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十年目の告白 ハーレクイン・ディザイア傑作選【ハーレクイン・ディザイア版】

十年目の告白 ハーレクイン・ディザイア傑作選【ハーレクイン・ディザイア版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ディザイアハーレクイン・ディザイア傑作選
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 エリザベス・ハービソン(Elizabeth Harbison)
 物心ついたころからロマンス小説の熱心な読者だったという。作家になろうと思ったのは小学生のころ。料理の本を三冊出版したのち、ロマンス小説の執筆を思い立った。現在、夫と娘に息子、二匹の犬とともにメリーランドに住む。

解説

命よりも大事なわが子のため、私を捨てたあの人に、会いにゆく……。

11年前、イギリスに留学していた19歳のミーガンは、ニコラスという名の青年と恋に落ちた。彼女はニコラスを愛し、彼に愛されていると思っていた。突然、冷たく一方的に別れを告げられるまでは。じつは伯爵家の跡取りだったニコラスは、貴族令嬢と婚約していたのだ。その後まもなく、お腹に新しい命が宿っていることがわかったが、彼に書いた手紙に返信はなく、彼女は独りで育てる決意をしたのだった。そして今ふたたび、ミーガンはイギリスの地を踏んだ。かつて彼女が愛し、思わない日はなかった男性を、若き日の彼に生き写しの息子と引き合わせるために――

■選りすぐりの珠玉作を集めた“ハーレクイン・ディザイア傑作選”より、感動のシークレットベビー物語をお贈りします。ヒロインが未婚の母になる決意をするプロローグで心を鷲づかみにされます。

*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・ディザイア版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 店内はそれほど混雑していなかった。エドワード王時代の体にぴったりしたスーツを着込んだ男が何人か、バーの前に立っていた。カイゼルひげを生やした男二人が、ビターと葉巻を手にしている。まるでバラエティ番組『モンティパイソン』のセットのような光景だった。整然と並べられたさくら材の小型テーブルの上には、灰皿とビール会社の刻印の入った厚紙製のコースターが置かれている。ベルベット風の模様を浮き上がらせた壁紙が貼られた高い壁は、埃っぽいばら色にあせ、ところどころに取りつけられた燭台の形をした真鍮製のランプが、店内をほの暗く照らしていた。
 かつてよく座っていた隅の席が空いているのを見つけ、ほんの一瞬、二人の間に重苦しい沈黙が流れた。「あそこでどうかな?」ニコラスは代わりに、窓際のテーブルを指さした。
「いいわね」
 二人は席に着き、ニコラスはミーガンが窓の外に目をやった隙に、こっそりと相手を観察した。彼女は変わっていた。当たり前の事実なのに、ニコラスは少し驚いた。彼の記憶の中では、ミーガンはずっと十九歳のままでいたからだ。
 ミーガンの顔に、ニコラスは穏やかな月日の流れを感じた。目元は優しさを増して、少しふっくらした頬、唇の輪郭もいくぶん変わった。一度ならず、年を重ねた彼女の姿を思い描いたこともあったが、実際に本人を目の前にすると、好奇心が満たされたというよりは、淡い郷愁に心が沈んだ。
 十一年前のミーガンが頭に浮かぶ。記憶から消し去ろうと努力したにもかかわらず、驚くほどはっきりと覚えていた。彼女の髪の甘い匂いがよみがえる。肌のように柔らかな髪の毛が、彼の素肌の上をすべる感触も覚えている。指がミーガンに触れたくてうずきだした。心からの欲望なのか、それとも、なつかしさがこみ上げてきただけなのか。彼女に触れたら、気持ちが収まるだろうか。それとも、欲望が収拾のつかない炎となって燃え広がるのだろうか。
 ニコラスは急に落ち着きを失った。
「何か飲もうか?」喉の渇きを感じて、彼は尋ねた。
 ひそかな考え事でもしていたのだろうか、ミーガンはひどくうろたえたような顔を向けた。「りんご酒をいただくわ」
「甘口じゃなくて辛口だったね」彼女は昔から女性が好みそうな甘ったるい酒よりも、本格的な酒が好きだった。それが彼女の強い個性を象徴しているような気がして、ニコラスはいつもある種の驚きを感じていた。ニコラスはカウンターの向こうに立っていたあばた顔のバーテンダーを呼んで注文を伝えた。
 ミーガンは笑ったが、すぐに自分を抑えた。「大した記憶力の持ち主ね」
 ニコラスも自分の記憶力のよさに驚いた。「人とうまくつき合うためには、三つのことを覚えておくべきだと、父から教わったんだ。すなわち、相手の好みの飲み物、子供の名前、そして最後はその人の秘密だ」
 ミーガンは謎めいた表情を浮かべ、そのあとテーブルに目をふせた。「それで、あなたはどうなの? 成功したかという意味だけれど」彼女はいかにもここにいたくないといった態度で、厚紙製のコースターを指でなぞった。
「飲み物は覚えていたね」それ以上は口にしなかったが、ふいにさまざまな記憶がニコラスの頭をよぎった。
「相手がわたしなら、それほど気を遣う必要もないわね」彼女は言ってから、あわてて言葉を足した。「だって、仕事関係のつき合いじゃないでしょう」
「確かに」それなら二人は、いったいどんな関係なのだろう。昔の恋人同士と言えば、いかにも親密な響きがする。しかし、それは事実だった。
 いや、そんなことはどうでもいい。今夜は過去の話を持ちだすまでもなく、すっかり気まずい雰囲気になってしまった。話題を現在に限って前向きに話そうとニコラスは思った。そもそも彼女を誘ったのは、新しい関係を築くためだった。これから何度も顔を合わさなくてはならないのに、そのたびに過去の重たい影につきまとわれてはたまらない。
「息子の名前はなんていうんだい?」
 一瞬のぎこちない沈黙があった。
「ウィリアムよ」
「ウィリアムか。祖父と同名だな。いい名前だ」
「そう?」彼女はひどく驚いた顔をした。「あなたが好きだったほうのおじい様?」
 彼は軽く笑った。「ああ、母方の祖父だ。いい人だったよ」
「そう」ミーガンはうなずきながらつぶやいた。「よかったわ」
 こんな話は相手に退屈だろうと思い、ニコラスは話題を戻した。「ウィリアムはきみに似ているのかい? 髪の毛は赤いの?」
「いいえ」彼女は再び目をふせた。「息子は父親似よ」
「そうか」彼はうなずき、テーブルの上にあった小さなペーパーナプキンをもてあそんだ。「その人は今も、ウィリアムの面倒を見ているのかい?」
 ミーガンが顔に浮かべた表情から察して、触れてはいけない話題だったらしい。ニコラスが質問を引っ込め、立ち入りすぎたと謝ろうとしたとき、彼女が口を開いた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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