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涙は雨音にかくして

涙は雨音にかくして


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャロン・サラ(Sharon Sala)
 強く気高い正義のヒーローを好んで描き、業界のみならず読者からも絶大な賞賛を得る実力派作家。息子と娘、それに孫が四人いる。“愛も含め、持つ者は与えねばならない。与えれば百倍になって返ってくる”が信条。ダイナ・マコール名義の著書も出版されている。

解説

傷ついた心にあなたの愛が、やさしい雨のように降り注ぐ――涙の作家シャロン・サラが紡ぐ、心震える珠玉作。

誰もがうらやむ美貌の持ち主でも、サハラには隠し通してきた傷があった。名家の主人と使用人のあいだに生まれた彼女は、その美しい容姿に目をつけた女主人に無理矢理引きとられ、気の向くときだけ“名家の令嬢”を演じさせられてきたのだ。大人になり、独立して、ようやく手に入れた平穏な日々も束の間、サハラは何者かに命を狙われ始める。過去の影に怯える彼女の前に現れたのは、最強ボディガードとして名高いブレンダンだった。優しくたくましい腕に24時間守られるうち、かたくなに生きてきたサハラの心は少しずつ解けていき……。

抄録

 ハロルドが遅ればせながら、ルーシーにブレンダンを紹介した。「ルーシー、こちらはサハラのボディガードを務めるブレンダン・マックイーン。ブレンダン、サハラの付き人のルーシー・ベントンだよ」
「それはもう知ってるでしょ」ルーシーはぴしゃりと言った。
 ブレンダンは反応しなかった。
 サハラがナースコールのボタンを押すと、すぐに看護師がやってきてルーシーのすり傷の手当をした。
「あのペントハウスには当分帰れないのよね?」ルーシーが言った。
 サハラはうなずいて、涙を見られまいと顔をそむけた。だが、ブレンダンは涙に気づき、サハラ・トラヴィスは本人がそう装っているほどタフではないのだと心にとめた。
「着がえが必要ね」ルーシーは続けた。「新しい住所を教えて。わたしが必要最低限のものを買って、夕食までに届けるわ」
「新しい住所はまだ決まってないの」サハラは答えた。
 ブレンダンが名刺をルーシーに差しだした。「買い物がすんだらぼくにメールを。折り返し住所を知らせよう。ただしその住所は誰にも教えないように」
 ルーシーは名刺を受けとり、ブレンダンに背を向けた。彼が気に入らなかった。サハラの世話をし、サハラに頼られるのは自分であるべきなのに、この男に割りこまれたのが腹立たしかった。
「しばらくはわたしもいっしょにいましょうか?」サハラの肩に手を置き、ルーシーは尋ねた。
「その必要はない」ブレンダンが言った。
「ええ、いっしょにいて」サハラはボディガードを無視して答えた。「わたしのそばにいるかぎり、わたしを狙っているやつがあなたを標的にすることはないでしょうから」
「それじゃあなたの着がえのほかに、自分の荷物もスーツケースに詰めてくるわね」
「わたしにも新しいスーツケースが必要だわ。わたしのものは何もかもペントハウスに置いたままだもの」
「それじゃスーツケースも買っていくわ。服は楽で目立たないものがいいのよね?」
「よくわかってるじゃない」
「それじゃまたあとでね。手当を頼んでくださってありがとう」ルーシーはサハラの額にキスをした。「あなたが無事でほんとうによかった」
 そしてバッグを手に部屋から出ていった。
 ブレンダンはサハラを注意深く見ていたが、看護師が退院許可書を持ってくると、わきにどいた。
 それから二十分後、サハラは黒いハマーの助手席に座って、ハロルドに手をふりながら病院をあとにしていた。
「どこに行くの?」
「今夜はホテルに。明日は山の中の一軒宿を利用できる。レーダーと衛星防犯システムを完備した宿で、室内プールやスポーツジムや映写室もある」
 サハラはため息をついた。犯人が捕まるまではどこにいても同じようなものだ。シートに寄りかかり、目をとじる。
 ブレンダンが巧みに車を操りながら助手席をうかがうと、彼女は眠ったようだった。だから、突然話しかけられたときにははっとした。
「こういうのってほんとうにいやだわ」静かな声だ。その声からはさまざまな思いがくみとれたが、何より大きいのはくやしさだった。
「これまでストーカー被害にあったことは?」ブレンダンは尋ねた。
「なくはないわ。でも、こんなふうに実害が出たことはなかった。あれからモイラのことが頭から離れないの」
「撮影現場で死んだ女性のこと?」
 サハラはうなずいた。「わたしのトレーラーで死んだのよ――二十四歳の若さでね。衣装部で働いていて、撮影助手の男の子にべた惚れだった。彼のほうは、そんなこと知りもしなかったけど」
 ブレンダンはまた彼女に目をやり、赤信号でブレーキを踏んだ。サハラは無言で涙を流していた――華やかな噂の絶えない美人女優には似つかわしくない、ひっそりとした悲しみかただ。あの噂の数々は全部でたらめなのだろうか? そう思いながらブレンダンは言った。「ほんとうに痛ましいことだ」
「ティッシュを持ってない?」
 ブレンダンがグローブボックスを指さすと、サハラはそこからポケットティッシュを取りだして涙を拭いた。
 間もなくブレンダンは高速を降り、チェーンのモーテルに車を入れた。
「モーテル? 本気なの?」
「きみのようなスターがたとえ一晩だけでもこういうところに泊まるとは、誰も思わないからね。動かずに座っているんだ。外から車内は見えないから、きみが乗っているとは誰にもわからない」
「隣にルーシーの部屋もとるのを忘れないで」
「ぼくは何ひとつ忘れはしない」ブレンダンは言った。「外からロックしていくから、何にもさわらないように。へたにさわるとアラームが鳴り響く」
 返事を待たずに車を降り、受付のほうにつかつかと歩いていく。
 サハラはわれ知らず見とれてしまった。きれいに日焼けしたハンサムなのは、美男美女であふれるこの街では珍しくもないけれど、ブレンダンの顎のラインやまっすぐな鼻はすこぶる魅力的だった。それに、あの目。口調はぶっきらぼうなのに、目は優しい。カリフォルニアの夏の暑さに敬意を表して腕をむきだしにし、帽子もかぶってない。脚は長く、肩は彼が入っていった戸口ほどにも広い。
 ブレンダンの姿が事務所の中に消えると、サハラはうっかり車内の何かにぶつかって彼の怒りを買わないよう腕組みをし、喉につかえたかたまりをなんとかのみくだした。


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