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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

ミラー・イメージ

ミラー・イメージ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 エマ・ダーシー(Emma Darcy)
 フランス語と英語の教師を経て、結婚後、コンピューター・プログラマーに転職。ものを作り出すことへの欲求は、油絵や陶芸、建築デザイン、自宅のインテリアを整えることに向けられた。
人と接するのが好きで、人と人とのつながりに興味を持っていた彼女は、やがてロマンス小説の世界に楽しみを見いだし、登場人物それぞれに独自の性格を与えることに意欲を燃やすようになった。旅を楽しみ、その経験は作品の中に生かされている。現在はオーストラリアのニューサウスウェールズにあるカントリーハウスに住む。

解説

その夜、ホテルが襲撃され、カレンの一卵性双生児の姉は恋人のハルをかばって絶命した。ハルの子を密かに生み、妹のカレンが育てているという“秘密”を彼に打ち明けて。重傷のハルから、息子に会わせてほしいと連絡が入り、病院に駆けつけると、カレンは思いもよらぬプロポーズを受ける。拒絶すると、結婚は姉の遺言だとハルは強引に押し切ろうとする。男の狡さから、姉を真剣に愛そうとすらしなかったのに――なぜ?痛々しいまでに暗い、ハルの目に思わずのまれそうになり、カレンは激しくかぶりを振った。この人は姉さんの恋人なのに。

抄録

 豊かな黒髪がきれいになでつけられて、やせこけた顔にかかっていた。秀でた額と高い頬骨が落ちくぼんだ大きな目を強調し、あごが力強い線を形づくる。唇だけが女性的と言ってもいいほどふっくらとして、男らしい顔立ちとはどこか不つりあいだ。ハンサムではないが、女なら誰だって気になるタイプだろう。
 カレンは自分も値踏みされていることに気づいた。しかし、カレンが受けたほどの印象をハルが感じている様子はない。カレンを見ることはカースティーの|鏡像《ミラー・イメージ》を見ることにほかならない。自分の腕の中でカースティーの最期を見取った男にすれば、それは不愉快なだけだろう。「お父さまからうかがいましたわ。あなたがわたしに会いたがってるって」気づまりな沈黙を破ろうと、カレンは口を開いた。
「ああ……。来てくれて、ありがとう。座ってくれ……。きみと、相談したいことが、ある……」
 最初の印象が強烈だったのにこれだけしゃべるのも苦しそうなので、カレンはまた驚いてしまった。カレンはベッドのそばの椅子に座った。ハルはまた口を開こうと喉を何度も震わせた。その表情には、なんとしても声を出そうという意志があふれている。
「……ぼくには、わからない。カースティーは、いつも言っていた、子供はいらないって。自由でいるためなら、彼女は中絶を選んだはずだ。でも、産むことに決めたのなら、なぜ……ぼくに黙っていた?」
 カレンは、怒りの炎を抑えることができなくなった。冷静に話すには最大限の自制心が必要だ。「中絶していればよかったって言いたいんでしょう」
 ハルの灰色の目にいら立ちの色が浮かんだ。「子供ならぼくは、大歓迎だった。カースティーも知っていたはずだ。なぜ、彼女は黙ってたんだ?」
 カレンはハルを見すえると、思わず言い返した。「いまならなんとでも言えるわ。死人に口なしって本当ね。子供は大歓迎なんていくらでも言える。その子は現実に存在してて、あなた自身がその目で見たんだから!」
 ハルの目が痛ましい当惑に曇った。だが、それも一瞬のことで、怒りを秘めたさぐるようなまなざしが取って代わる。「カースティーは、ぼくに嘘をついた。もちろん、きみにも。彼女はどんなことを言ってたんだ?」
 カレンは怒った。「姉に嘘をつかれたことはないわ!」
 ハルは鋭い目つきでカレンを見つめた。「カースティーは、ぼくとジャカルタから帰ったときにはもう妊娠してたんだ。違うかい? 確か……ビールス……彼女は、そう言ってた、ビールスに感染したって。ぼくと一緒の南米行きも無理だって。本当は赤ん坊だったんだ!」
 ハルの声は厳しい調子ではなく、感情の高ぶりから震えてさえいた。ハルはけいれんするように息をのんで、また口を開く。
「一人では、ぼくは行きたくなかった。カースティーも、医者の許しが出たらあとを追うなんて言っていた。そうしたら、すぐに手紙がきた……きみが子供を産むって。きみが!」ハルはカースティーを責め続ける。「あいつは、出産まできみの世話をするって書いてきた。合併症がありそうだって」ハルの口があざけりにゆがんだ。「たいした合併症さ、ええ? でもカレン、カースティーはどうしてぼくの子供をきみに渡したんだ? きみもどうして受け取ったりした?」
「だって……」カレンは呆然と頭を振った。ハルとカースティーの関係は、わたしが想像していたようなものではなかったのかもしれない。ハルが本気で心配しているなんて、カースティーは一度も言ったことがない。出産で休暇を取るときどんな説明をしたのかも聞いていない。姉はあまり話してくれなかったが、ハルは彼女のことなど気にしてもいない様子だった。カースティーはわたしに嘘をついたのだろうか? でも、なんのために? わけがわからない。
「だって、どうした?」ハルが鋭くうながす。
 動転したカレンは、自分が何を言っているのかわからなくなった。「子供がほしかったからよ」ぼうっとした頭でつぶやいてしまう。
 ハルの目が再び痛ましい当惑に曇った。「どうして、自分で産まなかった? どうして、ぼくの子供を取ったんだ?」
 カレンの目に困惑の涙があふれた。「でもカースティーが産んだ子よ! カースティーが!」いつの間にか受け身にまわってしまった。「わたしが産まなかったのは夫のせいよ。夫は無精子症だったわ」
「なんてことだ!」
 そのしわがれ声の小さな叫びは、カレンの注意をハルに引き戻した。ハルの顔は苦痛にゆがみ、灰色の目はすさまじいまでの苦悩に満ちている。その目に見すえられて、カレンの魂は凍りついた。
「結局、カースティーはきみを愛していて……ぼくを愛してはいなかった……」
「違う!」ハルの言葉に耐えきれず、カレンは激しく言い返した。「あなたが束縛を甘受するなんて、カースティーには信じられなかっただけよ。彼女自身、縛られるのは大嫌いだった。姉はあなたのそばにいたかった。妊娠は確かに予定外だったわ。でも、バリーとわたしは養子縁組の申しこみをしていたし、彼女もそれは知っていた。そうなると赤の他人よりはわたしたちに渡すほうが自然だわ」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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