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天使が去ったあの日から

天使が去ったあの日から


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

あの日旅立った天使が、ふたりを再び結び合わせた。

ヘレナはロンドンの高級ホテルで、ある男性を待ち伏せしていた。レオ・ヴィンチェンティ――大成功を収めたイタリア人富豪で、7年前、父親に仲を引き裂かれた初めての恋の相手。その彼が父の会社の乗っ取りを企んでいると知り、なんとか思いとどまるよう説得に来たのだ。だが再会したレオから逆に、予想外の取り引きを提案される。「僕の顧客の令嬢の前で恋人役を演じてくれるなら考えよう」愛の一片もない言葉に打ちのめされ、ヘレナは心の中で叫んだ。レオに伝えてしまいたい──あなたには息子がいたのよ、と。

■期待の新人作家、アンジェラ・ビッセルのデビュー作をお届けします。運命に翻弄されながらも、懸命に真実の愛を求めるヒロインの姿が印象に残る本作。ドラマチックな展開をお楽しみください。

抄録

 ヘレナは背後から彼に近づき、深呼吸をした。「レオ」
 レオが振り返り、二人の視線がぶつかった。その瞬間、彼は問いかけるように眉をつりあげたまま顔をこわばらせた。それからポケットに入れていた両手を出し、眉を元に戻す。
「いったいどういうことだ……?」
 低くうめくように発せられたその言葉を聞き、ヘレナの腕からうなじに鳥肌が立った。
 やはり私に気づいていたんだわ。
 ヘレナは頭をそらした。五センチヒールのパンプスをはいているおかげで身長は百七十五センチ近くになるのに、彼と目を合わせるには顎をぐっと上げる必要がある。
 それにしても、なんという瞳だろう。
 暗く、厳しく、ぎらついた瞳。磨きあげられた黒曜石のようで、何を考えているのかまったくわからない。この真夜中の闇みたいな瞳を見ると頭がぼんやりしてしまうことを、どうして私は忘れていたのかしら?
 集中して。
「話がしたいの」ヘレナは言った。
 レオの顎の筋肉がぴくりと動いた。「君は電話を持っていないのか?」
「私が電話をかけたら出てくれたの?」
 ヘレナの挑発にレオは笑顔で応えた。唇の端を上げただけの作り笑いを笑みと呼べるならば。「出ないだろうな。だが、どちらにせよ、僕たちには話すことなど何もない」
 エレベーターが到着し、レオの背後でドアが開いた。
「時間を無駄にさせて悪かった」彼はそう言うと背を向け、エレベーターに乗りこんだ。
 ヘレナはためらったが、すぐに勇気をふるい起こしてあとを追った。「あなたは七年の沈黙を破って現れ、私の父の会社を手に入れようとしている。話すことが何もないとは思えないわ」
「エレベーターを降りろ、ヘレナ」
 穏やかな警告に、ヘレナの頭皮がちくちくした。それとも、あの独特なバリトンの声音で名前を呼ばれたせいだろうか?
 エレベーターのドアが閉まり、二人は小さな空間に閉じこめられた。
 ヘレナは足を踏ん張った。「いやよ」
 レオは黒い瞳でヘレナの目をじっと見てから、ジャケットの胸ポケットに入れていたカードキーを取り出した。
「なら、お好きなように」落ち着いた口調で言うとセンサーにカードをかざし、ペントハウスと刻まれたボタンを押した。エレベーターが低い機械音とともに上昇を始めた。
 ヘレナは手探りで背後の手すりをつかんだ。急速な上昇のせいで頭がくらくらした。
 彼女の元恋人はロンドンで最も高級なホテルに泊まれるだけでなく、最も高額な部屋に滞在できるほど裕福らしい。
 そう思うと、心臓の鼓動が速くなった。
 昔のレオはイタリア人男性らしく、くだけた飾らない雰囲気が魅力的だったが、派手でもこれみよがしでもなかった。ヘレナはそういうところが好きだった。
 それなら今は……?
 手すりを握る手に力がこもった。今、レオをどう思うかなんてどうでもいい。問題は、彼が私の家族にもたらそうとしている大惨事だ。父ダグラス・ショーが彼と直接対決して、自分の大切な帝国の支配権を失えば、妻や息子が悲惨な目にあう。父はすんなりとは負けを受け入れない。もし負けたら、最も身近にいる者が苦しむ。
「父親が君をよこしたのか?」歯の間から押し出したその言葉は憎しみにあふれていた。
 ヘレナはレオの顔を見つめた。以前より少しやせ、鋭い顔つきになったが、相変わらず信じられないほどハンサムだ。彼が眠っているとき、輪郭をたどった記憶で指がうずいた。尊大な印象を与える鼻、力強い顎、くっきりした男らしい唇。あの唇がほころぶだけで、キスするだけで、心臓が止まりそうになったものだ。
 感情がこみあげ、後悔と切望が渦巻いて、胸が締めつけられた。
「私は父の操り人形じゃないわ。あなたがどんな思い違いをしているのか知らないけど」
 レオが耳障りな声をもらした。「思い違いをしているのは君だ。“二度と君に会いたくない”という言葉のどこが理解できなかったんだ?」
 彼の言葉が呼び起こした心の痛みを、ヘレナは抑えこんだ。「もう昔の話でしょう。私は話をする機会が欲しいだけよ。無理なお願いをしているかしら?」
 エレベーターが止まった。レオがきっぱり“ああ”と答える前に、ヘレナは開いたドアから広々とした空間へ踏み出した。チョコレート色の厚い絨毯にパンプスのヒールが沈む。目の前には巨大な両開きのドアが立ちはだかっている。ここはペントハウス専用のフロアだとわかった。人目のない、隔離された場所だと。
 口の中が乾いた。「階下のバーで話をしたほうがいいかしら?」
 レオはヘレナの脇を通り過ぎ、重いドアを押し開けながら唇をゆがめた。
「僕と二人きりになるのが怖いのか?」
 ヘレナはドアの前でためらった。彼を怖がるべきだろうか?
 礼儀正しい仮面の下で怒りが煮えたぎっているのを感じる。でも、レオは自制心を失って私を殴ったりはしないだろう。母を殴る父とは違う。
 ヘレナは黒いパンツスーツを撫でつけ、高飛車に言った。「ばかなことを言わないで」そして、堂々と部屋に入った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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