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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル

買われた令嬢

買われた令嬢


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆1
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著者プロフィール

 ジュリエット・ランドン(Juliet Landon)
 イギリス北部の古代の面影を残す村に、引退した科学者の夫とともに住む。美術や歴史に対する興味が旺盛で、豊かな想像力が生きると思い、ヒストリカルの小説を書き始めた。作品を執筆するために調べ物をするのはとても楽しいと語り、特に中世初期がお気に入りの時代だという。刺繍について豊富な知識と技術を身につけ、その腕前はプロとして講師を務めるほど。

解説

 その日、放蕩者で鳴らすチェイス・ボストンが訪ねてきて息子が彼に莫大な借金を負った顛末を淡々と説明するのを聞き、スティーブン・チェスターは顔面蒼白になった。娘のカテリーナは十七歳で歌姫として華々しくデビューし求婚が殺到したものの、二度も土壇場で婚約を破棄。結婚はしたくないと言う。おまけに息子までこのていたらくとは。頭を抱えるスティーブンに、チェイスは話を持ちかけた。「娘さんを妻に迎えたい。代わりに借金は帳消しにしましょう」チェイスが優しくカテリーナに結婚したくない理由を尋ねると、彼女は突然、絶望の嗚咽をもらして走り去った。結婚恐怖症の歌姫か。おもしろいことになってきたぞ。
 ★HS−316『放蕩貴族の愛人』で美しい歌声を披露し観客を沸かせたカテリーナ。その奔放なる情熱を受け止めるには、放蕩者で有名なチェイスなら不足はなさそうですが……。★

抄録

「いったいあの人はどうなってるの?」怒りに顔を歪《ゆが》めてカテリーナは言った。「頭がおかしいのかしら」叫びだしたい気持ちを抑えて彼女は足早に進み、ほとんど走るようにして石の階段を音もたてずに下りると、家の横手の高い壁のほうへ向かった。「戻って!」彼女は振り返って言った。「お願い。ひとりになりたいの」声が震えていた。「ひとりにして」
 カテリーナはさらに足どりを速めた。チェイスの決然とした足音は、彼女の言葉を無視していることを物語っていた。壁の半ば開いたドアが見えると、彼女はその外へ滑り出てドアを閉めるつもりだったが、彼の手と脚に押しとどめられた。
「帰って!」カテリーナはかすれた声で叫んだ。そして、ローズマリーとセージの咲いている区画のあいだの砂利道を走りだした。華奢《きゃしゃ》な作りのサテンの靴に砂利が食いこみ、暗闇《くらやみ》の中、りんごの木の枝に髪が引っかかった。よろめきながらフェンネルとパセリの茂みのあいだを抜け、彼女は菜園のどこかにひとりになれる場所を探そうとした。
 ここ数日の不安と怒りが堰《せき》を切ってあふれだすのをどうしようもなかった。いつもなら、今ごろはまだ歌唱を終えた幸福感に包まれて歓談しているのだが、今回はなにもかもが違っていた。今やカテリーナの自由はそれを奪おうとする男のせいで、きわめて過酷な状況の中、これまで彼女が経験したことのない心境に追いつめられているのだ。こういうパーティで歌うことは常に、カテリーナを夢見心地に誘《いざな》い、創造的な衝動を解放してくれた。彼女を癒し、発散させる晴れの場だったのに、今夜は違った意味で非現実的だった。北部出身の彼女の中にある現実主義が日常生活で感情をあらわにしすぎることに眉をひそめさせた。その一方で、本来の感性と芸術志向は本人の意思にかかわらず、このリサイタルの前後やあいだの出来事に著しく影響され、抑えがきかなくなった感情が、体より先を走っていた。
 トピアリー・ガーデンの前の頑丈な門が、カテリーナの逃走を阻んだ。暗闇に紛れて、すぐ前に来るまで気づかなかったのだ。掛け金を動かすことができずにいるうちに、チェイスの大きな手がカテリーナの手首をそっとつかんで、門から引き離し、敵対と隠遁《いんとん》、過去と未来のあいだにその大きな体を滑りこませた。彼女自身しか存在できないはずの空間に。さっと彼のほうに向き直った彼女の肩に門の上部が食いこみ、彼女はつかまれた手を引きもどしつつ、もう一方の手のこぶしで彼の胸を激しく叩いたが、その手もまたすばやくつかまれてしまった。
 チェイスがカテリーナの両手を片手で持ち直すと、彼女の怒りの声はさっきの命令口調も失《う》せ、ただひとりにしてくれと懇願するかすれたつぶやきに変わった。それでも無視されると、彼女は頭を垂れて自分のこぶしに押しあてたが、依然チェイスは黙ったままで口論をする機会さえ与えてくれない。彼女の唇と頬は自分のこぶしだけでなく彼のこぶしにも触れていて、ぼんやりとそのぬくもりと肌触りを感じていた。息を吸うたびにかすかな男性の香りがする。チェイスの手はしっかりと彼女の手を握り、門に押しつけられた彼女の腿と彼の腿はぴったり重なっている。彼の手の甲に触れている唇をそっと動かすと、頭がくらくらした。舌先で産毛を撫《な》で、親指の皺《しわ》や柔らかな指の腹を探る。彼女は息を震わせ、ひそかで気ままなふるまいへと歩みだしていった。
 夢見心地のカテリーナをチェイスの手が引き寄せて、より深い経験へと導く。彼が両手を下ろすと自然に彼女の両手が上がって、自由に彼の耳を髪をもてあそんだ。体は乾いた火口に火がつくように、この数日間の抑制のすべてを断ちきり、弓なりにのけぞって全身で両手が探りあてるものを味わった。なにも考えず、彼女は真っ逆さまに火炎の中に飛びこんで、唇の上に躍るチェイスの唇の甘美な圧力に、深い忘我の淵《ふち》へと引きずりこまれた。
 カテリーナの体に火がついたのを見てとったチェイスは、従順になったその体を抱きしめた。彼女の奔放な反応に彼の心も舞いあがり、息もつけないような熱いキスをする。

*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

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