マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・セレクト

聖女の炎【ハーレクイン・セレクト版】

聖女の炎【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 ヴァイオレット・ウィンズピア(Violet Winspear)
 ロマンスの草創期に活躍した英国人作家。第二次大戦中、十四歳の頃から労働を強いられ、苦しい生活の中から“現実が厳しければ厳しいほど人は美しい夢を見る”という確信を得て、ロマンス小説を書き始める。三十二歳で作家デビューを果たし、三十余年の作家人生で約七十作を上梓。生涯独身を通し、一九九八年に永眠するも、ロマンスの王道を貫く作風が今もファンに支持されている。

解説

“ただちに来てくれ。君の妹は助けを必要としている”修道院へ入る直前、敬虔なクリスチャンの看護師ドミニクは、妹の嫁ぎ先であるイタリアのロマノス家から火急の知らせを受けた。美しく華やかで、陽気なあの子にいったいなにがあったの?サン・サビーナに到着し、船のタラップを下りた瞬間、高級車の脇に立ち、彼女を尊大に眺めまわしている男が目に入った。あの人が妹の夫の兄で、ロマノス家の家長ドン・プレシディオ……。このときドミニクはまだ知るよしもなかった。一生を神に捧げるという誓いが、プレシディオによって、根底から揺さぶられることになろうとは。

■容姿に恵まれず、人々のために尽くすことに生き甲斐を見いだし、修道院に入る決意をしていたヒロイン。けれど傲慢で皮肉屋のヒーローと出会って、燃えるような愛に目覚め……。稀代のストーリーテラー、V・ウィンズピアの大ヒット作をお贈りします。
*本書は、ハーレクイン・イマージュから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

「なにかご用?」緊張を押し隠し、英語で尋ねた。
「ああ、たぶん」
「どうぞおかまいなく!」こうして目の前で見ると、男の肌はいっそう浅黒く、背も高く見える。ドミニクは威圧感を覚えて何歩かあとずさった。「私はロマノス家の親類よ。あなたのようなタイプをドン・プレシディオはどう思うかしら」
「僕のようなタイプ……それはどういう意味だ?」男はドミニクの顔のあらゆる部分に視線を這わせ、梟のような眼鏡の奥をのぞきこんだ。
「狼よ」熱いまなざしに気づき、ドミニクは顔を赤らめた。「まるで獲物のように女を追いかけまわして。財布の中身が目当てなら、期待はずれよ。さあ、私にかまわないで。もうじきロマノス家の運転手が迎えに来るの。あなただって面倒なことになるのはいやでしょう?」
「運転手が現れて動揺するような男に見えるか?」男の口元に薄笑いが浮かんだ。「他人の命令は受けない。とくに君のような女性からは」
「私のような女性?」ドミニクは今にも顔から火が出そうな気がした。なにを言おうとしているのかは聞くまでもない。地味で、女としての魅力とは無縁なのは、自分がいちばんよくわかっている。この男がどうして近寄ってきたのかは知らないけれど、デートに誘う気でないのは間違いない。
「君は男というものがまるでわかっていない。強いて言えば、人生というものもね」
「初対面で性格判断までしてくれるとは、ありがたいことだわ!」
「どういたしまして、シニョリーナ」黒い眉が皮肉っぽくつりあがった。「イギリスの女性は実に興味深い。我々の国に来て、サンオイルを塗りたくって海岸に寝そべっている者がいるかと思えば、いまだにヴィクトリア女王に支配されているような言動で驚かせてくれる者もいる」
「あなたのほうこそ、偉そうに!」男性をあしらうのはもちろん得意ではない。とくにこの男にはまごつくばかりだ。「何様だと思っているの?」
「君の意見によれば、いたいけな女性を獲物にする狼らしいが」
「そのとおりよ」きっぱりと言い切ったものの、男はおもしろがるような不敵な笑みを浮かべている。
「女性というのはどうも物事を極端に考える癖があるようだ。そう思わないか?」
「そうかもしれないわね」ドミニクはスーツケースの取っ手を握り締め、男から離れはじめた。ロマノス家の運転手はなにをしているの? 見た目も言うことも、このイタリア人のすべてが気にさわった。
「ミス・デイヴィス、どうやら冗談はこれくらいにしたほうがよさそうだ」
 ドミニクは思わずつまずきそうになった。深呼吸をして、ゆっくりと振り返り、男の顔を改めて見た。尊大そうな鼻や口、真ん中が割れた力強い顎。洗練されたグレーのスーツとワイン色のシャツ。きちんと締められたパールグレーのネクタイ。今さらながら気づいたことだが、彼の英語は完璧だった。ときおり聞き取れるイタリア語のアクセントが、エキゾチックな印象を強めている。
「あなたはだれなの?」答えを予想して気おくれを感じながら、ドミニクは尋ねた。
「ドン・プレシディオ・ロマノスだ」横柄な口ぶりで、男は言った。「キャンディスの姉さんだね。あまり似ていないな。瞳の色も違う」
「確かに似ていないけれど、私は間違いなくキャンディスの姉です」同じことを何度言ったか知れない。そして、心の中ではいつも同じことを思う。キャンディスはあんなに美人なのに、どうして私はこんなに地味で平凡なの? 「そんなことより、シニョーレ、妹の容態はどうなんです?」
「ずいぶんうろたえているところを見ると、妹思いの姉のようだな」
「もちろんよ。いったいなにがあったんですか?」
「とにかく、車へ。詳しい事情は、ヴィラ・ドロリータに向かう途中で説明しよう」
「どうしてキャンディスは病院ではなく屋敷にいるんです? 緊急を要する状態なら――」
「さあ」プレシディオは片手でスーツケースを取りあげ、もう一方の手でドミニクの肘をつかんだ。「車は角を曲がったところにとめてある」
 うむを言わせず導かれた先には、まさにスピードを出すために作られたような車があった。外装はまるで鎧のようだ。座席は低いものの、座り心地は快適で、かすかに葉巻のにおいがした。プレシディオの着ている上等なスーツにふさわしい車で、自信に満ちたライフスタイルを物語っている。
 血筋ということもあるのだろうが、この世界には生まれつき気品を漂わせている者が少なからずいる。彼を、いたいけな女性を獲物にする狼にたとえた自分が愚かに思えた。
 二人を乗せた車は港町をあとにし、リボンのように曲がりくねる坂道に入った。岩肌のごつごつした山が、青空に向かってそびえている。
 サン・サビーナは絵のように美しい場所よ、というのがキャンディスのお決まりの表現だったが、初めて訪れるドミニクの目には、ただ美しいだけではない別の面も映った。とくにこのあたりは自然の険しさが目立ち、道の片側は急な斜面になって、海に突き出す大きな岩にしきりに波が打ち寄せている。こんな状況でなければ、ドラマチックな光景に目を奪われているところだが、今は妹のことが気がかりで、そんな余裕はなかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。