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皇帝の甘美な戯れ〜千一夜の蜜夢〜

皇帝の甘美な戯れ〜千一夜の蜜夢〜


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

私なしでは生きられない身体にしてあげよう
砂漠の漆黒王との甘く淫らな千夜一夜の恋物語

没落貴族の令嬢・レティシアは、サルマーンの皇帝・サイードに攫われるように彼の国へと連れてこられてしまう。「帰さないよ。君は私だけのものだ」見知らぬ異国の風景、豪奢な暮らし、夜ごとサイードに甘く優しく愛される日々。サイードの手で花開かされ身も心も蕩かされていくけれど、彼の妻候補として扱われることに戸惑ってしまい……?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

「そういえば、物語とは、つまりは夢なのだと。そして、作家とは読者に夢を見せる存在なのだと聞いたことがあります。私の読む本は仕事のそればかりで、およそ『娯楽』とはほど遠く、そんな印象はありませんが」
「……! ……夢……」
 ポツリと呟くと、サイードがレティシアに視線を戻す。
 そして少し逡巡すると、レティシアの本を棚へ戻しながら小首を傾げた。
「ええ。確か。私の知人は、心の冒険だと言っていましたっけ。本を読むことで、ここに居ながらにして、あらゆる世界の住人になり、未知の体験を楽しむことができるのだと」
 サイードが、何処か懐かしむように目を細める。
「心の冒険……。ええ、それはわかります」
 自分も、幼い頃からそれを楽しんできたから。
 レティシアは唇を綻ばせ、大きく頷いた。
「私も同じく、その『心の冒険』に魅せられた人間です」
「そうなのですね。でしたら──オナラブル・レティシア・ウィンスレット」
「あ……どうぞ、レティシアとお呼びください」
「レティシア……」
 サイードが復唱する。その、甘くて魅惑的な声で。それだけで、ドキッとしてしまう。
「神話のラエティティアからきた名前だ。喜びの女神だったか……」
「……! よくご存知で」
「では、レティシア」
 サイードが微笑んで、レティシアの手をとる。
 その、何処までも洗練された優雅な仕草に、心臓が早鐘を打つ。
「あ、あの……?」
「最近、心を動かされた娯楽はなんですか? たとえば、オペラや演劇。音楽でもいい。心から感動したものは? 訪れた場所でも良いですよ。心に焼きついた景色は?」
「え……? ええと……」
 レティシアはおずおずと首を横に振った。
 オペラにも観劇にも、子供のころに数回行ったきりだった。クラシック・コンサートに至っては、一度も足を運んだことがない。
 金銭面が厳しくなって久しい。景色の綺麗な何処かに旅行に行くなんて、夢のまた夢。父の体調が思わしくなくなってからは、外出も必要最低限にしている。
「な、何も……」
「何も? 最近夢中になったものは? なんでもいいですよ。胸が躍ったものごとは? 心ときめいたことは?」
「え、ええと……」
 夢中になっているものは本だけれど、でもこれは昔からのこと。最近新たにとなると、思い当たらない。胸躍らせたことも──とにかく、今はできることが少ないから。
(心……ときめいたこと……)
 思わず、サイードを見る。
 こんな素敵な方に声をかけてもらえたこと、だろうか。
 それが一番で──唯一。
「…………」
 だが、それをまさか本人に言うわけにもいかない。
 しかしそれ以外となると本当になくて、答えられずに黙っていると、サイードが驚いた様子で目を丸くする。
「まさか、一つも?」
「……! あ、あの……」
 頬がほんのり熱くなる。思わず下を向いたものの──だが見栄を張っても仕方がない。レティシアはそっと息をついて、コクリと頷いた。
「……はい。あの……うちには、その……金銭的な余裕がなくて……」
 モゴモゴと呟くと、サイードが息を呑む。
「……! あ……!」
「時間的にも……。家のことをいろいろとしているものですから……。あとは、その……近年は、父の体調が思わしくなくて……長く家をあけたくなくて……」
「ああ、レティシア。申し訳ない」
 それ以上は言わなくていいと言わんばかりに、サイードが綺麗な指をレティシアの唇に当てる。
「私は、無神経で……。ついつい、様々なことを自分基準で考えてしまう。申し訳ない」
 朝と夜を表したようなオッドアイが、気遣わしげに歪む。
「決して、貴女を辱めるつもりで尋ねたわけではない……。どうか、わかってほしい」
「え……ええ。それはわかっています。大丈夫です」
 そんな風に思ってはいない。
 仕立てのいい上質なフロックコートと見目麗しいフットマン。それだけで、サイードが普段どういった生活をしているかは窺い知れるというもの。
 そして彼は、ついさっきレティシアを『オナラブル・レティシア・ウィンスレット』と正確に呼んだ。ということは、彼はレティシアが男爵家の令嬢であることを知っていたということになる。だったら、レティシアが日常的にオペラや観劇を楽しんでいると勘違いしたとしても仕方がないことだろう。
 何故なら、レティシアはもう十七歳。本来ならば、そろそろ社交界デビューする歳だ。そういうつきあいが日常的になるころ。
「……?」
 そこまで考えて、レティシアはふと目を見開いた。
(あ……れ……? 私、男爵令嬢だって言ったかしら……?)
 独り言でも、呟いた記憶はないのだけれど。
「では──レティシア」
 内心首を傾げた瞬間、サイードがレティシアを呼ぶ。レティシアはハッとして、慌てて顔を上げた。
「は、はい? なんでしょう?」
「お詫びもかねて──少しおつきあいいただけないだろうか?」
 サイードが胸に手を当て、微笑む。
 甘やかで、滴るような色香に満ちた笑みに、ゾクリと背中が戦慄いた。
「え……? おつきあい……? と申しますと?」
「──物語とは、夢。作家とは、夢を見せる存在。ならば──貴女自身が夢を見なくては。夢を知らなくては」
 サイードがそっとレティシアの手をとる。
「夢を、知る……?」
「そう──。レティシア」
 そのまま優しく引き寄せられる。
 サイードの身からフワリと漂う、異国の香り。
 悪戯な指が、まるで誘惑するように、レティシアの顎をすくい上げた。
「おいで。貴女に、夢を見せてあげよう──」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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