和書>小説・ノンフィクション>ライトノベル>アクション
著者プロフィール
大迫 純一(おおさこ じゅんいち)
アトラク俳優やマンガ家といった偏った職歴を経て、1996年、小説家となる。『鉄刃サザン』(HJ)や『スペクター』(コナミ)など、熱い漢の物語を得意とする、人呼んで「科学と論理と拳骨の男」。親指シフター。ポリフォニカ・シリーズでは、さらなる新展開に向けて鋭意準備中。
アトラク俳優やマンガ家といった偏った職歴を経て、1996年、小説家となる。『鉄刃サザン』(HJ)や『スペクター』(コナミ)など、熱い漢の物語を得意とする、人呼んで「科学と論理と拳骨の男」。親指シフター。ポリフォニカ・シリーズでは、さらなる新展開に向けて鋭意準備中。
解説
どんな条件下でも生存可能な新人類を造り上げる極秘プロジェクト「アザエル計画」。だが生み出されたのは異形の生物「ゾーン」だった。そんななか、バトル・ホイールレースのデビュー戦で勝利を飾った黒川丈は、祝賀会場で「ゾーン」に襲われ行方不明になる。そしてそれは、苛烈な戦いのほんの始まりにすぎなかった……。圧倒的なスピードと迫力の超絶バトル。本物のヒーローがここにいる!
目次
第一章 ストラグル
第二章 プレデター
第三章 ハンター
第四章 エヴォリューション
第五章 アヴェンジャー
終章 サクセション
第二章 プレデター
第三章 ハンター
第四章 エヴォリューション
第五章 アヴェンジャー
終章 サクセション
抄録
闘いとは、拳を叩きつけることではない。
強さとは、負けないことではない。
勝利とは、敵を倒すことではない。
これは、そういう物語である。
第一章 ストラグル
1
オイル混じりの金属の、焼ける匂いが鼻につく。
丈はヘルメットのシールドを下ろして目を閉じた。
マシンのアイドリングが、腹の底に響いた。
マツド・サーキットの夏は暑い。一昨年に完成した第二サーキットは、舗装に使用されている新素材の輻射熱で、ゆうに二度は気温が高くなる。従来の素材に戻そうという動きもあるそうだが、結局のところ実現する気配はない。
どうでもいいじゃねえか、と黒川丈は思う。
バトルってぇのは、いつだって熱いもんだ。でなきゃあ、誰が命なんぞ張るもんか。
目を閉じたまま、タンクを撫でる。
分厚い金属繊維の手袋を通して、硬さとともにタンクにこもった熱が伝わってくる。
エンジンの振動も。
丈の唇が、ゆるむ。
待て。
まてまて。
もうすぐ走らせてやるからよ。
そのまま左手を前方へ滑らせ、タンク前端の補助グリップを掴む。
瞼を開く。
どんぴしゃ、のタイミングで、前方のシグナルが緑に点灯した。
モノサイクルは、決して危険な乗物ではない。公道での走行が禁じられているのは、単に道路交通法が、突然変異的に現れたこの新しいマシンに対応しきれていない為だ。
とは言え、たしかに不安定そうな外観ではある。モノサイクルが発表された頃は、その特異な外観を関係各誌が面白おかしく表現したものだ。
例えばバイクのぶつ切り、
例えばエンジン付き一輪車、
例えばパンダの曲芸……などなど。
中でも秀逸だったのは、ドーナツとピッツァの組み合わせだ。テーブルに立てたキング・サイズのドーナツに、ミニ・サイズのピッツァを二切れ両側から被せたような恰好だというのである。
ドーナツがタイヤで、ピッツァがカウルだ。
以後、一部のファンがモノサイクルを指して言う“P・O・D”という愛称の、これがルーツだと言われている。すなわち、「ピッツァ・オン・ドーナツ」だ。
ライダーは、一つきりのタイヤに跨がる恰好になる。
ホイールのサイズは大型4WD車のものと、ほぼ同じ。これはホイールの内部にエンジン以外にも平衡装置を内蔵している為で、これのおかげでタイヤとシートの位置関係が固定され、ライダーはタイヤの回転に振り落とされることなく跨がることが出来るのだ。
タイヤの四分の一ほどを覆い隠すカウルの中には、タイヤの上に載る配置でタンクとシートがある。
メーターや点火スイッチはタンク上面にマウントされている。その向こうの補助グリップは、ちょっとした安定をとる為に片手で掴むもので、運転そのものには関係ない。ブレーキとアクセル、シフトとクラッチは左右のフット・レストに設置されている。どちらも両足の爪先と踵で操作するのだ。
パンダの曲芸とは言い過ぎにしても、それはまさにオートバイの変種であり、自走する一輪車そのものだ。
それでもモノサイクルは、決して危険な乗物ではない。
走るだけなら特別な技能は全く必要なく、五歳の子供にだって乗れるだろう。サイズが合えば、の話だが。
危険なのは乗物の方ではない。
ゲームの方なのだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
強さとは、負けないことではない。
勝利とは、敵を倒すことではない。
これは、そういう物語である。
第一章 ストラグル
1
オイル混じりの金属の、焼ける匂いが鼻につく。
丈はヘルメットのシールドを下ろして目を閉じた。
マシンのアイドリングが、腹の底に響いた。
マツド・サーキットの夏は暑い。一昨年に完成した第二サーキットは、舗装に使用されている新素材の輻射熱で、ゆうに二度は気温が高くなる。従来の素材に戻そうという動きもあるそうだが、結局のところ実現する気配はない。
どうでもいいじゃねえか、と黒川丈は思う。
バトルってぇのは、いつだって熱いもんだ。でなきゃあ、誰が命なんぞ張るもんか。
目を閉じたまま、タンクを撫でる。
分厚い金属繊維の手袋を通して、硬さとともにタンクにこもった熱が伝わってくる。
エンジンの振動も。
丈の唇が、ゆるむ。
待て。
まてまて。
もうすぐ走らせてやるからよ。
そのまま左手を前方へ滑らせ、タンク前端の補助グリップを掴む。
瞼を開く。
どんぴしゃ、のタイミングで、前方のシグナルが緑に点灯した。
モノサイクルは、決して危険な乗物ではない。公道での走行が禁じられているのは、単に道路交通法が、突然変異的に現れたこの新しいマシンに対応しきれていない為だ。
とは言え、たしかに不安定そうな外観ではある。モノサイクルが発表された頃は、その特異な外観を関係各誌が面白おかしく表現したものだ。
例えばバイクのぶつ切り、
例えばエンジン付き一輪車、
例えばパンダの曲芸……などなど。
中でも秀逸だったのは、ドーナツとピッツァの組み合わせだ。テーブルに立てたキング・サイズのドーナツに、ミニ・サイズのピッツァを二切れ両側から被せたような恰好だというのである。
ドーナツがタイヤで、ピッツァがカウルだ。
以後、一部のファンがモノサイクルを指して言う“P・O・D”という愛称の、これがルーツだと言われている。すなわち、「ピッツァ・オン・ドーナツ」だ。
ライダーは、一つきりのタイヤに跨がる恰好になる。
ホイールのサイズは大型4WD車のものと、ほぼ同じ。これはホイールの内部にエンジン以外にも平衡装置を内蔵している為で、これのおかげでタイヤとシートの位置関係が固定され、ライダーはタイヤの回転に振り落とされることなく跨がることが出来るのだ。
タイヤの四分の一ほどを覆い隠すカウルの中には、タイヤの上に載る配置でタンクとシートがある。
メーターや点火スイッチはタンク上面にマウントされている。その向こうの補助グリップは、ちょっとした安定をとる為に片手で掴むもので、運転そのものには関係ない。ブレーキとアクセル、シフトとクラッチは左右のフット・レストに設置されている。どちらも両足の爪先と踵で操作するのだ。
パンダの曲芸とは言い過ぎにしても、それはまさにオートバイの変種であり、自走する一輪車そのものだ。
それでもモノサイクルは、決して危険な乗物ではない。
走るだけなら特別な技能は全く必要なく、五歳の子供にだって乗れるだろう。サイズが合えば、の話だが。
危険なのは乗物の方ではない。
ゲームの方なのだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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