意とする人気作家C・マリネッリ。富と美貌と権力を併せ持つヒーローの洒脱な会話と、情熱的なラブシーンは、読者をいっきにロマンスの世界に引き込みます。
*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「|ばかやろう《ストウーピド》!」その感情は怒りを超えていた。大きく息を吸い、大量の海水を吐きだしながら、ザリオスはまずイタリア語で、続いて英語で、エマの愚行を罵った。「こんな時刻にひとりで泳ぐなんてどうかしている」
 エマはショックと恐怖にとらわれ、幸運に感謝することも、生きている喜びを噛みしめることも忘れていた。無分別な行為のせいで、あっさり命を落としていたかもしれないのだ。
「まあまあ、そのへんで」サーファーにとっては初めてのことではないらしい。彼自身も息は荒いが、信じられないほど落ち着いている。「過ちを犯したことは彼女もわかっているようだし。潮の流れに身を任せたのは正解だった。逆らって泳ぐのは無理だからね」
 誰かが救助小屋から毛布を出してきて、下着姿で震えるエマの肩にかけた。かびくさい毛布のぬくもりが彼女にはありがたかった。毛布にくるまり、ようやく呼吸が整ってくると、細胞の隅々に酸素がしみ渡っていく。ひと息ひと息が冷えたレモネードのように新鮮だった。
 周囲はいつの間にか人だかりになっていた。ブロンズ色に日焼けした、見るからにサーファーらしき男たちや、犬の散歩中とおぼしき年配の女性もいる。
「水はかなり飲んだのかい?」サーファーがきいた。
「いいえ、疲れただけ。もう平気」
「医者を呼ぼうか?」
 エマは首を横に振った。「今はとにかく家に帰りたいわ」
 遅ればせながらザリオスがサーファーに礼を言うと、エマも彼にならった。ザリオスはやれやれとかぶりを振り、彼女の肩を抱いて、岩の道を戻り始めた。年配の女性があとを追ってきて、エマの服を渡してくれたときには、ザリオスは礼の言葉を述べながら、笑みさえ浮かべていた。
「母には……言わないでね」エマはまだ歯の根が合わず、それだけ言うのがやっとだった。「せっかくの週末を台なしにしたくないから」
「もう少しで完全にそうなる……」ザリオスは言いかけてやめた。あえて言葉にする必要はない。「まだ寝ているといいんだが」
 しかし、早くも庭ではすでにテントの片づけが始まっていた。リディアが甲高い声で指示を飛ばし、朝食の前にすべてを終えようと躍起になっている。
 ザリオスは人目を避けて進み、庭の隅にあるサマーハウスのドアを開けた。「ここを使ってもいいかな?」
「ええ」エマは弱々しくうなずいた。サマーハウスは、彼女の母が読書をするときや父がひとりになりたいときに使っている、こぢんまりした建物だ。
 ザリオスは中に入り、エマをソファベッドに座らせた。それからタオルを探してきて、かびくさい毛布をはがし、柔らかなタオルで包んだ。
「体をふいて、服を着てから家に戻ろう。そうすれば、たぶん気づかれずにすむ」
「黙っていてくれるの?」
「ただし、条件がある」ザリオスはエマの両腕をつかみ、真剣な口調で告げた。「二度とああいうばかなまねはしないこと」
「約束するわ」
「まったく、君ときたら……」またしても怒りがこみあげ、ザリオスは彼女をにらみつけた。「いったい、何を考えていたんだ?」彼の黒髪は今も濡れて青みを帯び、広い肩に水滴を落としていた。
「わからないわ」エマは首を横に振った。考えても答えは見つからなかった。海辺で育ち、海で泳ぐ怖さは知っているはずなのに。「ただ、頭をすっきりさせたくて、不安を消し去りたくて……」
「不安?」ザリオスが心配そうな顔をした。
 できるなら彼に話してしまいたかったが、エマは開きかけた口を閉じ、かぶりを振った。ジェイクのギャンブル癖を巡るおぞましい状況を直視する気になれない。まして人に話すなんて無理だ。「言えないわ」
「そんなことはない」
「いいえ、だめなの」
「わかった。今は言わなくていい」ザリオスはタオルの上からエマの背中をさすり、彼女の体を乾かした。続いてその手が脚へ下りると、床に細かい砂がぱらぱらと落ちた。「服を着て、庭に戻ろう」
 そう言った瞬間、ザリオスは鞭で打たれたように、事態の本当の意味に気づいた。彼はタオルを動かす手を止め、彼女を凝視した。
「死んでいたかもしれないんだぞ!」
 ザリオスはエマを乱暴に引き寄せるなり、彼女が今もそこにいることを確かめるかのように、力強く抱きしめた。
 なんというすばらしいぬくもりかしら。ザリオスは本気で私を叱り、案じてくれている。彼の鼓動が聞こえ、彼のぬくもりが体の奥深くまでしみこんでいく。エマはしばらくザリオスの胸に抱かれていた。興奮のせいか、あるいは生きていることの喜びを知った高揚感のせいか、彼がキスをしてきたときも、ごく自然に受け入れた。
 これほど激しく、巧みで、すてきなキスは、生まれて初めて。エマはその心地よさに酔いしれた。ザリオスの唇がこんなにも強く私の唇を求めている。彼の体に包まれて、凍えた体にぬくもりが広がっていくのがわかる。
 ザリオスのキスは薬のように、エマの心の傷をいやした。先ほどまでの恐怖が嘘のように消えていく。彼の舌がもたらす優しい愛撫とぴったり押しつけられた筋肉質の体は、エマにすべてを忘れさせ、彼女の欲望に火をともした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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