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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル

知らぬ間の伯爵夫人

知らぬ間の伯爵夫人


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ルイーズ・アレン(Louise Allen)
 物心ついたときから歴史に深い興味を抱いていて、八歳のときには三ページの歴史小説を書いた。地理と考古学の学位を持ち、特定の風景や場所から、小説を書くインスピレーションを得ることが多いという。とくにヴェネチアやブルゴーニュ、ギリシアの島々からはこれまでに多くのアイデアが生まれた。作品のモデルにもなる最愛の夫とベッドフォードシャーに在住している。

解説

藁にもすがる思いで愛なき結婚を受け入れた。彼が伯爵だとは夢にも思わずに。

両親亡きあと悪辣な弟に騙され、無一文で家を出たケイトは真冬の荒れ果てた避難小屋で危うく命を落としかけ、偶然居合わせた謎めいた旅の紳士に助けられた。グラント・リバーズと名乗るその陰のある美しい男性は、ケイトが婉曲に事情を話すと問題解決としての便宜結婚を申し出た。出会ったばかりの薄汚れた娘に求婚するなんて、この人はいったい……。だが他に生きる術もなく、彼女は朦朧としながら申し出を受け入れた。通りすがりの農民を証人に結婚したあと、新居に案内されたケイトは豪壮な屋敷と使用人の数に驚き、慌てふためいた。「あなたは誰なの?」グラントは平然と答えた。「第4代アランデール伯爵だ」

■姉を破滅に導く弟から隠れている状況で公人となってしまったことに狼狽しながら、女主人として健気に奮闘するケイト。しかし、生きる喜びを教えてくれた夫へのかなわぬ愛を自覚した矢先に破滅の危機が訪れて……。甘く儚い愛の夢、〈不肖の四貴族〉第2弾です。

抄録

「ドクター――」
「グラントだ」
「とても手際がいいのね」痛みが引き、先ほどよりも楽になった。おかげで、彼に言われたとおりリラックスしてきた。
「少しのあいだ軍隊にいたんだ。当番兵がいても、自分で身のまわりのことができるようになるものさ。さてと」彼の視線を感じて、ケイトはまたしても緊張する。「もう少し楽な格好に着替えて、この豪華なベッドに横になるんだ」外はだんだんと暗くなり、彼の表情を読むことはできなかった。「ケイト、申し訳ないがぼくは男で、しかも赤の他人だ。それでもきみをネグリジェに着替えさせて、診察しなければならない」きびきびとした口調は苛立っているようにも聞こえる。「きみは患者だ。今は恥じらいも慎みも捨てる必要がある」
 赤ちゃんのことを考えるのよ。ケイトは自分にそう言い聞かせた。グラント・リバーズは守護天使だと思って。クリスマスの天使。性別がなくて、私情を差し挟むこともないと。今は彼を信じるしかないのだから。
「わかったわ」
 グラントは女性の服の構造を知り尽くしているかのようにケイトの服を脱がせた。ということは、少なくとも性別はあるわ。恥じらいを感じる暇もなく、ケイトはたちまち汚れてしわだらけのドレスとその下のシュミーズを脱がされた。かと思いきや、少しでも温めるために暖炉のそばに置かれていたネグリジェを着せられ、ベッドに座らされた。それだけでだいぶ楽になり、安堵のため息をもらしたのもつかの間、ネグリジェが腰までたくしあげられていることに気づく。
「とりあえずこれで我慢してくれ」グラントは厚地の外套をケイトにかけた。「次は明かりと、温かい飲み物だ。横になって、体を温めるんだ」
 ケイトは目を細め、グラントが火を大きくして、手桶にくんだ水を運んできて暖炉の前に置くのを眺めた。続いて小さなランタンに火を灯してから、マグカップで水をすくい、そこに炎のそばの煉瓦の上に置いてあったフラスコ瓶から何かを注ぐと、手桶の水で手を洗った。一連の動作はすばやく、しかも円滑だった。おそらく“効率的”というのが正しいだろう。時間を無駄にすることなく物ごとを片づけたがっている。その一方で、赤ん坊の予定に合わせて待たざるをえない。グラントの手際のよさも、どういうわけか苛立ちのにじみ出た態度も、ケイトにとっては心強く感じられた。この男性のありのままの姿を見ているような気がした。
「そのランタンはどこから持ってきたの?」
「鞍袋に入れて持ち運んでいる。湯を沸かすためのものも見つけよう。準備が整うまでには、まだ必要なものがたくさんある。幸運にも前の住人は整理整頓が苦手と見えて、外にいろいろ埋まっていそうながらくたの山がある」
 細々とした作業を上手にこなす姿は、本来であれば男らしさを感じさせないものだが、グラントの場合は単に実務能力に秀でているように見えるだけだった。ケイトはその広い背中、細い腰、なめらかな動き、ぴったりとしたスエード革のズボンをじっと見つめた。生きているかぎり、もう二度と男性に対してほんのわずかでも性的な欲求を感じることはないと思っていた。けれども、感じることがあるとすれば――あくまで仮の話だが――グラント・リバーズにはその欲求をかき立てるだけの力はじゅうぶんある。彼は間違いなくとても……。「ああっ!」
「ちょっと待て、すぐにそっちへ行く」グラントはいくつも容器を抱えながら戻ってきて、水を跳ね飛ばしながら床に置くと、両手を火にかざした。「また手が冷たくなってしまった」
 それがなんの関係があるの……? グラントがランタンを手に足もとにひざまずき、彼女の膝にかけられた外套の下に潜りこむなり、ケイトは憤慨して息を吸いこんだ。
「人間には驚くほどの適応能力があるものね」
 ほとんど気が抜けないまま、五分ほどしてケイトはようやく口を開いた。驚いたことに、きわめて冷静な口調で、自分で思っていたほど感情的ではない。
 すると、服装は乱れているが落ち着きはらったグラントが姿を現した。次の瞬間、豊かな暗褐色の髪を目から振りはらいながら腰を下ろす。彼が笑みを浮かべると、それまでケイトがありきたりなハンサムだと思っていた顔が驚くほど魅力的になった。「出産にはある種の親密な行為がつきものだ」グラントは言った。「だが、今のところ何もかも順調に進んでいる」
 そして真顔に戻り、ベストから懐中時計を取り出して見つめた。
「あとどれくらいかかるの?」ケイトはできるだけ詰問口調にならないように努めたが、うまくいったとは思えなかった。
「数時間といったところだろう。初産は長引くことが多い」グラントは暖炉のところへ行くと、また別の容器に入った水で手を洗い、取っ手の取れた使い古しのやかんにフラスコ瓶から何かを注いだ。
「数時間?」
「これを飲むんだ」
 グラントはやかんの中身を角製のカップに入れて差し出した。どうやらそのカップも鞍袋から手品のように取り出したもののようだった。
「すぐに食べ物も持ってくる。最後に食べたのはいつだ?」
 すぐには答えられなかった。「昨日。宿で朝食をとったわ」
 グラントは何も答えなかったが、彼がパンとチーズで簡単なサンドイッチを作って持ってくると、ケイトは自分のぶんしかないことに気づいた。「あなたは何を食べるの? あなたが持っている食べ物はこれだけなんでしょう?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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